ジョーカージョーカー ◆JxdRxpQZ3o



自分が何をしたいのか。
動かす巨人は何処へ向かうのか。
今の彼女に、はっきりとした目的など無い。
只々、後悔と自責の念そしてこれからの不安に胸中は駆り立てられている。
ヴィレッタは闇雲にガルムレイドの歩みを進めていた。

タスク・シングウジは死んだ。

死者の名を告げる放送の中、タスクの名もその中にあった。
自分の預かり知らぬ場所で死んでしまった。それならばまだ納得は出来ただろう。
だがヴィレッタとタスクは直前まで共に戦っていたのだ。
もしかすれば救えたかもしれないその若い命は散ってしまった。


『あんたがさっさと口を割っていれば……こんなことにはならなかった!!』


シンの言葉が棘となって、未だヴィレッタの心に刺さっている。


『あいつが、あのタスクって奴が死ぬこともなかっただろうに!!』


彼が死んだのはやはり自分の迷いが原因か。
自身がジョーカーであることをタスクにはっきりと告げていれば。
シン・アスカにレイ・ザ・バレルを知っていることを気取られなければ。
自分もあの場に残り、タスクと共に戦っていれば。
こんな結果には至らなかったのだろうか。
ああしていれば、こうしていればなどと過ぎ去った事実を受け入れられずにいる。
そんな甘い考えばかりが延々とループする。

シン・アスカの発言もあの放送もこちらの不安を駆り立てる為の出鱈目であり
タスクの死を告げる全てが自分を陥れるための演出ではないのか。
現に彼の乗機のビッグデュオは、自身とタスクが最後に会話を交わした場所で存在していなかったのだから。
甘い考えから脱却しようと別のことを考えれば、それ以下の醜い思考にまで至る。
正常な状態なら唾棄すべき思考だ。自分がここまで弱い人間などとはヴィレッタ自身、思いもしていなかった。

こんな今の自分を元の世界の仲間が見ればどう思うだろう。
意外に思うだろうか、失望するだろうか、軽蔑するだろうか。
それともこんな状態の自分でさえ、彼らは受け入れるのか。
かつて敵であった人物でも心通わせられる相手であれば彼らは仲間として迎え入れてきた。
あの部隊で行動していれば、そんな例は幾つでも見てくることが出来た。

そして自身もまた彼らに救われてきた。
スパイとして活動してきたヴィレッタを受け入れてくれた人物でいることはヴィレッタも忘れてはいない。
この場にいる知り合いの中で、少なくともギリアムは自身を受け入れてくれるはずだ。
一見、冷徹に見える外見であるが、仲間や他人を思い遣る心を持ち合わせている。
それがあるのは彼自身、過去になにかしらの苦い経験をしたからだろう。


(ギリアム……)


だがだからこそ、そんな彼の優しさに今は甘えるわけにはいかない。
不安定な精神状態。自分の今取るべき行動も判然としない。
こんな状態で彼に受け入れられても足手纏いになってしまう。
最悪の場合、彼もまたタスクのように死んでしまうかもしれないのだ。
だから、今はまだ彼に会うことも心の中で頼りにすることすらも出来る筈が無い。


(今は――)


それはもしかすれば永遠にではないのかという不安が過ぎる。
今は何を考えても不安に、自己嫌悪になるばかりだ。
頼もしく感じれるはずの仲間でさえ、不安の種になりえてしまう。
マイナス思考の泥沼に陥った彼女を助けてくれる者は周りには誰も居ない。
左手で前髪を力強く掴む。痛みは感じるがその程度で不安を紛らわすことなど出来ない。
思考を振り切るためにも操縦卓に手を伸ばす。
ガルムレイドは目の前の木々を薙ぎ倒し黙々と目の前を進む。



◇ ◆ ◇



およそ数分前に移動を開始した春日井甲洋静止した。
放送の中に誰か知っている人間の名が呼ばれたような気がする。
呼ばれた死者の中に誰か大切な人がいたという不安感が

『皆城総士?』


確かに知っている。この名前は覚えている。
ファフナーに乗る自分たちを、後方で支援していた少年だ。
とにかく"呼ばれたような気がする"なんて不確かな関係ではない。
ではどこかで名前を聞いたことのある程度の相手だろうか。
それも違う。その程度の関係の相手であればこんなに言いようの無い不安がこみ上げることもないはずだ。
もしかして『  』なのだろうか。名前を読み上げられたはずなのに思い出せない。

