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オオカミ(狼、wolf)は、
イヌ目(食肉目)
イヌ科イヌ属に属する哺乳動物。広義には近縁種も含めることがあるが、通常はタイリクオオカミ(ハイイロオオカミ、''Canis lupus'')一種を指す。多数の亜種が認められている。
従来はオオカミの近縁種とされていた
イヌ(イエイヌ)は、近年ではオオカミの一亜種 ''Canis lupus familiaris'' とする見方が主流になりつつある。ただし、日常語としての「オオカミ」には、通例、イヌは含まれない。イヌはオオカミ(一部コヨーテやジャッカルの血が混じるという説もある)が飼い馴らされて家畜化したものと考えられる。
アメリカアカオオカミ、コヨーテ、アピシニアジャッカルとは相互に交配可能で、野生下でも雑種個体が生じ、繁殖力も有しているため生物学的種の定義に照らせば亜種であり、別種ではない。種と亜種の区分は慣習的不合理性が残存していることの一例である。亜種によっては絶滅が危惧される。日本で古来「狼」と呼ばれてきた動物はすでに絶滅した
ニホンオオカミであり、タイリクオオカミの一亜種と見なされる。
== 分布・亜種 ==
北半球に広く分布する。分布域が広いタイリクオオカミは多くの
亜種に細分化される。現存の亜種は33(絶滅含め39亜種)に分類されてきたが、近年の研究で現存13亜種、絶滅2亜種への統合が提案されている。
''Canis lupus albus''(ツンドラオオカミ)
''Canis lupus arabs''(アラビアオオカミ)
''Canis lupus arctos''(ホッキョクオオカミ)
:
グリーンランド北部と東部、クイーンエリザベス諸島、バンクス島、ビクトリア島に分布。
''Canis lupus baileyi''(メキシコオオカミ)
''Canis lupus communis'' (ロシアオオカミ)
:
ウラル山脈に分布。正確な分布範囲はまだわかっていない。
''Canis lupus cubanensis''(カスピオオカミ)
''Canis lupus hattai''(エゾオオカミ)
''Canis lupus hodophilax''(ニホンオオカミ)
''Canis lupus italicus''(イタリアオオカミ)
''Canis lupus familiaris''(イヌ|イエイヌ)
:いわゆる犬。愛玩動物やパートナーとして、主に人と共に生活しているために、世界中のあらゆる地域に分布している。一部食用に養殖も行われている。また、捨てられた個体が野生化しており、野生オオカミの群れに合流しているものも稀にいる。
''Canis lupus lupaster''(エジプトオオカミ)
''Canis lupus lupus''(ヨーロッパオオカミ、シベリアオオカミ、チョウセンオオカミ)
''Canis lupus lycaon''(シンリンオオカミ)
''Canis lupus occidentalis''(シンリンオオカミ、アラスカオオカミ)
:カナダ北西部、アメリカの
モンタナ州北部に分布。現在分布を拡大している。
''Canis lupus pallipes''(インドオオカミ)
== 形態 ==
肩までの体高60-90cm、体重は大きい個体で50kgを超える。現生のイヌ科のなかで最大。高緯度ほど大きくなる傾向がある(
ベルクマンの法則)。最も大きい個体は肩高97cm体重80Kg雄のハイイロオオカミ。 一般に雌は雄の体重より10~20%程度小さい。体色は灰褐色が多く、個体により白から黒まである。子供の時期は体色が濃い。北極圏に住む亜種はより白い。体毛は二層に分かれ保温や防水に優れ、夏毛と冬毛がある。
歯式は3/3·1/1·4/4·2/3 = 42で、上顎には6本の門歯、2本の犬歯、8本の小臼歯、および4本の大臼歯があり、下顎には6本の門歯、2本の犬歯、8本の小臼歯、および6本の大臼歯をもつ。頭から鼻にかけての頭骨のラインはイヌより滑らかである。また、尾の付け根上部に
スミレ腺を持つ。
== 生態 ==
