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「・・いや、俺だからいいけどさぁ・・・・」
ある日アリーナがケイトの部屋に入ると、思いもかけずいきなり説教された。
「普通さ、人の部屋にはノックして入るだろ・・・」
こめかみを押さえてそう諭すケイトは今、眼鏡をかけて 地図を広げた机の前に座っている。
「わぁ~、ケイト眼鏡似合う!!」
「ぇ・・あ、そうか?・・・ありがとな//」
ケイトはさっきまで説教してたはずなのに、アリーナに笑顔でほめられてかなり照れまくっている。・・・いやまぁ、いいけどね。
「で、何してるの?」
アリーナがそう言いながら覗きこんだ地図には、黒と赤のペンで何やら色々書き込まれている。
「いや、旅路の記録をしてるんだよ。そういやラフィアの街に来たコト書き足してなかったな~と思って」
「そっか」
アリーナは自分から聞いておきながらケイトの答えには適当にそう合鎚を打って、まじまじと地図を覗きこんだ。
ラフィアの街があるケセド大陸から見ると北西に位置する、ノイエ大陸の東部にあるトゥール村が出発点で「12’6/14出発」と黒で書き込まれている。
そこからずっと海を渡りキアーラ大陸を渡り継いでケセド大陸に、「13’11/25上陸」。
そして、ケセド大陸の中心部の少し南に位置するラフィアの街に「14’10/3到着」。
その間にも泊まった宿屋とかが几帳面に書かれている(ケイト絶対A型だな)のだが、大まかに言えばそんな感じだ(アリーナはもちろんO型である)。
「・・・よくここまでたどり着いたね」
「おぅ、何か知らんがガイアさんがラフィアの街に行くといい、って教えてくれてな。半信半疑で来てみたけど、マジで着いて4日でアリーナに会えたよ。」
ちなみにガイアさんに「アリーナをよろしくな」なんて言われたことは君と僕だけの秘密である(誰)。
そしてしばらくその地図をジッと見つめていたアリーナは不意に顔を上げ、
「トゥール村に行きたい」
と、何とも突拍子のない事を告げた。
「・・・・・は!?」
ケイトは数秒かかってその意味を理解したあと、普通に驚きの声を上げた。
「ちょっ・・俺、トゥール村からここに来るまで2年はかかったんだぞ!?」
「──・・・・そっ、かぁ・・、そう・・だよね・・・・」
ケイトがそう現実を叩きつけると、アリーナはものすごく残念そうにシュンッとしおれ 顔を伏せた。
で、そんな顔をされると何とか叶えてあげたくなる訳で。
「いや、最初っから諦めるのはよくないよな!何か方法探してみよう!!」
そう、アリーナを元気付けようと少し裏返った声でそう宣言したケイトの後ろから
「まぁ、やる気があるなら方法がない事はないな。」
いきなりレオンの声がした。
「──~・・レオン、お前も いきなり人の部屋になぁっ・・・・」
なんかレオンって・・・・神出鬼没だよな。うん。
「ところでその“方法”って?」
溜め息を吐くケイトの横から、アリーナが尻尾を振る子犬の様な顔で問い掛けた。
「あぁ・・魔法でテレポーテーションする」
「て・・てれぽてーしょん?」
何だそれ。
「あぁ・・聞いた事ある。まぁ何て言うか・・簡単に言えば魔法使いと魔石を使って“瞬間移動”するんだ」
ケイトが人差し指で眼鏡の端をクイ、と持ち上げながら言った。
「うわ、ケイトその仕草・・何かカッコイイって言うか、うん!!」
「え、あ・・・そ、そうか///」
アリーナがキラキラした目でケイトを褒めた。なんか、アリーナは眼鏡に弱いらしい・・。
「──ま、それは置いといてだな」
ちくしょぉレオン、少しは空気読めやぁぁぁッ
と、ケイトがものすごい憎悪をこめてレオンにガンを飛ばす中、
「まぁ、そうだな・・・まずはファリエルの部屋へ行くか」
そう言ってレオンはケイトの部屋を出た。
アリーナもトゥール村に行きたいので、素直にそれについて行く。
ケイトは地図をたたんで眼鏡を外した後で、それを追い掛けた。

ファリエル宅のシュワイカート家は、高級住宅街に建つ一戸建ての2階+地下1階で構成されている。
その広い庭には、世界中から取り寄せられた魔法の触媒に使える植物が規則正しく植えられていて、ファリエルが毎日丁寧に手入れをしている。
家内の構造は2階がリビングや寝室、客間等の生活スペースで、アリーナやケイトが借りている部屋もここにある。
1階にはこの前見た精錬所や、ファリエル仕様の召喚場が設置されている。
そして地下には、武器庫や秘密避難通路が設けられている・・・らしい。(行った事は無い)