先ほども確認した参加者名簿へとまた手を伸ばす。
最初に見たときとは違い、一つ一つの名前を最初から最後まで念入りに目を通す。
また目に留まったのは『羽佐間翔子』という名前。以前見たときもこの名前を見たときに甲洋は涙を流した。
確かに先ほどの放送でもこの名前は挙げられていた。羽佐間翔子が『  』なのか。
一騎、遠見、衛、咲良、剣司、総士、『羽佐間』。
一騎、遠見、衛、咲良、剣司、総士、『翔子』。
写真の人物の中に当てはめてみても、それが正しいのかどうかすらわからない。


――顔も、どんな思い出があったのかも、どんなふうに思っていたのかも思い出せない。


『  』の記憶が全て抜け落ちている。
名前ですら状況証拠から推測できただけで思い出せたと言うわけではないのだ。
わかっているのは護らなければならない人だったというだけ。
もしも羽佐間翔子がその人だったのならば自分はまた護れなかったのだろうか。



「うあああぁぁあああああぁあああああアアア!!!」


羽佐間翔子を知る人物を探さなければならない。
今生きているはずの一騎、遠見なら知っている可能性も高い。
涙を流し、叫びを上げ、『  』を思い出せないまま、甲洋はバルゴラ・グローリーを動かした。



◇ ◆ ◇



森の中ほどにある木々が薙ぎ倒され結果できた開けた大地にヴィレッタは足を踏み入れた。
森林地帯にこんな形状の場所があっただろうかと疑問に思い位置を確認する。
D-3。ラカンがグレートマジンガーの試運転を行っていた場所だがそれをヴィレッタが知るはずも無い。
未だ森の中にいることを確認し、何がしかの結果このような状態になったと納得する。
そんな場所で一際目に付いたのは、切り株と切り株の間に設置された中型のコンテナだ。


「これは……?」


人工物など一切無かった森の中に存在するコンテナ。先ほど確認した地図上にもこんなものはなかった。
放送で言われていた支給機体だろうか。だが、あれはC-5の橋に置いてあると放送では言われていたはずだ。
それでは何者かが設置した罠か。その正体はわからないが、そのまま放置するのも危険だ。
強力な機体であった場合、殺し合いに乗るものに渡ればなどと考えれば当然である。
ヒオウを分離させ、中身が傷つかない程度に機関砲でコンテナ外部を攻撃する。
巻き上げられた粉塵から出てきたのは兵器とも生物とも取れる外見の小型の機体だ。
少なくともヴィレッタの知る技術で作られたものではないことはわかる。
ガルムレイドを身構えさせるが、正体不明の機体からは攻撃も通信も返ってはこない。

警戒しながら近づいていっても同じ。相手は何も反応しない。ではこれもまた支給機体なのだろうか。
放送では告げられない強力な機体か、それとも単純な伝達ミスによるものか。
機体は支障の無い程度の傷が付いた状態であり、乗り換える必要は無いものの興味からそのコクピットへと移る。
操縦方法はともかくとして、コクピットの内装は一目で今まで見たことの無いような技術による代物だとわかる。
ヴィレッタがシートに座ると同時、自動的に電源が付いた。罠か。反射的に体が反応する。
だがなんということはない。目の前のモニターにヴィレッタも知る男の顔が映った。


「アクセル!?」


この殺し合いを起こした組織の一員、そしてかつての敵であるアクセル・アルマーだ。
しかし、彼はヴィレッタを見て何か反応するわけでもない。あらかじめ録画しておいたものが自動的に流れたものらしい。
一体何の為に。その疑問をアクセルは語りだした。