オオカミは雌雄のペアを中心とした2-20頭ほどの社会的な群れ(パック)を形成する。それぞれの群れは縄張りをもち、その広さは食物量に影響され100-1000平方kmに及ぶ。縄張り外から来た他のオオカミはたいてい追い払われる。
=== 群れと順位 ===
群れは雌雄別の順位制を伴い、通常は繁殖ペアが最上位であるが、順位はときに交代する。最上位から順にアルファ、ベータと呼び、最下位の個体をオメガと呼ぶ。順位は常に儀式的に確認しあい維持される。群れはたいてい繁殖ペアの子孫や兄弟で血縁関係にあることが多い。他の群れを出た個体が混ざることもある。
=== 狩り ===
オオカミは肉食で、シカ、ヘラジカ、イノシシ、野生ヤギなどの有蹄類を狩る。また、齧歯類などの小動物も食べる。餌が少ないと人間の生活圏で家畜や残飯を食べたりする。シカなど大きな獲物を狩るときは群れで行動し、長時間の追跡を行う。獲物の群れの弱い個体(病気、高齢、幼体)を捕まえることが多い。
最高速度の時速70kmなら20分間、時速30km前後まで速度を落とせば一晩中獲物を追い回すことができる。
捕らえた獲物を先に食べるのは上位の個体である。
狩りの成功率は10%以下で、何日間も食べられないことが多いため一度に大量の肉を食べることが可能である。
=== 繁殖 ===
繁殖は一夫一妻型で群れの最上位のペアのみが行うが、例外的に他の個体が繁殖することもある。交尾期は年1回で冬季に行われる。妊娠期間は60-63日、平均4-6頭の子を産む。雌は巣穴を作りそこで子育てを行う。父親や群れの仲間も子育てを手伝う。
子は目が開くのは12-14日、20-24日で動きまわれるようになり、群れを認識する社会性が育つのは20~77日の間でこの間に離乳する。固形食は大人が吐き戻して与える。8週ほどで巣穴を離れるようになる。
子は1年も経てば成体と同じ大きさになるが、性的に成熟するには2年ほどかかる。成熟したオオカミは群れに残るか、群れを出て配偶者を見つけ(この過程で1匹になることを1匹狼という。)、新たな群れを形成する。
=== コミュニケーション ===
オオカミはボディランゲージ、表情、吠え声などで群れの内外とコミュニケーションを取る。表情やしぐさは群れの順位を確認する際に良く使われる。遠吠えは、群れの仲間との連絡、狩りの前触れ、縄張りの主張などの目的で行われ、それぞれほえ方が異なるといわれる。合唱のように共同で遠吠えすることもある。
=== 寿命 ===
子供時代の死亡率が高いが、成熟個体は野生で6-9年ほど生きると言われる。飼育下では16年ほど生きる。
== 絶滅地域への再導入 ==
オオカミは
家畜を襲う害獣として駆逐され、
絶滅してしまった地域がある(しかし実際は人が狼の住処や獲物である草食動物を狩ってしまい、やむを得ずオオカミは人間に駆除される危険を冒してまで獲物を求めた結果、
このような事態になってしまった。)そのような地域では、天敵を失った大型の草食動物が増加し、
地域の植物を食べてしまう。その結果、オオカミの絶滅の前後で生態系に変化が生じている。(捕食者がいないため手に余るほどにシカが増殖し、草木を食い荒らした。)撹乱された生態系を以前のものに戻す試みとして、アメリカ合衆国の
イエローストーン国立公園では、絶滅したオオカミを再び導入し、成功を収めた。日本においても同様の試みを提唱する人々もいる。
== 日本のオオカミ ==
日本固有のオオカミのうち、
本州・
四国地方|四国・
九州地方|九州に分布していたものは、
ニホンオオカミ(''Canis lupus hodophilax'' または ''Canis hodophilax'')と呼ばれる。大きさは中型の日本犬ぐらいの大きさで、毛色は白茶けており、夏と冬では毛色が変わったとされる。
ニホンオオカミは
1905年に
奈良県鷲家口(わしかぐち)にて捕獲された若いオスの個体を最後に目撃例がなく、絶滅したと見られる。頭骨はある程度残っているが、
剥製や全身骨格の標本は極めて少なく、日本国内では数点しか知られていない。日本国外では、鷲家口で捕獲された個体の仮剥製と頭骨が、大英博物館に保管されている。また、
フィリップ・フランツ・フォン・シーボルト|シーボルトが長崎の
出島で飼育していたニホンオオカミの剥製1体が、
オランダのライデン自然史博物館に保存されている。
