作者:こばやしみちとも氏&山河晴天
新世紀2年6月15日 午後11時
神奈川県川崎市Gアイランド:GGGメインオーダールーム
三ヶ月ほど前にようやく完全復興したGアイランドは、いつに無く喧騒に包まれていた。
「時空の不安定化をキャッチしました、場所は……北海道名寄市郊外、美深町です」
メインオペレータである宇津木命の声が響く。
常時待機と言うわけではないGGGオペレーションであるが12時間シフトが組まれており平時でも決して楽な仕事ではない。
「うむ、揺り戻しか……科学技術庁に連絡。調査隊の派遣を要請してくれ。陸自には先行調査と名寄市近辺の住民の避難誘導を」
命の言葉に、GGG長官大河功太郎は指示を出すと、再びシートに腰を沈める。
現時点で、日本国内の時空融合に関する観測施設はGGG、SCEBAIの両者がメインとなっていたが、無人モニタリングポストがメインの現状では、両施設とも実際の観測は発生地域の自衛隊や気象庁の観測班に依頼するしかなかった。
「了解、陸自旭川駐屯地に連絡。北部方面隊第2師団所属のヘリコプターを向かわせるとの事です」
「そうか、ならば……あとは万一に備えて勇者達、いや『彼等』に出動準備と待機の連絡を入れてくれ」
同日午後11時10分
北海道旭川市春光町 陸上自衛隊旭川駐屯地
時空融合後、様々な非合法組織の襲撃を受けた東京以上に緊張を強いられている地域がある。
ここ旭川もその一つだ。
時空融合の際に人口が希薄であった道東・道北地域は様々な勢力が出現していた。
一つは、原始の時代からやってきたナウマン象を初めとした野生動物達。
北海道に拡がる広大な原生林や都市近郊でもその姿が普通に見られることから、単純に数だけならばこれが最大勢力といえる。
もう一つは、北海道開拓以前の時代から来たアイヌの人々。
彼等については、その文化と風習を侵害しないことを条件に連合政府への編入に成功していた。
そして北緯44度線を境として、北海道の一部と樺太を領土としていた共産主義国家「日本人民共和国」――通称「赤い日本」――の残党であった。
このほかにも融合後の混乱期に北海道に上陸、以後潜伏を続けているドラグノフ軍(実際にはそれですらないのだが)という戦力もあるがこの時点では知られてない。
この中で危険な存在なのは言うまでも無く「赤い日本」の残党であった。
赤い日本は首都を樺太最大の都市、豊原に置いていたのだが出現したのは彼らの首都である豊原市を含んだ樺太ではなく、ソビエト崩壊直後の1990年代からやってきたロシア領サハリンであった。
首都からのコントロールを失った赤い日本軍の殆どが直後の混乱の最中、自衛隊及びロシア軍の説得に応じて投降し多くが自衛隊に編入されたものの、未だ数個師団に相応する戦力が頑として投降してくる気配をみせていない。
彼らの中にはMBTを含む機械化部隊も多数確認されており、小競り合い程度の戦闘記録は融合以来の一年間で20件以上にも及ぶ。
このため、旭川から名寄を経由して稚内へ向かう国道40号線は地雷を警戒して通行できず、日本連合下の自治領となったサハリンへの連絡は軌道強化された状態の宗谷本線を使い戦前の規模で現れた稚泊連絡船か、小樽か留萌から船舶を利用するしかなかった。
いつ大規模な戦闘が発生するかわからない状況の上、旭川・名寄などの復興作業に持ち込まれたレイバーによる犯罪対策に警察が躍起になったため、治安維持の意味合いも含めて道北の守りを固める第2師団は優先的に戦力増強が図られていた。
近いうちに中央に先駆けてWAP中隊の編成も考慮されている。
GGGからの連絡が入ってまもなく、第2飛行隊所属の偵察ヘリOH-1・2機とAH―64Jアパッチ・2機。
そして観測機器を搭載したMATジャイロが旭川駐屯地を離陸し、名寄方面に向かった。
同日午後11時20分 航空自衛隊千歳基地
旭川駐屯地から偵察隊が飛び立ってまもなく、自衛隊には緊張が走った。
突如として所属不明の飛行物体が10機以上、旭川近辺から留萌沖の上空に出現した事が長沼町のレーダーサイトで確認されたのだ。
直ちに千歳基地からアラート任務についていた第201飛行隊のF-15Jイーグル4機と支援として第204飛行隊のMig-29Jファルクラム4機、三菱F-2支援戦闘機4機が離陸すると北へ進路を取る。