『お前たちの仲良しごっこを見ているのはいい加減飽き飽きしてきた。
 傍で行動を一緒にしている連中を見てみろ。表じゃ良い顔をしているかもしれん。
 だがその心の中では何を考えているかはわからんぞ。それをお前が知るためにこのプラネッタを特別に支給してやる。
 こいつのオーバースキルを使えば他人の心の声を聞くなんてのは朝飯前だ、これがな。
 詳しくはマニュアルを見るといい。せいぜい有効に使うことだ。以上で通信を終わる』


淡々と説明をするアクセルの口ぶりには、これを見るものに対する憎悪や見下した感情が見て取れる。
おそらくこの機体は放送直前にこの周囲にいた対主催を考える集団に対して置かれたものなのだろう。
内容を聞くにその集団の中で相手を信用しているものに疑心暗鬼を起こすという目的で、だ。
そしてそれ以外の参加者の手には渡らぬよう放送では伏せたというところか。
だがそれが仇になりその集団には発見されず、もしくは無視された形で結局は他者の手に渡った。
しかも"仲良しごっこ"などとは縁遠い状況の今のヴィレッタにだ。なんとも皮肉な結果である。


「滑稽ね……。あなたも私も」


ヴィレッタは呟く。想定していた相手にこの機体を送り込むのならば、もう少しうまい手もあったろうに。
例えばその相手自身に直接通信を送るとか。しかし彼はそれをやらなかった。
憶測に過ぎないがアクセルのあの態度から見てこの機体を送りたかった集団にそれなりの嫌悪感があったことに間違いはあるまい。
それを崩す為に彼は感情的にこの機体を独断で送った。しかし、それを周りの人間に知られるわけにはいかなかったのだろう。
何らかの理由。例えば機体の支給にはある程度の予定や目論見があったのにも関わらず、それを無視してまでだ。
直接通信を行わなかったのも、その通信の履歴によって一連の行動が露呈するのを恐れたから。
だがそもそも機体を送り込んだのも彼らの転移技術によるものならば、そちらのほうが余程証拠として残りやすそうなものである。
情報は少なすぎ、結論付けるには穴が大きい。だがまず間違いなくシャドウミラー側に付け入る隙があることはわかる。

ヴィレッタは主催者側の考察を辞め、プラネッタについて考え始めた。
アクセルの喋った内容が確かならば、この機体は相手の心を読み取ることの出来るものらしい。なんとも趣味の悪い能力である。
相手の考えが読み取れるなら疑心暗鬼の種だけでなく、戦闘でも有利にことを進めることが出来る。
しかし今の彼女にとっては、この能力の恐ろしさはそれだけでは終わらない。
これが他者の手に渡り、自身がジョーカーであることやタスクが死んだことが発端で駆け巡る不安が露呈してしまうのが恐ろしいのだ。
なんとも保身的な発想である。が今のヴィレッタには、そこまで気が回らない。
自身で使用することも考えるが、この趣味の悪い能力に惹きつけられるものも感じない。
この機体の能力の真偽がどうあれ、この場で片付けておけば後々不利益になるようなことはないだろう。

一通りの考察を終え、ヴィレッタは一息吐く。
時間が経った所為か先ほどまでの不安も断ち切ったとまでは言えないが先ほどよりはマシになった。
だが、休息を取れる時間などは用意されてはいなかった。プラネッタのレーダーに移る機影。
向かってくる機体はかなりの速度を出している。プラネッタから降り、ガルムレイドに乗り換えている暇はなさそうだ。
しかし破壊する予定だった機体である。マニュアルなど読んではいないため、勘で動かすほかない。
だがプラネッタの外見から伺える異質さとは違い、操縦自体はそこまで苦戦するほどのものではなさそうだ。
やがて向かってくる機体は姿がわかる距離まで近づいてきた。
プラネッタとは違い、外見だけならその機体はヴィレッタの知る技術の中でもありえそうなものである。


「そこの機体!真壁一騎、遠見真矢、羽佐間翔子の誰かを知っているか!?」


相手からの通信が入る。この顔は覚えている。ジョーカーに選ばれた中の一人、春日井甲洋だ。
そして甲洋の話す内容に、またこの手合いかとヴィレッタは呆れた。
探し人のためにそれ以外の人間には攻撃的で簡単に牙を向く。
シン・アスカはそうだった。目の前の甲洋もそんな子供だ。
誰かのためと言いながら結局それは自己満足にしか過ぎない。
自身が求める探し人がそんな状態の自分を見てどう思うのか考えたことはあるのか。
とそんな悪態を内心で吐きながら、表面上は努めて冷静に受け答える。


