※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

私の隣には愛しい人知類がいる。
だから私はおしゃれをした。もう、隠す必要はないのだから。

私の足が動かなくなった時があった。
もう私は使い物にならないのに、彼は…。
昔の私が今の状況を見たら、どう思うのだろう。まあ、だいたいの予想はつく。
今は足を治療して、元どおりに動かすためにリハビリ中だ。
いずれ車椅子がなくても歩けるようになるだろう。
顔をあげると隣に彼がいる。愛しい時雨が。
そして、私は――。

―――

「どうですか、地上の風景は」
時雨はエステルにそう話しかけた。今日はエステルにとって久々の外だった。
木々のざわめき、鳥のさえずり――。
間近で見ることの少なかった景色にエステルは、
「歩かないでいいのはいいですね」と返した。

「木とか鳥の声とか、興味ありません?」
少し間があって
「…わりと好きです」

よかった、と率直な感想を時雨はもらした。
外出許可をもらって、木漏れ日の中を二人で歩いている。
車椅子をゆらさないように、大事に、大事に。
風が吹き抜けて、エステルの髪をゆらしていく。

「鳴き声が、違いますね」
こういう返答がよかったのでしょう?とでも言いたそうだ。
「ええ。同じ鳥でもいろいろな種類がありますから」
エステルは前を向いていて表情が見えない。

「それくらいはわかります」
明らかに憮然としていた。あわてて取り繕うと、エステルは少し笑った。
「……もしかして、からかいました?」
思わず足を止めてきいた。振り返ったエステルは相変わらず憮然としている。
「いえ、本気ですが」
「う、ごめんなさい」
即効謝る時雨。頭も少し下がっていた。車椅子の柄を強く握っていた。

「今のはからかいました」
やわらかな声。顔をあげるとエステルは微笑んでいた。
突然の展開に時雨は負けた。顔を真っ赤にしてうつむくと告白した。
大好きです、と。
「しってます」
優しい響きで返された。黙り込む時雨顔真っ赤。
何をどう返そうか考えた挙句、歩きだした。

――――

そして私は艦氏族を変えた。
私の艦氏族はもちろん彼のそれと同じだ。
最初はエステル・シグレナーダシグレ艦氏族。
彼が間に何か入れたいといったから、エステル・フィーリ・シグレ艦氏族。
彼の祖先が南国の川辺に由来していたから、天の川―――フィーリ。
彼は晶・フィーリ・シグレ艦氏族。

――――

健やかなる時も、病めるときも
戦場にあっても、平穏なる時にあっても
星の海に会っても、地の海にあっても。僕はあなたを愛し、寄り添うことを誓います

「……似合ってなかったですかね。決意表明みたいなつもりだったんですが」
「似合っています」

彼は恥ずかしがって後ろに戻った。
私は彼に手を取られて決意表明されたことを忘れないだろう。
知らず、笑顔がこぼれた
最終更新:2008年12月03日 00:35