この時点では出現した飛行物体が何者か全くわからなかったため、昨年に川崎市で大暴れしたイリスの悪夢が自衛隊関係者の脳裏を過ぎっていた。
あるいは、半月前の首都圏における無人戦闘機の様な物が現れた場合はどう対応を取るべきか。
否応無しに緊張が走った。
だが、この時点では現れた存在が同時期に判明したゾイド連邦には及ばないものの、十分に驚愕するべき存在であることを誰も知る芳が無かった……。
Super Science Fiction Wars Outside Story
Steel Eye'd ladies~鋼鉄の眼差しの乙女達
第1話 時を越えた出逢い
「っつー……何があったってのよ……」
オムニ軍軍総省直属第177特務大隊隊長 ヤオ・フェイルン海軍中佐は任務の最中、突然として自分たちを襲った謎の衝撃からやっとの思いで目を覚ました。
自分の体をチェックしてみる、何処にも外傷は無いようだ。
続いて機体チェック。
自己診断モードでは機体にも装備にも異常は見受けられない。
ただ、機体そのものは斜めにかしいだまま崖に顔面からめり込んでいるようだ。
どうやって脱出しようか、としばらく考えていると無線に通信が入った。
『こちらヒドラウィング、ハーディだ。無事なものは居るか?』
「こちらシルバーリード、ヤオ。機体が地面にめり込んでいる以外はほぼオールグリーン。誰か助け呼んでくんない?」
無線から聞こえたハーディの声に、ヤオはこたえる。他のメンバーの応答する声も次々と聞こえてきた。
『総員無事か……良かった』
無線機越しにもそうと判るハーディの安堵の声が聞こえてきた。
「それは良いんだけどさ、シルバーで誰か手の開いているのが居たらこっち来てくれない?地面にめり込んでいて脱出出来ないのよ」
機体そのものはノーダメージであり、後部脱出ハッチを開けて脱出するのは気が引けたのである。
「先輩!」
「セルか?早いところ引っ張り出してよコレ……」
そうヤオに声をかけたのはヤオの士官学校時代の後輩でもある銀髪のコンピュータことセルマ・シェーレ。
彼女はヤオ機の肩を後ろからつかむと、一気に引き起こした。
現在ドールズが使用しているパワーローダー、X4S型はオプション交換で白兵戦から電子戦まで対応できるマルチプル・ローダーである。
それゆえに製造コストが掛かり、本格的な量産化にはいまだ至ってないのであるが……。
「ありがと、セル。シルバーフォックス、全員動けるか!?」
セルマに助け起こされたヤオは、周囲を見回すと隊全員に聞こえるように通話を開いた。
「はい!」「何とか」「動けます!」「全装備異常なし、大丈夫です!」……。
全員無事なだけではなく戦闘も可能らしい。
「総員警戒態勢!周囲の様子に注意しろ!」
全員に檄を飛ばしたその直後だった。
『こちらグレイリード、ナミ。ヤオ、あの空見て!』
別動隊、グレイハウンドの指揮を執っていたタカス・ナミから切羽詰まったような声の通信が入った。
「何よナミ……月がどうしたってのよ?」
そういいながら空を見上げたヤオは、思わずその場で絶句した。
「ねぇ、今日ってどっちか皆既月食って言ってたっけ?」
オムニには二つの月があり、それぞれを「パルテナ」「アルテミス」と呼んでいる。
だが、今ドールズの上にある月は、その二つの月より大きな月が一つだけ、ぽっかりと浮かんでいるのだ。
「……たしか月食じゃあなかったハズですけど……」
ヤオのX4Sの傍らに居た電子戦専用ローダー、X4RRに乗っていたマーガレット・シュナイダーが自信なさげに答える。
『月が一つしかない惑星……って言ったら……』
現在オムニに住む人類が知っている月を一つしか持たない、人が住める星と言えば一つしかない。
だが、ヤオの中の常識と言うものがその答えを出すことを拒んでいた。
「ちょっと……冗談顔だけにしてよ……」
指揮官が混乱していては話にならない、ヤオは気を取り直すと亜空間通信センターの位置を確かめ残りの2部隊、ナミ率いるグレイハウンドとファン率いるブルーウルフに通信センターへ集合することを通達し、シルバーフォックス全体に移動の命令を下した。
