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復讐の闇」(2008/06/02 (月) 03:43:47) の最新版変更点

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*&color(red){復讐の闇}  ラミア・ラヴレス。そう名乗った女性に連れられて行った先には、鋼の巨人が倒れていた。  エジプトのスフィンクスを思わせる頭部が印象的な、30メートル程の巨体を誇る特機。  ……見た所、傷付いている様子は無い。まだ十分に戦えるはずの状態で、なぜか放置されている。 「これは……」 「ジャイアント・ロボ。お前に与えられる新しい“力”だ」 「ジャイアント……ロボ……」  巨人の名前を口中で呟き、リョウトは倒れた巨人を見上げる。 「操縦方法に多少の癖はあるが、強大な力を持つ機体である事に違いは無い。  使い方によっては、お前が使っていた機体……ウイングゼロに劣らない働きをするはずだ」  本来ならば彼女が知っているはずがない、リョウトが以前に乗っていた機体の名前。  それを的確に言い当てた所から察するに、彼女もまた自分の素性が知られている事には気付いているのだろう。  ……それをあえて指摘はせずに、リョウトはラミアに虚ろな眼差しを向けて言う。 「……操縦方法に、癖?」 「ジャイアント・ロボは専用のコントローラーに音声命令を入力する事で動く機体だ。  機体の中に乗り込む必要は無いし、そもそもパイロットを乗せる機能自体が無い。  当然、パイロットは生身で機体の外から命令を出さなければならない事になる……」  ……想像する。  このバトルロワイアルの中で対峙した、各参加者の支給機体。  ウイングゼロ、ヴァルシオン改、エピオン、ゴッドガンダム、ゼオライマー、ガイキング、etc。  どれもが強大な攻撃力と、そして高い機動性を持っていた。  その戦闘に生身の状態で巻き込まれたら――人間なんて、散りも残さず消滅する事は目に見えている。 「…………」 「怖いのか? まあ、安心しろ。ジャイアント・ロボにはバリアー機能が付いている。  多少の攻撃程度ならば、命を落とす心配は……」  ジャイアント・ロボを見上げたまま何事かを考え続けるリョウトに向けて、からかう口調でラミアは言う。  だが――途中で、気が付いた。  リョウト・ヒカワ。彼の目に、危険な輝きが宿り出している事に。 「……専用コントローラー、でしたっけ。それは、どこに?」 「あ、ああ……これだ」  リョウトの異様な雰囲気に一瞬だけ気圧されながら、ラミアはジャイアント・ロボのコントローラーを取り出す。  それは、冷たくなった少年の腕だった。  ……以前の彼であったのならば、その腕を見て取り乱しもしたのだろう。  だが、今は何も感じない。  恐怖も、憐憫も、何も心に浮かび上がらない。 「…………この、腕時計が?」  差し出された腕を受け取り、手首に嵌められた時計を外す。  時計を外し終えた腕は、そのまま地面に投げ捨てる。そう、まるでゴミをポイ捨てするかのようにあっけなく。  ……これは、本当にリョウト・ヒカワなのか?  これまでのデータとは、明らかに性格が違い過ぎる。 「……そうだ」  データとの齟齬に内心困惑を覚えながら、ラミアは感情を表に出さず頷いてみせる。  その答えを聞いて、リョウトは―― 「……それじゃあ、少し試してみます。ロボ、この女を攻撃しろ」 「なっ…………!?」  ジャイアント・ロボのコントローラーに向かって――ラミアへの攻撃を命令した! 『ガオォォォォォォォォォォンッッッッ!!!』 「……なんの、つもりだ?」 「別に……」  振り下ろされたロボの腕。それを辛うじて回避して、ラミアはリョウトを睨み付ける。  ……だが、状況は圧倒的にラミアの不利だ。  ラーゼフォンを降りている今、ロボの攻撃から身を防ぐ術は無い。  いくら彼女が人造人間であり、生身の人間以上の肉体強度を持つとはいえ――機動兵器と渡り合う事など出来はしない。 「……殺す気は、ありませんでしたよ。まあ、殺せたならそれでも良かったと思ってはいましたけど」 「…………」  警戒を解かないラミアに向かって、リョウトは相変わらずの感情が欠けた声で言う。  そう。今のリョウトにとって、ラミアの生死などどうでもよかった。  