午後11時55分 太平洋上空 高度15000メートル

Gアイランドを飛び立ったYF-19とYF-21の二機は、一旦太平洋上に出るとマッハ3.3の速度を維持して現場である北海道名越市近郊を目指していた。
機体のスペックからすれば更に速く飛ぶことも可能だったが、今回は機密保持の点からアメリカのSR-71“ブラックーバード”に近いこの速度で飛ぶしかなかったのである。

『もうすぐ北海道に入る。二人とも機体の調子はどうじゃ?』

コクピットの通信ウィンドゥにはGGGのメンバーが入れ替わり立ちかわり顔を出し、連絡を取り続けている。
現在は獅子王博士が顔を出しているところだ。

「ああ、いいねぇ。絶好調っすよ」
『搭載している「エレメント」も異常ありません。このまま現場への飛行を続けます』

二人は互いの機体下部に吊り下げられた偵察ユニットへと目を向ける。
目視する限り異常は見られず、取り付け部のハードポイントから脱落する様子もなかった。

『「エレメント」の強度は設計上マッハ5までは耐えられると技研の技術者が言っておった。よほどのことがない限り問題なく動作するはずじゃよ』
「なるほどねぇ……それにしても、俺達の機体に殆ど手を入れずに新しいユニットを搭載するとは驚いたぜ博士」
『装備する際に機体へ手を加える必要があると思っていましたが、チェックして驚きました。まさか本当に無改造とは』

イサムとガルドが言う通り、彼等が乗るYF-19,21の両機は揺り戻しからGGGへの収容を経て今現在に到るまで、装備の一部取り外しを除けば機体には全く手を加えられてなかった。
今回装備した「エレメント」の取り付けに際しても、機体のハードポイントに合わせてエレメント側の接合部を機体にあわせる為に改修したほどである。

二人にすればこれは驚きだった。
出現後に連合政府へ自分たちの情報を提供することに同意した以上、機体にどんな手を加えられてもそれは仕方がないと思っていた。
だが、機体のチェックをすると装備の取り外しを除けば異常を示す結果は出なかったのである。

『要するに、君達の機体がそれだけ重視されているということじゃよ。実は今回の出動についても政府、いや技研から色々要請があったんじゃ』

最後の一言に「?」となる二人へと博士は何があったのか説明する。

「パンドラの箱」に収められるまでの間、YF-19,21の両機は基本的に出動不可能という事実上の封印状態にあったが今回は限定的に政府からの許可が出た。
しかし、2機の可変戦闘機に用いられているテクノロジーは得がたいものであった為、事態を知り慌てた技研は政府経由で条件を出してきたのである。

その条件というのは、機密保持の観点から機体の運用は緊急時を除いて基本的にファイター形態に留める事や用途を偵察レベルに限定することだった。
主要消耗部品の第一ロットはおろか試作品すら出来ていない状況下では機体が損傷して実機のデータが失われるのを技研は恐れたのである。

GGGへまだ試作段階の「エレメント」を提供することに同意したのも、前出の様な条件にGGG側が同意したことへの見返りでもあったのだ。

『とにかく、無茶はせんでくれ。もっともその必要もないみたいじゃけどな』
『どういうことです?博士』
『それは、私から説明しよう』
「大河のオッサン……じゃねぇ、長官さん」

獅子王博士に代わって通信ウィンドゥに大河長官が出たことで二人は一瞬驚く。
長官が出てきたという事は、それだけ重要な情報を伝えるということなのだろう。

『緊張しなくてもいい、むしろこれから話すことは朗報と言うべき内容だ』
『何があったというのですか、大河長官?』
「もったいぶらず言ってくれよ」

朗報との一言に二人は緊張を解く。
もっとも、これがゴーストと一戦交えたときのような状況なら緊張も何も無いのだが……。

『実は君達に向かってもらっている場所とは別の所で領空侵犯する航空機の一団が出現したんだが、この一団と空自のスクランブルした飛行隊が接触し現在三沢基地へ誘導中とのことだ』
「なるほどね。つまりそれと俺達が向かう先に出現したモノと何か関係があるってことでいいのか?」
『揺り戻しの時刻や場所が同じ北海道内という事から、同一の世界から出現したと見ていいだろう。そして、件の航空機は今のところ敵対の意志もなく空自の誘導にしたがっているらしい』
『ですが、もしその一団と我々の目的地に出現していると思われる存在が敵対関係にあるとすれば、我々も戦闘に突入する可能性があるのではないですか?』