「シルバーリードよりヒドラウィング、周囲の状況はどうなってんの?」
メンバーが通信センターに集結した事を確認すると、ヤオは上空管制機ヒドラウィングの第177特務大隊司令・ハーディに連絡を取った。
「フェイルン、頼むから驚かないで欲しい。お前たちが集合するまで周囲を警戒飛行してみたが、ここはどうもオムニではないらしい」
『……やはりか……』
「ハーディ、やっぱりあんたもそう思う?」
移動の最中も周辺環境やあたりに繁殖している植物を調べたが、多くがオムニには存在していない種類の被子植物であった。
PLDには植物辞典など搭載しているはずは無いので確証は得られないが、植物のほとんどがオムニには自生していないものであり多くが地球には自生しているが、オムニには持ち込まれていない種類のものであろう事が判明していた。
「それにこっちも燃料がおぼつかない上にウィングと連絡が取れない。連絡を取るのでこちらも通信センターへ降りる」
それから数分もせずに通信センターのヘリポートに大型垂直離着陸機であるVLC3をベースにした電子戦機、VE-1が降下してきた。
さて、ここからは時系列が少々入り乱れる事をご容赦願いたい。
午後11時25分、積丹半島沖20Km
スクランブルを受け千歳基地から飛び立った計12機のF-15、Mig-29、F-2からなる戦闘機隊は突如出現した領空侵犯機を目指し、亜音速で向かった。
これは進路上に札幌市を初めとした人口密集地帯が多く、音速飛行は影響が大きすぎるためだ。
最初に発見されてからすでに5分近い時間が過ぎている。
最初かなりばらけて発見されたUNKNOWN機の群れは、だんだんと留萌沖の洋上に集まりつつあることが確認された。
その数およそ14機、機種は特定できないが大型の……レーダー反応から行けばC-5Aギャラクシーより大きいと思われる輸送機が6機、それより小型の……おそらく戦闘機と思われるものが4機、それよりは大きい、速度から行くと大型ヘリコプターと思われるものが4機と言うのがレーダー分析により伝えられたことである。
「SIF照合、該当機体なし。ウィッチリードよりトレボー、アンノウンを確認。これより警告に移る。オーバー」
「こちらトレボー、了解した。アンノウンの機種は特定できない、慎重な対応を望む。オーバー」
千歳基地でのコールサインは、誰の趣味かわからないが人気のあったRPG「ウィザードリィ」にちなんで名づけられていた。
現在アンノウンに向かっている小隊のコールサインは以下の通りウィッチ-F15、シーフ-Mig29、プリースト-F2、と覚えておいていただきたい。
ウィッチリードを勤める牧瀬俊 三尉は機体が洋上に出たことを確認すると、推力を上げて接近を始めた。
「こちら日本連合国航空自衛隊、未確認機に告げる。貴機は日本国領土を侵犯している。直ちに我に返答をし、指示に従え。繰り返す」
国際共通周波数にあわせ、牧瀬は融合前にはお約束のように繰り返した警告メッセージを放つ。
だが、酷い空電のあと入った言葉に彼は唖然とせざるを得なかった。
『こちらはオムニ連邦軍第177特務大隊航空小隊、「ドールズウィング」。日本連合とは何だ?こちらは燃料がおぼつかない、最寄の基地まで誘導願いたい。オーバー』
女性と思われる声は、少なくともその言葉が冗談で言っている言葉でないことだけを牧瀬に伝えていた。
「ウィッチリードよりトレボー、所属不明機は敵対の意思希薄と思われる。どうやら時空融合の揺り戻しがあったようだ。オーバー」
すでに幾度か揺り戻し現象の影響で出現した航空機を誘導したこともあり、千歳基地の航空隊にとっては慣れた仕事であった。
「トレボーよりウィッチリード、現在名寄市郊外で揺り戻し現象が起きているが、それの影響の可能性がある。要らん刺激を避けて我々の基地までご案内しろ……何だ?」
「ウィッチリードよりトレボー、どうした?」
トレボー(千歳基地管制所)が語尾を妙に濁したことに牧瀬は戸惑った。
「トレボーよりウィッチリード、大変だ!現在ベースの近くでも揺り戻し現象が発生している。危険だ、お客さんは三沢へ誘導してくれ。オーバー」
