作者:こばやしみちとも氏&山河晴天

スーパーSF大戦外伝 首都圏空中戦

Prologue

 彼等はこの閉じられた「箱庭の星」に生きる人々を、再び星の海へ導くかもしれない。
 それは、運命の悪戯がもたらした新たな希望の物語……。




西暦2040年 3月 19:00
マクロスシティ上空

「ガルド、お前は手を出すな!」
『それはこっちの台詞だ!』

 長く心に封じていた記憶。
 かつてはかけがえの無い友だった3人。

 その記憶を取り戻したとき、悪夢が襲い掛かる。

『行け!』
「何を!?」
『お前はミュンの所へ行け!どの道ゴーストはお前に殺れん!』

 ガルドは叫び、YF-21を遮二無二に上昇させる。

 それを追う赤い無機質な影……ゴーストX9。


 BDIを通じて拡張されたガルドの意識は、後方警戒レーダーに映るゴーストを「脅威」として感じ取っていた。
 ゴーストが、間違いなく彼を追いかけてきていると言う事を。
 そして、この戦いがとんでもなく不利であると言う事も。

 幾度とも無い超音速の巴戦を繰り返すうち、ゴーストの放つレーザーは彼の機体を確実に掠め始めた。
 直後、FASTパックにゴーストの射撃が命中し爆散する。

(仕方が無い……全リミッターを解除して限界まで性能を出すしか……)

 覚悟を決めたガルドはイサムへ通信を開き、すべての感情を伝えると死を覚悟してリミッター解除の指令を送ろうとする。
 だが、その瞬間彼の視界は紅に染まり、機体もまた紅色の空間に飲み込まれた。



 ……。

 …………。

 ………………。

 ……………………歌が聴こえる。

 生暖かい闇へと呑まれた意識へと呼びかけるように、目覚めを促す懐かしい歌が聴こえてくる。

 そう、この歌は……。


 一度忘れた歌。
  意思を持った虚像の歌姫に支配される街。
   虚構の歌を打ち破るのは、心からの思いを乗せた歌。

 直後、意識が覚醒する。
 迫る地表を前に機体を急上昇させ、計器盤へ額を叩きつけた。
 そして、纏わりつく幻影を振り払いスロットルを全開にして一気に加速し、ある一点を目指す。
 それはまさに大空へと飛翔する竜鳥の如く。

 イサムはシャロンの放つ歌声の中から聞こえるわずかなミュンの歌声を頼りに機体を飛ばす。
 巨大な人型の船……マクロスから放たれる弾幕をかいくぐり、彼はその虚像の歌姫を倒さんと走る。

 マクロスのコンピュータブロックを破壊し、シャロンが消滅したかに見えた瞬間……彼の視界は紅色に染まった。



 虚像ではない、自分の思いを伝えるために彼女は歌う。
  あのときの思いを歌った歌を。
   思い出の歌を。

 そして目の前のシャロンユニットが砕け散った時、ミュンの視界もまた紅色に染まった。

最終更新:2010年09月17日 23:20