そこに両機の通信ウィンドゥがもう一つ開き、再度獅子王博士が会話に加わる。

『ガルド君の懸念はもっともじゃ。だがの、出現した存在が人類にとっての敵性体或いは攻撃的な組織なら、民間からの被害報告が来ていても可笑しくないはずなんじゃ』
『それに、もう一つの揺り戻しで出現したモノの存在からも、君達が交戦する可能性が低いと思われるのだよ』
「また何か出現したってのかよ?」
『君達には話してなかったが、航空機の一団を千歳基地に誘導する直前で基地周辺に軍事施設が出現した。基地の調査班が施設に向かったのだがその建物に「O.M.N.I 177esc Detachment of Limited Line Service」という文字を確認したそうだ」
『それと航空機の一団も、無線交信の際所属を「オムニ連邦軍第177特務大隊航空小隊“ドールズウィング”」と名乗ったそうじゃ。建物にあった文字も頭を取ると同じ“DoLLS(ドールズ)”なる。ここまで言えば解るじゃろ』

大河司令の言葉に続いた獅子王博士の言葉に、二人は納得がいったという表情を浮かべる。

『つまり、我々が向かっている場所に出現したのもやはりその“DoLLS”の類ではないかという事ですか?』
「恐らくじゃなくてほぼ確実にじゃねぇのか?場所もバラバラなのに同じ名前ってのはよ」

イサムの一言に大河司令も肯いてみせる。

『その通り、私も同じ事を考えていた。君達に向かってもらっている場所へ出現したのも場所は違えど“DoLLS”を名乗る組織の可能性が高い』
「なるほどね。さっきの話と合わせて考えりゃ、交戦する可能性は低いってことか……」
『揺り戻しから時間が経っているこの時点で被害報告が来ていないことを考えれば、“DoLLS”と我々日本連合のどちらが先に接触を図るにしても戦闘という最悪の事態に到る可能性は限りなくゼロに近い筈だ』

「戦う必要はほぼ無い」という事を知ってイサムとガルドは安堵する。
一方で獅子王博士は、技研の職員が悲鳴をあげて卒倒することはなさそうじゃな、と思った。

『了解です大河司令。とりあえず、我々はこのまま現場へと向かえばよいのですね』
『そうだ。もしその一団を見つけたら捕捉したまま情報収集の任務に入って欲しい』
「なら、戦闘は想定しなくていいみたいだけどよ……万一、最悪の事態ってことになったらどうするんだよ?」
『それについては既に空自の方で準備をしているとのことだ。君達は出現した存在の制圧など考えず、極力自衛に徹してくれ』
「了解……っと、どうやら目的地上空まであと少しだ」

最悪の事態に備えた準備が何であるのか、少し気になったイサムだがそれを聞くより先に目的地到達が近いことを知らせるアラームが鳴り響いた。
それと同時にガルドからの無線が入ってくる。

『イサム、「エレメント」を起動させるぞ』
「お前に言われなくても分かっているって」

直後、YF-19とYF-21に装備された「エレメント」のブレードアンテナが展開し情報収集を開始する。
果たしてこの偵察ユニットは初の実戦でどれ程の性能を発揮するのか……。



6月16日 午前0時
北海道美深町

偵察隊はまず索敵能力の高さと機動性、いざという時の火力が優先される。
自然とこの任務には、最新鋭で十分なペイロードと汎用性、機動性を持ったX4Sが中心になるのは必然であった。
偵察隊に編成されたメンバーは以下の通り。

第1偵察隊(αチーム):北方面中心
ヤオ・フェイルン中佐:X4S(マルチセンサー+リニアキャノン装備)
セルマ・シェーレ大尉:X4S(リニアキャノン+汎用ミサイル装備)

第2偵察隊(βチーム):東方面中心
タカス・ナミ中佐:X4S(マルチセンサー+リニアキャノン装備)
エイミー・パーシング大尉:X4S(リニアキャノン+汎用ミサイル装備)

第3偵察隊(γチーム):西方面中心
アリス・ノックス大尉:X4S(リニアキャノン+汎用ミサイル装備)
ミリセント・エヴァンス准尉:X4S(マルチセンサー+リニアキャノン装備)

第4偵察隊(Δチーム):南方面中心
ジュリア・レイバーグ少佐:X4S(マルチセンサー+リニアキャノン装備)
コウライ・ミキ特務軍曹:X4S(リニアキャノン+汎用ミサイル装備)

索敵距離と電子戦能力であれば標準でパッシブセンサーも搭載しているX4RRが有利なのだが、いかんせんペイロードが小さい上にいざという時の装甲の薄さを考えると、むしろその広い索敵範囲を生かすためにも高台上になっているセンター周辺に居た方が有利だという判断であった。