「こちらウィッチリード、了解した。オーバー」
航空自衛隊千歳基地と民間空港である新千歳空港の南側には、緩衝地帯の役割も含めて大きな空白地帯がある。
だが、この地域がウィッチ小隊達が離陸してまもなく、見る見る内に二つの巨大な軍事基地へと変貌し始めたのだ。
「どういうことだ、コレは?」
基地司令は戸惑いと興奮が入り混じった口調で、調査班の出動を要請していた。
空間が安定し、光の膜が薄れた基地内に突入した調査班が見た建物には地球に似た惑星をかたどったシンボルと、陸自のWAPに似た人形兵器に天使が抱きついたイラストを記したイングシニアが描かれ、こう記されてあった。
『O.M.N.I 177esc Detachment of Limited Line Service』
午後11時30分 神奈川県川崎市Gアイランド GGG格納庫
さて、ここで場所は再びGGGに戻る。
北海道にて揺り戻し現象で幾つもの未確認物体が出現していた頃、GGG内の格納庫ではメカニックが総出で二機の戦闘機に取り付いてメンテナンスを実施していた。
「今回は緊急のミッションだから時間が無い。ハードポイント(パイロン)への火器装備はいいから機体のチェックを入念に頼む」
「ミサイルが機体内に納まらない?かまわねぇよ。今回は目的が戦闘じゃないんだから降ろしてくれ」
彼等の中心にいるパイロットスーツ姿の二人が、テキパキと指示を出しながら戦闘機の様子を見守る。
格納庫内にターレットトラックが到着すると、その荷台から新たな機材が降ろされ戦闘機の傍らに運ばれていく。
「しかし、まさか輸送作業の当日に出撃とはねぇ……」
「杞憂に終わればいいんだがな……」
戦闘機のパイロットである二人、イサム・ダイソンとガルド・ゴア・ボーマンの両名はそれぞれの機体――YF-19とYF-21――を前にして少し前にメインオーダールームへ呼び出されたことを思い出す。
5月末の揺り戻しでこの世界に出現して約半月、自分達の今後について等を話し合った安全保障会議も終わって新しい生活を始めた彼等。
この日は、機密保持の為に二機の戦闘機を防衛省の「パンドラの箱」に移すための作業でGGGに夜遅くまで残っていたのである。
技研まで機体を直接飛ばすのは機密保持と離着陸の関係上無理がある為、深夜中に大型トレーラーで陸上輸送するというのが今回の作業内容だった。
立会いに来ていた二人も、自分達の乗機が無事パンドラの箱に収納されるまでの作業を見届けるだけと思っていたのだが、機体の梱包作業にかかる直前で急遽中止の一報が入る。
何事かと思ったイサム達が、メインオーダールームからの呼び出しで到着すると、待っていたのは大河長官による出動準備要請だった。
そこで、揺り戻し現象が北海道で起こっていることを二人は知らされ、準備が整い次第すぐにでも偵察に飛んで欲しいと言われたのである。
「北海道まで飛んでの偵察任務……か」
「ま、当分は倉庫行きなんだからよ。その前に最後のフライトという感じで気を入れて行こうぜ。それに、政府の方からも許可が出たわけなんだから……ってありゃなんだ?」
「どうしたイサム?」
ガルドが作業光景を見ながらつぶやく。
一方でイサムも同様に作業の様子を見ていたが、そこに一台の大型トーイングトラクターが奇妙なパッケージを牽引してやってくるのを目に思わず言葉を止める。
すると、トーイングトラクターを自ら運転してきた獅子王博士が二人の前でトラクターを停車させた。
「いいものを持ってきたんじゃ。多分これがあれば任務ももっとやりやすくなると思ってな」
「獅子王博士、これは一体……?」
そのパッケージはちょうど、VFの腹に吊り下げると思われるような形状をしており、刃物を思わせる巨大なブレードアンテナが目立っていた。
「こいつは試製複合偵察ユニット「エレメント」。SR-X計画で用いる装備の一つとして技研で試作されておったのじゃが、こんなこともあろうかと緊急で回してもらったのじゃよ」
「なるほどねぇ……ありがたいけど、これ本当に俺達の機体へ取り付けて大丈夫なんですか?」
「エレメント」と呼ばれたユニットをまじまじと見ていたイサムが怪訝な表情を浮かべる。