一方、北海道およびサハリン・千島に生息した大型の亜種は、
エゾオオカミ (''Canis lupus hattai'') と呼ばれている。大きさは
シェパード犬ほどで、褐色の毛色だったとされている。アイヌの人々とは共存していたが、明治以降、入植者により毛皮や肉目的で獲物のエゾシカが取りつくされ、入植者のつれてきた牛馬などの家畜を襲って害獣とされ、懸賞金まで懸けられた徹底的な駆除により数が激減し、ジステンパーなどの飼い犬の病気の影響や
1879年の大雪による大量死が重なった結果、
1900年ごろに絶滅したと見られる。
日本では古代からオオカミを神として祀っていた地域も存在した(
三峯神社の
狛犬がオオカミであるなど)ものの、
江戸時代中期頃から日本にも流入してきた
狂犬病の拡大と、西洋からの「狼=悪」のイメージ{{要出典}}が、オオカミ駆除の動きに拍車をかけた。
== 狼に関する文化 ==
ヨーロッパや中国など牧畜が盛んであった地域では家畜を襲う害獣として忌み嫌われる傾向にある。逆に、日本(北海道を除く)のように農業が盛んであった地域では農作物へ被害をあたえるシカなどの害獣を駆除する益獣として怖れをもたれるとともに慕われもした。また
アイヌや
ネイティブアメリカンなどのように狩猟採集生活が盛んであった民族でも神格化されることがある。
北アジアの
テュルク系
遊牧国家・
突厥の中核となった氏族の
阿史那氏には、戦いで置き去りにされた子供と
アセナという牝狼の間に誕生した子供たちが阿史那氏の祖先であるという神話伝承があり、狼は阿史那氏のトーテムであったほか、近代の
トルコ|トルコ共和国でもトルコ民族の象徴として親しまれたりナショナリズムの象徴となったりしている。
日本語のオオカミの語源は大神(おおかみ)とするように日本では縄文時代から狼を神獣としており、
日本書紀には狼のことを「かしこき神(貴神)にしてあらわざをこのむ」と記述されている。山の神として
山岳信仰とも結びついており、
御嶽神社や
三峯神社の
狛犬はオオカミである。
ヨーロッパにおいては、狼はしばしば死や恐怖の対象として描写される。
北欧神話では巨大な狼である
フェンリルが神々の敵として描かれている。
18世紀中旬には、「
ジェヴォーダンの獣」と呼ばれる巨大な狼(大
山猫とも)が出現したとされ、
フランス中部地方を震撼させた。(しかし、オオカミは一匹だけで大きな獲物を狩る習性はなく、臆病な動物であるため、科学的に見てこの事件にオオカミは関わっていないとされている。)
人間が狼に変身する
狼男|人狼についての記述が古代よりしばしば見られる。古代ローマの
博物学者である
ガイウス・プリニウス・セクンドゥス|プリニウスは著書『博物誌』において、人狼が現われたという噂を紹介したうえで、このような変身の存在はでたらめであると否定している。 ヨーロッパで狼を忌み嫌うのは中世キリスト教の影響も大きい。キリスト教は土着の信仰を駆逐するため人狼伝説を利用してきた。 中世のヨーロッパでは、人狼の存在が信じられており、昼間は人間の姿をしている人狼が、夜間には狼の姿で他の人間を襲い、
銀の弾丸でなければ倒すことが出来ないなどとされた。
画像:amala-1.JPG|thumb|野生児カマラ
<!--↑画像のファイル名はアマラとなっていますが、『狼に育てられた子―カマラとアマラの養育日記』(ISBN 978-4571215018)、『ウルフ・チャイルド―カマラとアマラの物語』(ISBN 978-4571210044)などの冒頭に掲載された写真の解説文をみるかぎり、この画像はカマラのもののようです。-->
童話の
赤頭巾では、狼は赤頭巾を食べようとする悪役として描かれている。ただし、
精神分析家の
エーリヒ・フロムは、狼と赤頭巾の関係は性行為を象徴していると指摘した。ペローの赤頭巾ではオオカミに騙されて服を脱いでベッドに入ったら食べられてしまう訓話になっている。
また、ロシアのアニメーション作家
ユーリ・ノルシュテインの代表作品、
話の話ではオオカミの子が人々の平和と悲しみの時代の記憶をたどる非常に重要な役割を持って登場する。また、彼の作品の
狐と兎でもウサギを手助けするキャラクターのひとりとしてオオカミが登場した。
最終更新:2008年10月22日 10:52