「出来るだけ交戦は避けるように、半径20km圏内の情報を入手後は速やかに戻れ!」

編成と装備の譲渡を終わらせ、それぞれの方向に向けて出発して10分ほどした後だった。
西方面に向かったミリセントとアリスは、数分もしないうちにセンターの西側を南北に走る道路に出た。

「こちらγチーム、エヴァンス。道に出ましたが敵らしい反応は見当たりません。オーバ」

マルチセンサの反応を見ながらミリィは報告を入れる。
それでも敵に発見される危険性を危惧してアクティブサーチは極力避けるようにしている。

『こちらヒドラウィング、ハーディ。了解した、引き続き偵察を続けてくれ。オーバ』
「了解です、オーバ」
「ミリィ、あちらの標識、見られて?」

実家がオムニ屈指の資産家であるアリスが、令嬢らしい丁寧な口調でミリィを呼んだ。

「国道……275号線?」

オムニでは、第2公用語の一つとして日本語を用いていた。
民族的にマイノリティであるはずの日本語をなぜ公用語として採用したのか判らないが、この場合は役に立った。

アリスが道路を伝って行ける所まで言ってみようと提案したときだった。
ミリセント機のマルチセンサが複数台の車両の接近を伝えていた。

「この音……アリスさん!、隠れます!!」

そういうとミリィはすばやく道路わきの鬱蒼とした森の中に隠れ、隠蔽姿勢を取った。
5分ほど息を潜めていると、暗視モードに切り替えたローダーの視界に10台以上の車両の群れが入って来た。

「見たこと無い形式……ですわね、ミリィ」
「えぇ、ずいぶん古臭いというか……たぶんあのAPCなんか複合装甲ですらありませんよ」

目の前を通過する車両は、ミリィたちの時代からすると当たり前の複合装甲独特の角ばったフォルムをしていなかった。
車体を主に鋳造で構築されたと思われる丸みの強い形状のキャタピラ式装甲車やMBTが轟々と音を立てて過ぎていく。
その中の何台かには、砲塔にかつての日本の国旗である日の丸の丸を赤い星に置き換えたようなペイントが施されていた。

「しかもエンジンの放熱量や排気ガスから行くとエンジンはおそらくガソリンか軽油です。あんなものオムニには絶対無いですよね」

21世紀初めから、ミリィたちの世界では内燃機関の燃料としては水素が一般的になっていた。
初期の頃はガソリンから改質機で水素を取り出して燃やしていたらしいが、有機ハイドライドを用いた安定化によりそれまでの石油燃料と変わらない感覚で水素を扱えるようになって以来、石油を燃料とする必要性がなくなっていたのだ。
地質タイムスケジュールでジュラ紀に相応し、石油などの有機資源が少ない オムニではなおさら水素燃料は重要といえるだろう。

「どうします?」
「ミリィ、今の画像は撮ってらっしゃいますわね?」
「はい、転送しておきます?」
「よろしくお願いしますわ」

南方面に向かったジュリアは、ウルベシ橋と言う名前の橋の袂に来た際、マルチセンサに複数のヘリらしいローター音を捕らえた。

「ミキ、下がって。あんた確か対空ミサイル持っていたわよね」
「はい、持ってますが……」

ミキの答えに、ジュリアは表情を硬くさせた。
元々迫力のある顔だ、と言われるジュリアだが、徹底した自信に裏打ちされたものであるゆえに頼れるものがある。

「いつでも撃てるようにしておいて、何があるか判らないから」
「わかりました。でも、ジアスのヘリじゃなかったら……」
「良いからやっといて」
「ハイ……」

しぶしぶながらミキは自分の機体が装備しているDRu35対空ミサイルのセイフティを解除する。
ドールズで戦う者にとって、小型ヘリや対戦車ヘリは天敵と言っていい存在である。
ましてや制空権が確保されていない空域に強襲輸送機や潜水艦から発射される大型巡航ミサイル・カーゴバードで突入する任務も多いため、PLDにとっての天敵である戦闘ヘリには不必要なまでに警戒心を抱いてしまうのだ。

マルチセンサーのスクリーンに映るブリップは3つ。
ヘリコプター4機と中型のティルトローター機らしい。

「どうします?」
「どうって……ローター音がライブラリに無い形式だからね。どうしたものか……」

接近するローター音は、オムニ陸軍航空隊が保有する対戦車ヘリの音でも無ければ、DoLLSの天敵HAT21小型ヘリでもHC11対戦車ヘリでも無かった。
石油燃料系ガスタービンの音だ。