レオンはケイトの部屋を出ると、迷わず1階へと向かった。
「え?ファリエルの部屋に行くんじゃないの?」
とアリーナが後ろから問うと
「この時間だからな・・・魔法部屋にいるだろう」
などと返された。
魔法部屋?
なんだそれ・・・とアリーナとケイトが思っている間に、レオンは1階の一番東にある扉の前で立ち止まった。
そして躊躇なく扉を開けて中へ入って行った。
「ちょ・・レオン!さっきの俺の話聞いてたか!?人の部屋に入る時はノックを・・・」
「あ?・・・そうか、そんな事を言ってたな。」
「・・お前なぁ・・・・(ため息)」
「だが、どうせこの部屋はノックする必要はない。爆発魔法も使うからと言って、確かファリエルが7重防音にしていたはずだ」
レオンとケイトが言い合っている間にアリーナがヒョイッと「魔法部屋」を覗いてみると、なんとも不思議な光景が広がっていた。
 3面の壁にそってぎっしりと並べられた棚に所狭しと並べられた本と魔法触媒。
 そして棚の前には 棚に入らない大型の触媒や魔法石の原石、様々な形の杖にポーションといった魔法用品がこれまた所狭しと置かれている。
 そして・・何よりも目を引くのが、見える床や天井、壁という壁に光り輝く何重にも重なって描かれた魔法陣の数々だった。その魔法陣の色は様々でピンクや黄色、時には黒といった色もあるが・・・ファリエルは風と水魔法のエキスパートと言い称えられているらしいので、やはり緑や青が多かった。そのおかげで、雑々とした部屋の中にもどこか統一感がある。
で、そんな「魔法部屋」の扉から向かって右側の棚の前にファリエルは倒れていた。
「!?ふぁっ・・ファリエル!?」
驚いたアリーナが駆け寄って助け起こすと、ファリエルは薄目を開いた。
「ぁ・・・・・・アリーナさん、どうしたんですか・・・?」
「どうしたって・・・ファリエルの方がどうしたんだ?何で倒れて・・・」
後ろから入ってきたケイトもそう問い掛けると、レオンが答えた。
「いつものことだ。ファリエルは大体この時間この部屋で触媒の研究や魔法の練習をしているんだが、時々魔法の使いすぎで精神力が切れて こうして倒れている」
 ・・えぇ~・・・とアリーナとケイトが思っているのを無視してレオンが続けた。
「ところでファリエル、アリーナがトゥール村に行きたいと言い出してな。テレポーテーションしたいんだが」
「ぁ・・分かりました、ちょっと待って下さい・・・・」
ファリエルはそう返事をして、左奥にある棚の引き出しを何やらゴソゴソと探りだした。
そしてややあってファリエルが取り出してきたのは、少し古びて茶色く変色している1枚の紙だった。
「??・・・なに?これ」
「あ、えっと・・、“鳩場”の全国マップです」
はとば・・・?何だそれは。でも、それよりまず──
「全国マップって・・何にも書いてないじゃん?」
果たしてその紙は、ただの古ぼけた無地の紙だった。
しかしファリエルはアリーナの問い掛けに微笑で返すと
「Be-out “the dove place”!」
と、鋭く唱えた。
すると今まで無地だった紙に、中央右下から紺色に光る線が浮き出てきて・・・やがてそれは大陸を描き、1枚の地図となった。
「ぅわっ・・」
アリーナが驚きの声を上げている横で、ファリエルはノイエ大陸の東部を指で示して
「ぇっと・・トゥール村ってここですよね?」
とケイトに聞いた。
「あぁ、大体その辺だよ。もう少し左の・・・そうそう、カイエル山脈のちょうど真横のとこ」
ケイトの説明に従ってファリエルは指をずらして行き、正確にトゥール村を指差した。
そしてファリエルが目を瞑ってまた何やら唱えると、今度は地図上に紺色の光で描かれた立体の建物がいくつか浮かび上がってきた。
「えっと・・・・ トゥール村から1番近い “鳩場”は・・・・あ、山脈の上にあるんですね。」
そう言うとアリーナの方を振り返って
「トゥール村には、何日の何時に行くんですか?」
と唐突に聞いて来た。
「や、そんな急に聞かれてもっ・・・・んー・・、そうだな、じゃぁ明日の8時出発・・ぐらい、かな?ぇ、ってゆーか皆も行くんだよね。それじゃ早い・・?」
アリーナがそう言いながら皆の顔を見回すと・・
「んー俺は別に。用意もそこまでいらないだろうし、おみやげ買いに行く時間もあるし」
「あぁ、それぐらいでいいんじゃないか?俺も時間が足りないとかはないぞ」
そしてファリエルが頷いて、とりあえず全員賛成してくれた。
「それじゃあ次に帰る時間だな。俺は里帰りとかは正直よく分からんが・・2日じゃ少ないものか?」
えぇ~よく分かんないってどういうこと!?そう言えば家族の話なんか全くしたことないけど、親不孝だとか?ぃや、それとも案外親もこの街に住んでたり・・ぃや、もしかしてもうお亡くなりに・・・っていやいやいや。そんなこと考えちゃダメだって!んーそれより2日かぁ・・話したい事とか教えて欲しい事とかいっぱいあるけど、まぁ大丈夫かな?
そんな感じに結論を出して、ケイトも異論はなかったようなのでその意見は採用された。
「では11月9日の8時出発、同月11日の10時帰還でアポイントを取っておきますね」
そのファリエルの言葉と共に、アリーナ達のトゥール村への帰省旅行は決定された。










































最終更新:2010年06月06日 00:01