私は軽快な足取りで階段を上って行った。
そして2階について、私は曲り角を右に曲がった。
由美と茜は左に曲がった。
私はピタッと動きを止めた。
「・・・あれ?教室そっちだっけ?」
私はそう言いながらまたドジをやらかしてしまったのかと思い、頬を掻きながら踵を返した。
「入学初日からボケててどうすんの、こなみ」
由美がそう突っ込んでくると思った。
だが、私の予想ははずれた。最悪に。
「小浪ちゃん、あってる。小浪ちゃんは、3組。」
茜が静かにそう言った。・・・私は、って・・
「・・え・・・──?」
「入学初日からボケててどうすんのよ、こなみぃ」
由美が笑いながらそう突っ込んだ。
けど、ちがう。
笑ってなんかない。
私が予想してた言葉と同じだけど、ちがう。目が笑ってない。苦しいのに、絞り出してるみたいな声。
え・・じゃぁ、もしかして、ホントに・・・・
「私と茜はに・く・み。ガッツポーズ取る暇があったらそれぐらい見ときなさいよねぇ~。」
由美はそう言いながら私の頭をポンポン、と叩いた。私を宥めるみたいに。
そして、由美は「遅れるよ」と言いながらさっさと踵を返して、歩き出した。
茜は最後までこちらの方を心配そうに振り返って行たが、「休み時間、行くから」と小さく言って、小走りで由美の後を追った。
私と由美の距離はまだ、短いよ。
陸上部の私なんか、走ったらすぐに縮まるよ。
2組と3組なんて隣り合った教室、すぐだよ。
でも、心の距離は遠いよ。
走っても、走っても、差が広がるくらい。
追いつけない。うめれない。あぁ、ほら、もう由美の姿が見えなく──・・・
私はバッと後ろを向いた。
そして、3組に向かってかけ出した。
何でそんな事をしたのか私にも分んないよ。
いや、きっと、もう教室にいる永代君に早く会いたかったんだ。
うん、きっと、そう。絶対。
だって、それ以外に思いつかないのに──・・
最終更新:2009年05月04日 23:03