「強度的にはなんら問題ないはずじゃよ。ただ、2機に取り付ける上で規格が合わない問題はあったが、そこは……」
「そこは?」
「ウチの整備班がハードポイントに合わせてアダプターを自作することで解決した」
「それはありがたい話です。博士」
「博士の太鼓判があれば、問題なしってとこだな」
「なに、こちらとしても機体のデータを取らせてもらえるいい機会だからの。それに、使い慣れた装備を持ち込めない代わりと思ってくれんか」
博士の言うとおり、今回の出撃に際して揺り戻し出現前から二機に装備されていた武装――具体的にはガンポッド、マイクロミサイル、FASTパック等――はこの時点で既に技研とSCEBAIへ送られていた。
これらは、主要消耗品のコピーと生産を目的とする分析に回される事が既に決まっていた為、揺り戻し出現後に行なわれた報告会が終わるやすぐ機体から取り外されたのである。
その為、二機に搭載される火器はレーザー機銃を除けば、いずれも他の自衛隊機に装備されているものと同じ規格の機銃やミサイルに置き換えられる予定だった。
結局、実際の動作テストも数える程しか行なってないのと「パンドラの箱」に収納されるのが近いこともあって今回のミッションでは取り外しているが……。
「俺達がこっちに現れてから、ほぼ毎日機体を見てくれてるんだ。不安なんてありゃしないぜ」
「大丈夫です。皆を信じていますから」
メカニック達が「エレメント」を二機の胴体下にあるハードポイントへ固定する作業を見ながら二人はそう話す。
イサムもガルドもGGGの整備スタッフを信頼している。
揺り戻し出現の直後は、開発スタッフ以外の人間が機体に手をつけることへの不安はあった。
だが、その後の報告会に先立って行なわれた事前調査の際、そして今日この日までの間にも機体を二人の予想より遥か丁寧に扱ってくれている事が、先の言葉となって現れているのである。
「ありがとう……さて、もうすぐ最終チェックも終わる。さっきの言葉は帰還したら君達二人の口から直接彼等にかけてやってくれんかの」
「ええ。それでは博士、我々はこれで……」
「行ってくるぜ!」
そう言って二人は、それぞれの乗機に向かった。
彼等の出動まであと僅か……。
午後11時40分 北海道美深町
「周囲のサーチを続けていてくれ、少しでも現状を把握したい」
ハーディの言葉が冷えた空気に響く。
ドールズはもてる電子能力をフルに活用して周辺地域の情報を得ようとしていた。
「放送されているラジオ・テレビなどを傍受した結果を分析すると、やはりここは地球……場所は日本の北海道北部と思われます」
情報を分析していたフレデリカ・アイクマンが代表して結果を報告する。その言葉に集まっていた隊員たちには失望ににたため息が流れていた。
PLDをセンター周辺の平地に車座に降着させ、無人のセンター本屋内にてドールズは会議を持っていた。
本来ならセンター内には研究のための職員が居たはずなのだが、まるで冗談のように人だけが居なくなっていたのだ。
「100%言い切ることは出来ないが、証拠は沢山有る。まずベースとの連絡が取れない。中央作戦司令室にもだ」
「広域ジャミングをかけられている可能性はありません。通信状況は極めてクリアですから」
「困ったな……」
「ジアスの謀略、と言う線はまずありえないわよね」
ヤオがもっともな事を言う。とてもではないが月を一つに見せたり地球のラジオやテレビの情報を流すなどと言う事をわざわざジアスがやるはずが無い。
やるとしたらとんでもなくクレイジーな事だ。
「それ以前に、航空隊との連絡が付かなくなっているのが気になりますが……」
セルマの言葉に、全員頷く。
これだけ電波がクリアな状況であればすでに連絡が取れているはずなのだが、直後の数分間以降は、通信確認が取れているブリップすらも表示されて無いのだ。
「仕方が無いわね……周囲への偵察隊を出すしかないのでは?」
ヤオが提案する。航空隊による回収を受けるために集合していたが、このまま居座っていても埒があかない。
少しでも周辺の状況を把握するためにも、偵察隊を出すべきだろう。
「了承した、ヤオ、ナミ、ファン。メンバーの選出を急いでくれ」
「了解!」
最終更新:2011年01月05日 22:14