彼女が主催者の回し者であるならば、今すぐ自分を害そうとはしないはず。  目的の邪魔にならないのであれば――今は、捨て置くべきだろう。  先の一撃は、あくまで試し。ラミアを本気で殺そうとする意思は、今のリョウトは持っていなかった。 「それじゃあ……とりあえず、今はさようなら。僕には一つ、やる事が出来てしまいました。  貴方が何を考えて、僕にこの機体を与えたのかは想像付きますけど、僕には僕の戦う理由があるみたいです。  それを邪魔すると言うのなら、まずは貴方から消させてもらいます」 「戦う、理由……だと……?」 「……テツヤ」 「っ…………!」  その名を呟いた一瞬だけ――リョウトの声に、感情が戻った。  それは、憎悪。  地獄の悪鬼を思わせる、あまりにも凄絶な言葉の響き。  ……許せない。  あの男だけは、生かしておく事など出来はしない。  だから――殺す。  そう……たとえ、この命に換えたとしても……! 「……邪魔するつもりはないみたいですね。それじゃあ、僕はもう行きます」  ジャイアント・ロボの掌に乗り、リョウトはラミアを見下ろし言う。  もはや、彼に迷いはなかった。  かつての剣鉄也と同じく、復讐の闇に囚われた鬼。  ……それが、今のリョウトだった。 【リョウト・ヒカワ 搭乗機体:ジャイアント・ロボ(ジャイアント・ロボ THE ANIMATION)  パイロット状態:感情欠落。冷静?狂気?念動力の鋭敏化?  機体状況:弾薬を半分ほど消費  現在位置:B-1  第一行動方針:剣鉄也を殺す  最終行動方針:???(リオを守る)  備考:ラミアの正体・思惑に気付いている】 【ラミア・ラヴレス 搭乗機体:ラーゼフォン(ラーゼフォン)  パイロット状態:良好  機体状態:良好  現在位置:B-1  第一行動方針:参加者達の疑心暗鬼を煽り立て、殺し合いをさせる  最終行動方針:ゲームを進行させる 】 【二日目 18:25】
*&color(red){復讐の闇}  ラミア・ラヴレス。そう名乗った女性に連れられて行った先には、鋼の巨人が倒れていた。  エジプトのスフィンクスを思わせる頭部が印象的な、30メートル程の巨体を誇る特機。  ……見た所、傷付いている様子は無い。まだ十分に戦えるはずの状態で、なぜか放置されている。 「これは……」 「ジャイアント・ロボ。お前に与えられる新しい“力”だ」 「ジャイアント……ロボ……」  巨人の名前を口中で呟き、リョウトは倒れた巨人を見上げる。 「操縦方法に多少の癖はあるが、強大な力を持つ機体である事に違いは無い。  使い方によっては、お前が使っていた機体……ウイングゼロに劣らない働きをするはずだ」  本来ならば彼女が知っているはずがない、リョウトが以前に乗っていた機体の名前。  それを的確に言い当てた所から察するに、彼女もまた自分の素性が知られている事には気付いているのだろう。  ……それをあえて指摘はせずに、リョウトはラミアに虚ろな眼差しを向けて言う。 「……操縦方法に、癖?」 「ジャイアント・ロボは専用のコントローラーに音声命令を入力する事で動く機体だ。  機体の中に乗り込む必要は無いし、そもそもパイロットを乗せる機能自体が無い。  当然、パイロットは生身で機体の外から命令を出さなければならない事になる……」  ……想像する。  このバトルロワイアルの中で対峙した、各参加者の支給機体。  ウイングゼロ、ヴァルシオン改、エピオン、ゴッドガンダム、ゼオライマー、ガイキング、etc。  どれもが強大な攻撃力と、そして高い機動性を持っていた。  その戦闘に生身の状態で巻き込まれたら――人間なんて、散りも残さず消滅する事は目に見えている。 「…………」 「怖いのか? まあ、安心しろ。ジャイアント・ロボにはバリアー機能が付いている。  多少の攻撃程度ならば、命を落とす心配は……」  ジャイアント・ロボを見上げたまま何事かを考え続けるリョウトに向けて、からかう口調でラミアは言う。  だが――途中で、気が付いた。  リョウト・ヒカワ。彼の目に、危険な輝きが宿り出している事に。 「……専用コントローラー、でしたっけ。それは、どこに?」 「あ、ああ……これだ」  リョウトの異様な雰囲気に一瞬だけ気圧されながら、ラミアはジャイアント・ロボのコントローラーを取り出す。  