「ROTで接近している……。もう少しでシルエットがはっきりしそうですけど……RRがあったらもっと楽なのに……」

X4S専用オプション、VP1肩装備型マルチセンサーは索敵範囲こそ両腕にマルチセンサーを装備したX4RRに匹敵するが情報処理・分析能力という面ではやはり専用設計され、ニューロコンピュータなどの高性能デバイスを有するX4RRには敵わない。

「距離2500!準備しておいて。攻撃するようだったらすぐに撃ちなさいよ!」
「はい!」

センサーのマイクを通じて伝わるローター音が一際強くなる。
シルエットが判明した瞬間、ジュリアは我が目を疑った。
暗闇の中、コンピュータによって調整された画像にはくっきりと日本国所属であることを示す赤い丸(ミートボール)と「陸上自衛隊」の白い文字が浮かんでいたのだ。

「陸上……自衛隊?」

右スティックのトリガーに置いた指をずらし、ジュリアは思わずヘルメットのバイザーを上げて目をこする。

「ミキ……あんたも見た?」

もう一度バイザーを戻し、見直す。
やはりミートボールと陸上自衛隊の表記が見えた。

「こりゃ、本当に私たち日本に来てるみたいだな……。あ~あファイナル・カウントダウンってか?、あはは、あはははははは……」
「レイバーグ少佐!大丈夫ですか?ちょっと!ジュリアさん!」

コクピットで馬鹿笑いを始めたジュリアに、思わず錯乱するミキであった。
東方面に向かったナミとエイミーは、約20分ほどの高速移動モードで山の頂にまで駆け上った。
とりあえず山の向こう側を見る必要性が有ると判断したためだ。

「エイミー、あれ……」
「牧場……街が見えますね……」

とりあえず、ナミはエイミーの腹が満腹であることに感謝した。エイミーは満腹であれば冷静沈着、もてる能力をすべて発揮してドールズでも1・2を争う対空屋ともスナイパーともなるのだが、少しでも空腹となるとおつむテンテンのおバカ娘になってしまうのだ(笑)。
後に某バターロールヘアの不幸娘やいい気になっている同人作家娘の存在を知ったドールズメンバーは「やっぱりえいみーって名前の女はバカになるのかしら……」と残り大多数のエイミーさんが聞いたら名誉毀損で訴えられそうな事を真剣に考えたという。

それはさておいて、ナミはこのまま一旦センターへ戻るか、この街の様子を偵察するかしばし悩んだ。
ここが本当に地球、日本であるとすればX4Sのような巨大な人形兵器はあるはずが無いし、街まで1,2時間程度で戻ってこられれば良いがもし夜が明けてしまった場合、X4Sを発見されると酷だ。
自爆させても証拠は残ってしまう。

「引き返すしかないわね……エイミー!戻るわよ!こちらβチーム、タカス。東の山の向こう側を観測したところ、中規模程度の農場と街を発見。無用な刺激を避けるためコレより帰投します。さらに言うと……北側にこちらの施設と酷似した建築物を確認しています」
『ヒドラウィング、ハーディだ。その施設はヤオとセルマが調査に向かっている。ジュリアからの報告で『陸上自衛隊』のヘリが向かっているらしいので早いところ戻ってきて欲しい。オーバ』
「了解、オーバ」
『ご苦労様』

問題は北方面に向かったヤオとセルマのαチームだった。
彼女たちは北へ向かって高速で移動を続けるうちに、先ほど自分たちが出発したばかりの地点に戻ってきたのかと一瞬錯覚した。

「セル、あたしたちさぁ、ちゃんと北に向かって走ってたよね?」
「えぇ、そのはずですけど……」

ヤオ達の目の前には、先ほどの建物と酷似した亜空間通信施設が夜空にそびえていた。

「微妙に違う気もするね。まさか……地球政府もオムニと同じ亜空間通信施設を?」
「の、可能性はありますね」
「判った。こちらαチーム、ヤオ。地球政府の物かと思われる亜空間通信施設を発見……あれ?どうしたんだこれ?」
「せんぱ……ザザザザザ……」

ヤオの疑問に気づいたセルマが答える前に、無線はノイズで満たされた。
急いで接触回線を開くと、セルマの声が聞こえてきた。

「先輩、これって……」
「十中八か九、ジャミングね。急いで隠れた方が良い!」

ヤオとセルマが大急ぎで起動させ、離れた瞬間だった。
今まで居た地点を中心にした半径30mほどが、一気にバッと燃え上がった。

「榴弾砲?」

機体をどうにか安定させながら、ヤオはセンサー出力を最大に上げて砲撃地点を推測した。

「砲撃地点はあの通信施設……?だけどあんな高台に200mm榴弾砲を揚げるか?」

コンピューターが推測した砲撃地点は、とてもでは無いが戦車や装輪式車両では重い榴弾砲を載せて上れる道路はつながっていない。
だとするとPLD?いや地球には戦闘用としてPLDを装備している軍隊はありえない。

