☆ 白金警備隊 - 1
「ランー!早く来いよ、遅れるぜっ」
そう言ってノイエルが階段の踊り場からあたしに手を振ってくる。
「あ~ちょっと、あとちょっとだけ待って!10秒!いや、5秒でいいからっ!!」
あたし・・・詳しく説明するとフラン・フィアロットまだまだ若い17歳だけど18歳に偽って警備隊員として日々頑張ってます☆な健気すぎて涙をさそっちゃう少女(ここまでひと息)はノイエルにそう言いながら手鏡を覗きこんで、もう何回目かは覚えていない髪形のチェックをする。
「よしっ完璧!・・って、あぁーっ!?ちょっと置いてかないでよノイ、待ってって言ったでしょーっ!?」
あたしは喚きながらノイエルが昇って行ってる階段をかけ上が・・・ろうとしてあ~ヤバい走ったら髪型くずれちゃぅよなぁとか思いながら姿勢正しく、ゆっくり、階段を昇り始めた。
「だ・か・ら!さっきから遅れるっつってんだろっ!?何で歩くんだよ!!」
とゆーのにノイエルときたらぶつくさとそんな事を言いながらあたしのトコまで下りて来て、服の袖を掴んでグングン引きずっていく。
「やーめーてーーーっそんな事したら髪型崩れちゃうでしょーッ!?」
「別にクレイ様はお前の髪型なんて気にしねーよっ!つーか集合に遅れてったら、それこそ廊下に立たされて“クレイ様”見れないんじゃねーの?」
ノイエルのそんなありえない発言(この歳になって廊下に立たされるとかどんだけよ)を、気が動転しちゃってる純粋なあたしは信じて、シャキッと態度を変えた。
「それはマズいわね・・・クレイ様に会えないなんて…今日まで生きて来た意味がないじゃないっ!!」
そうして今度は私がノイエルを引っ張って、ものすごい勢いで階段を駆け上っていった。
招集をかけられた第二会議室には、すでにあたし達以外の「祭典特別警備員」が集まって整列していた。
で、すでにクレイ様がいた。
「うあぁああああぁやばいやばいやばひあ、あたしが・・クレイ様のために生きてきたといっても過言ではないあたしともあろう人がクレイ様を待たせちゃった───!!?」
と、口に出したら既に睨んできてる上官にどやされそうなので心の中で叫んでおくと、
「君達も警備隊の人・・かな?」
と、なんとなんとクレイ様に声をかけられた。
「あ、は」
「そうですぅっ。この度は王子を待たせるなんて許されざる所業をしてしまって、申し訳ない気持ちで胸がいっぱいです・・・それと言うもの、実は途中に観光塔から迷って来ちゃった女の子がいまして、母親のもとまで送り届けているとこんな事態に・・・本当にすみません。以後このような事態が再発しないよう善処する所存です」
ノイエルが、自分の言葉を遮ったフランを振り返ると、今まで一度も見たことがないようなそれはそれはしおらしい顔で、嘘八百をべらべらと並べていた。
とりあえず天性の突っ込み体質なノイエルは、王子の前なので小声で
「ウソつけ」
と言っておいたが、フランに王子から見えない影で思いっきり足を踏まれた。
とゆーかなんとその王子はフランの言い訳を信じたようで
「それは良い事だ。遅れてしまったのは仕方ない、気にせずに列に入って」
「は、ふぁいっ」
笑顔でそう言って下さる王子に赤くなりながら、いそいそと「極東支部」の列に並んだ。
クレイ様は2人が並ぶまで待ってから、威厳のある声で話し出した。
「まず、この度は、遠方からも召集に応じてくれ感謝する」
今フランは「きゃークレイ様に感謝されちゃった!!」とか思ってんだろーな・・・
「召集の理由はもう知っていると思うが、今一度改めて確認しておこう。
我等がライディア国は知っての通り、毎年夏季に豊作祈願のため“刳音の祭典”を行う。そして祭典の“祈祷”の儀役に、今年は20歳になった私が抜擢された」
年に1度の国をあげてのお祭り、刳音の祭典。そして正午から城で行われる「祈祷」の儀役・・・それに選ばれることはとても名誉なことであり、確かな地位を提示する効果もある。もう、そんな儀役になるために最低限必要な年齢の20歳で抜擢されるなんて、さっすがクレイ様よねー♪
「そして“祈祷”に使われる至宝プラチナロッド・・・それを祭典が行われるまでの期間、並びに祭典中 警護し、次の年に受け渡すのが君達“白金警備隊”の仕事だ」
あぁークレイ様、生で聞くとやっぱ神がかった素敵な美声・・・!もぅっまさに神様の申し子って感じぃ☆
「そして今日から保管庫の警備に当たってもらうわけだが・・その前に一つ発表しておきたいことがある」
へ、発表?一体何だろう。交代で当たる警備の順番は、もう事前に知らされているし・・
「祈祷でプラチナロッドの台を持ったり、幹部や警備隊員との連絡を取り合ったりする“警備隊長”だが・・・極東支部、ノイエル・君に任せる事になった」
──―─えッ!!?
あたしが驚いて後ろのノイを振り返ると、当然、とでも言うような真顔でペコリとお辞儀をしているところだった。
「私と連絡がとりたい時なども彼に取り次いでもらってほしい。では、以上──体調を崩さない程度に、しっかり勤務してくれ」
クレイ様は最後に私たちの体調まで気遣ってくれてから、お付きの人と共に退場して行った。あぁ、いいなークレイ様のお付きの人とか。それにしても・・・
最終更新:2010年05月28日 21:56