それは、冷たくなった少年の腕だった。  ……以前の彼であったのならば、その腕を見て取り乱しもしたのだろう。  だが、今は何も感じない。  恐怖も、憐憫も、何も心に浮かび上がらない。 「…………この、腕時計が?」  差し出された腕を受け取り、手首に嵌められた時計を外す。  時計を外し終えた腕は、そのまま地面に投げ捨てる。そう、まるでゴミをポイ捨てするかのようにあっけなく。  ……これは、本当にリョウト・ヒカワなのか?  これまでのデータとは、明らかに性格が違い過ぎる。 「……そうだ」  データとの齟齬に内心困惑を覚えながら、ラミアは感情を表に出さず頷いてみせる。  その答えを聞いて、リョウトは―― 「……それじゃあ、少し試してみます。ロボ、この女を攻撃しろ」 「なっ…………!?」  ジャイアント・ロボのコントローラーに向かって――ラミアへの攻撃を命令した! 『ガオォォォォォォォォォォンッッッッ!!!』 「……なんの、つもりだ?」 「別に……」  振り下ろされたロボの腕。それを辛うじて回避して、ラミアはリョウトを睨み付ける。  ……だが、状況は圧倒的にラミアの不利だ。  ラーゼフォンを降りている今、ロボの攻撃から身を防ぐ術は無い。  いくら彼女が人造人間であり、生身の人間以上の肉体強度を持つとはいえ――機動兵器と渡り合う事など出来はしない。 「……殺す気は、ありませんでしたよ。まあ、殺せたならそれでも良かったと思ってはいましたけど」 「…………」  警戒を解かないラミアに向かって、リョウトは相変わらずの感情が欠けた声で言う。  そう。今のリョウトにとって、ラミアの生死などどうでもよかった。  彼女が主催者の回し者であるならば、今すぐ自分を害そうとはしないはず。  目的の邪魔にならないのであれば――今は、捨て置くべきだろう。  先の一撃は、あくまで試し。ラミアを本気で殺そうとする意思は、今のリョウトは持っていなかった。 「それじゃあ……とりあえず、今はさようなら。僕には一つ、やる事が出来てしまいました。  貴方が何を考えて、僕にこの機体を与えたのかは想像付きますけど、僕には僕の戦う理由があるみたいです。  それを邪魔すると言うのなら、まずは貴方から消させてもらいます」 「戦う、理由……だと……?」 「……テツヤ」 「っ…………!」  その名を呟いた一瞬だけ――リョウトの声に、感情が戻った。  それは、憎悪。  地獄の悪鬼を思わせる、あまりにも凄絶な言葉の響き。  ……許せない。  あの男だけは、生かしておく事など出来はしない。  だから――殺す。  そう……たとえ、この命に換えたとしても……! 「……邪魔するつもりはないみたいですね。それじゃあ、僕はもう行きます」  ジャイアント・ロボの掌に乗り、リョウトはラミアを見下ろし言う。  もはや、彼に迷いはなかった。  かつての剣鉄也と同じく、復讐の闇に囚われた鬼。  ……それが、今のリョウトだった。 【リョウト・ヒカワ 搭乗機体:ジャイアント・ロボ(ジャイアント・ロボ THE ANIMATION)  パイロット状態:感情欠落。冷静?狂気?念動力の鋭敏化?  機体状況:弾薬を半分ほど消費  現在位置:B-1  第一行動方針:剣鉄也を殺す  最終行動方針:???(リオを守る)  備考:ラミアの正体・思惑に気付いている】 【ラミア・ラヴレス 搭乗機体:ラーゼフォン(ラーゼフォン)  パイロット状態:良好  機体状態:良好  現在位置:B-1  第一行動方針:参加者達の疑心暗鬼を煽り立て、殺し合いをさせる  最終行動方針:ゲームを進行させる 】 【二日目 18:25】 ---- | 前回| 第197話「復讐の闇」| 次回| | 第196話「[[水面下の情景Ⅳ]]」| 投下順| 「[[第198話>第198話(前編)]]」| | 第203話「[[コーヒーブレイク]]」| 時系列順| 第196話「[[水面下の情景Ⅳ]]」| | 前回| 登場人物追跡| 次回| | 第191話「[[リョウト]]」| リョウト・ヒカワ| 第208話「[[西風が運ぶは希望の旋風か、復讐の刃か]]」| | 第191話「[[リョウト]]」| ラミア・ラヴレス| 第213話「[[high on hope]]」| ----

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