「いいえ。知らないわね。」


ヴィレッタが質問に答えるとともに甲洋はブイ・ストレイターレットを発射させる。
だが不意打ちにも関わらずその攻撃はプラネッタには当たらない。
プラネッタは地面スレスレを飛行し、バルゴラの真下へ移動。そのままバルゴラ目掛け電磁鞭を振るった。


「があああっ!」


左脚部に巻きついた鞭からは電流が迸り、全身へと伝う。
しかし、その電気の衝撃を受けても決してガナリー・カーバーを手放そうとはしない。
バルゴラは左脚を蹴り上げようとする。
が、直前にプラネッタは鞭を自分から解き、今度はバルゴラの背後から鞭を何度も叩きつける。


『なんなんだよ……。俺の攻撃が読まれてるみたいじゃないか』
「それは少し違うな。お前の考えていることは全て聞こえている」
「えっ!?」『今、俺は何も喋ってなんかいなかったはずだ……』
「わからないのか?喋らなくても、お前考えはこちらに届いている」


甲洋が素っ頓狂な声をあげる。
やっと甲洋のほうでも気づいたようだ。ヴィレッタには自分の考えが読まれてしまっていることを。
最初の質問がどんな結果であろうとも相手を攻撃することも。
巻きついた鞭ごとプラネッタを持ち上げ、自身の攻撃範囲に入れようとしていたことも。
全てがヴィレッタには筒抜けだ。


「もう死んでしまった人間を探してどうするの?
 誰だったかも、どんな顔だったかも、護りたい人だったのかも、わからないくせに」


今の彼が一番気にしており、触れてはいけない繊細な部分に容赦なくヴィレッタは攻撃する。
誰が同情などしてやるものか。
甲洋の心のどこかがブチッと音を立てて切れた。それもヴィレッタには手に取るようにわかる。
ガナリー・カーバーを近接戦使用に変形させ、甲洋はそれをプラネッタ目掛け振り回す。


「フェストゥムみたいな真似をして!お前に何がわかる!?」
「わかりたくもないわね。そんなもの」


怒りに駆られた攻撃はほぼ無心だ。しかしだからこそ攻撃の仕方は単純になりがちで読みやすい。
プラネッタのオーバースキルもこうなれば、さほど必要は無くなる。
右から左から繰り出される攻撃も、単純なプラネッタの機動性により避ける。
それでいて、バルゴラには全身に隙が生じている。その隙を突き、三度電磁鞭を見舞う。
今度は内部機器の機能に障害が出たのか空が飛べず、墜落する。


「存外にあっけないものね」


ヴィレッタの視線の先には落ちたバルゴラ。
もう甲洋の声は聞こえてこない。死んだか、意識を失ったのか。
確実に止めを刺す。プラネッタの背に紫がかった光円が姿を現す。


――どうにもなら無い憤りを子供にぶつける今の姿を見たらかつての仲間――ギリアム――はどう思うか。


不意にそんな台詞が自身の脳裏に過ぎる。プラネッタの能力ではない。周囲には機影など見当たらないのだから。
ヴィレッタが先ほど自問自答していた不安の内容がまた浮かび上がったに過ぎない。
相手に止めをさそうとするこの瞬間にだ。当然動きに躊躇いが生まれる。


『……今だ』
「つっ!?しまった……」


別のことに気を取られ過ぎていたせいか、甲洋の動きも心も聞こえずに居た。
ガナリー・カーバーが変形しハイ・ストレイターレットとなり火を噴く。
広域破壊兵器並みの威力を持つそれはプラネッタをその背後の森林ごと吹き飛ばした。



◇ ◆ ◇



「倒せたのか……」


ハイ・ストレイターレットを放ったのは朦朧とする意識の中で咄嗟にとった行動だった。未だに倒せたという感慨が沸かない。
相手もこちらの心を読んでいたが、倒す寸前に油断したのだろうか。
殺したという確証は無い。があれ程やられておきながら奇跡的に追いやることは出来た。