それ以前に200mm砲を搭載できるPLDなど聞いたことも無かった。

「セル!出来るだけ近づいてプローブを投げてみるから。援護して」
「判りました!」

セルマの返事を聞くと同時に、ヤオは愛機をフル加速モードで突撃させた。
紙一重とも言える距離で敵の放つ砲弾が炸裂する。
飛散した破片が装甲に当たる乾いた音が響いた。

「700……600……550……今だ!」

そう叫ぶとウェポンセレクターを開き、右太股の2番ポケットに装着していた自律偵察ポッド・プローブを射出すると、フルブーストをかけて地面を蹴り上げ180度ターンを決め、出来るだけ直線的な動きを避けて一気に遁走した。

「セル!間合いを取るよ!」

そういうと待機していたセルマを引きつれ、おそらく敵機の索敵範囲外と思われるところまで一気にダッシュをかけた。

「さて、何を撮って来たのかね……」

プローブから送られてきた画像を見た瞬間、ヤオは唖然とせざるを得なかった。

「PLD?」

その画面の中には、X4をさらに華奢にしたような印象を持つPLDが何機も写っていたのだ。肩の装備から行くとC型やRR型らしき機体も見える。

「……ですよね、多分。妙に華奢ですけど。」
「でも中にはX4に近い外見の奴も居たわね。」

ヤオの目は、目ざとく他のローダーとは印象の違う外見の機体を見つけていた。

「先ほどの榴弾砲ですけど……撃ったのは多分この四脚式でしょうね」

セルマが再生映像を見ながら指摘する。

「この首なし……ひょっとしたらステルスタイプかも知れないわね。前にナミが研究してるって話していたことあったし」
「だとしたら……もう現れているかも……」
「!」

ヤオはほとんど野性的カンで左手に装備していたM63ショットシェル・グレネードを連射する。
ボム!という爆発音を発して周囲のトドマツの茂みが吹き飛び、吹き飛ばされた落ち葉が光学迷彩で隠蔽したPLDのシルエットを映し出す。

「セル、電障弾!」

ヤオが叫ぶと同時に、セルマがW800スナイパーライフルを構え、電障弾を発射する。
命中した電障弾は強力なEMPパルスを発射し、相手PLDを行動不能に持ち込むはず……であったがそのPLDは何とも感じずにサブマシンガンらしきものを連射した。

「!!」

ガンガンと弾が機体を叩く音がする。
だがX4Sのスペースチタニウムとカーボンナノチューブ、セラミックの複合装甲を舐めてはいけない。
4Sのハイパワーを活かして一気に間合いを詰めたヤオは、一気にそのPLDに襲い掛かった。

「DoLLSをなめるなぁ!」
「待ってください!」
「ほへ!?」

飛び掛らんとした勢いをとめられ、思わずヤオはつんのめった。
絶妙なオートバランスで設定されたバランサーのおかげで転倒だけは避けられたのだが、勢いはとまらずその光学迷彩を施したPLDに真正面から激突する。

ごぉぉん、と言う寺の割れ鐘のような音が当たりに響き渡り、夜の眠りをむさぼっていた鳥たちが暴れまわる音があたりを騒がせる。
森林の樹木に寄りかかるようにしてどうにか転倒だけは避けられた2体だが、まるで抱き合うようにして停止していた。
ハッチを開放して外に顔を出したヤオは、目の前のPLDが光学迷彩を解除し、だんだんと普通のPLDとしての外見に戻る光景を見る事となった。

「…………何、この機体……」

薄い紫色とグレーに塗装されたそのPLDは、先ほどのプローブの映像で見たとおり頭が無かった。
その首なしPLDのコクピットハッチが開くと、DoLLSのものに似たヘルメットを被った女性の姿が現れた。

「第177特務大隊DoLLS、ヤオ・フェイルン中佐でありますか?」
「え、ええ。そうだけど……」

あっけに取られたヤオは、ぎごちない敬礼をそのパイロットに返す。

「お会いできて光栄です。ヤオ中佐。私はあなたたちの時代から100年ほど経った時代の177特務大隊所属。ナガセ・マリ中尉であります!」

時代を超えた二つのドールズの出会いであった。



 To Be Continued.
最終更新:2011年01月05日 22:14