『もう死んでしまった人間を探してどうするの?
 誰だったかも、どんな顔だったかも、護りたい人だったのかも、わからないくせに』


あの女の言っていたことを反芻するように思い出す。
確かになにか解ったとしても自分にはどうすることも出来ないのかもしれない。
だが、あやふやな現在の自我をその手に取り戻す為にも必要なことだと信じて今は動くほか無い。
どこの馬の骨とも知れない他人の戯言など振り切って、前に進むしかないと自分に言い聞かせる。


「そうするしかないのならやってやる……んっ?」


バルゴラを動かそうとするもうんともすんとも言わない。
電磁鞭の電流によって、飛行もままならない状態になったかと思えば、遂に全身が機能を停止してしまったようだ。
目の前のコンソールを
仕方なくコクピットハッチを手動で明け、地上へと降り辺りを見回す。
戦闘中は気づかなかったが別の機体が鎮座している。出来すぎているようにも感じたが背に腹は変えられない。
使えればいいがとその橙色の機体へと向かおうとするが、甲洋は違和感に気づき足を止める。
ガナリー・カーバーに埋め込まれた宝玉のようなものが光を放ち点滅を繰り返しているのだ。
まるで自分はまだ生きている。自分だけは連れて行けと甲洋に伝えるかのように。


「心配するなよ。使えるものは最後まで使うさ」


【一日目 15:00】


【春日井甲洋 搭乗機体:ガルムレイド・ブレイズ(バンプレストオリジナル)
パイロット状況:同化により記憶及び思考能力低下&スフィアと同調することで思考能力の回復
機体状況:機体状況:EN30% 右腕損失。胸部、左腕損傷。ガナリー・カーバー装備
現在位置:D-3
第一行動方針:翔子が守りたかった相手かを確かめる
第二行動方針:一騎と真矢から翔子のことを聞き出す
最終行動目標:守るんだ………………誰を?
※フェストゥムに同化された直後から参戦です。
※具体的にどのくらい思考能力や記憶を取り戻しているか、どの程度安定しているかはその場に合わせて一任します。
 好きなように書いてもらって構いません。



◇ ◆ ◇



気付けば、どちらが上で、どちらが下かもわからない状態になっていた。
プラネッタを起き上がらせ、飛行や動作に問題が無いか確認する。
あの巨大なビームの砲撃もどうにか展開していたフォトンマットを防御に使うことで致命傷は避けられた。
流石に全身はボロボロになっているが、動かす分には問題が無い。


「無様なものね……」


間違ってはいなかったはずだ。
春日井甲洋はジョーカーであり、精神的にも不安定な状況であることは確かだ。
この状況下でそれを考慮し、優しくすることなどは出来ない。
こちらに対して攻撃の意思があるのなら容赦する必要など無いはずだ。
そこまで考えて、ふとそんな状態に陥っている人間をもう一人知っていることを思い出す。

紛れも無い自分自身だ。

思わず嗚咽を漏らしてしまう。こんな姿はリュウセイ達には見せられない。
ギリアムやユウキから見れば、自分も躊躇する必要が無い相手なのだろうか。
そうではないとただただ信じたかった。


泥沼は、もがけばもがくほど抜け出せない。


【一日目 15:00】


【ヴィレッタ・バディム 搭乗機体:プラネッタ(OVERMAN キングゲイナー)
 パイロット状況:強い後悔と自己不信。DFCスーツ着用、ちょっと恥ずかしい
 機体状況:EN60% 全身に損傷
 現在位置:D-3
 第一行動方針:自己不信や不安、後悔を整理したい。
 第二行動方針:この精神状態でギリアムやユウキに会うのを自制する。
 第三行動方針:出来る限り戦闘は避け、情報を集める。戦いが不可避であれば容赦はしない。
 第四行動方針:ノルマのために誰かを殺害することも考えておく。
 第五行動方針:そう、誰かを……?
 最終行動目標:生き残って元の世界へ帰還する】

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最終更新:2010年05月22日 03:44