さまよう刃◆POvMLKAPKM




暗い夜のような深海の底。
死者の名を呼ぶ放送で、シン・アスカの知る名は四つ呼ばれた。

皆城総士。この場に来て初めて出会い、少しばかり共に行動し、すぐに死に別れた少年。
羽佐間翔子。皆城総士の知己であり、彼を手にかけた少女。
ジャミル・ニート。迷いのままに戦ったシンを救おうとし、最期はシンを護って果てた男。
タスク・シングウジ。戦場で敵として戦い、目の前でこちらも皆城総士の知己である春日井甲洋に殺された青年。


厳密に言うならシンが関わった者はこれだけではない。
アギーハ、剣鉄也、ラカン・ダカラン。シンと交戦し死亡、あるいは痛み分けに終わった者たちがいる。
こちらについてはシンは名前を知らなかったので気づくはずもないが。
ひとまず探し人であるレイ・ザ・バレルは存命。それは喜ぶべきことだ。
シーブック・アノー、そしてドモン・カッシュの名も呼ばれなかった。自分が密かに安堵したことに、シン自身は気づいてはいない。
だが、鈍く胸に疼く傷もある。ジャミルとタスク、この二人の名だ。

フリーダムを倒し、なお納まらぬ怒りに突き動かされ戦ったジャミル。
シンは紛れもなく殺すつもりでジャミルと戦ったのに、ジャミルはシンを救おうとしてくれた。
その結果、乱入してきた男からシンを生かすべく散った。

タスクを殺すつもりなどなかった。少なくとも、最初は。
ただレイの情報を握っているかもしれないヴィレッタへ到達するために邪魔だったから戦っただけ。
結果的には乱入した甲洋に殺されたわけだが、間接的にタスクの死にはシンも関わっていると言っても間違いではない。


どちらの場合も、シンがもっと冷静であれば……少しでも相手の話を聞く気があれば、回避できたかもしれない。
短絡的に突き進んできた結果がこの放送の内容であり、先の補給ポイントで知った己の窮状だ。
誰かが補給ポイントを利用すれば、自動的にシンを危険人物として認識することになる。
孤立無援、四面楚歌。いかに頭に血が上りやすいシンでも、現状のまずさは痛いほどに理解できた。

「どうする……どうするシン・アスカ……」

当面の目標はレイとの合流だ。
だが直前にヴィレッタから聞かされた話を信じるならば、レイもまた誰かを殺さざるを得ない立場にいる。

二度目の放送までに参加者を二人殺害しなければ、首輪が爆発する。

それが殺し合いを促進させる役目であることは理解できる。だがよりによってレイが……と、思わずにはいられない。
レイが殺し合いに乗ったか、あるいは逆にジャミルたちのように主催者に反逆しているか。
どちらの場合にしろレイは誰かの命を生贄に捧げなければいけない。

すでに一度目の放送は終わった。残りの猶予は八時間。
先の死者の中にレイが殺したものが二人いるなら心配はない。
だがもしそうでない場合。
一人殺した、あるいは誰も殺していない、そんな状態のレイははたして普段通りのレイなのだろうか。
ある意味ではシンなどよりよほど死に近い状況だ。

シンはレイのことを疑ってはいない。寡黙だが沈着冷静、戦場では頼りになる戦友だと思っている。
今のこのどうにもならない状況も、レイなら何か打開策を考えてくれるかもしれない――そんな期待もある。
だが、思い返すのは皆城総士の存在だ。
どことなくレイに似た雰囲気を持っていた少年は躊躇うことなく仲間に攻撃を仕掛けた。
自分とレイ、総士と翔子。類似するケース。

「もしかしたらレイも俺を……? いや、そんなはず……」

ない、と言い切れないのがもどかしい。
レイを信じてはいる。だが同時にこの殺戮の島で信頼などどれほど役に立つと言うのか。
レイはいつだって正しい判断をする。感情に流されない合理的な判断を。
シンの悪評について、決して鵜呑みにすることはないだろう。
だがもしシーブックやドモンといった実際にシンの行いを知る者と出会ってしまえば、シンを敵と判断すれば――撃ってくる、かもしれない。
そんなはずはないと思いつつも、シンは友を信じ抜くことができなかった。

「……考えてても仕方ない。まずはレイと会わなきゃ」

時間の経過と共にいくらかの疲労は解消され、マシンセルによる再生も順調に進んだ。
腹部の損傷も完全とはいえないが戦闘行動が可能な程度には修復が完了し、戦うことはできる。
海底をゆっくりと歩んでいたスレードゲルミルが動きを止めた。そこはちょうどマップの北端、光の壁の直近だった。

「なんだこれ……光学スクリーンか?」

熱反応のない壁におそるおそる触れてみると、スレードゲルミルの腕はすっと向こう側へと突き抜けた。
危険はないと判断し機体ごと壁を越える。
特に変化のない黒の海。だが浮上してみれば北に更なる陸地が広がっていた。
反対に後ろ、つまり南には先ほどの光の壁。
慌てて現在地を確認すれば、確かにD-1にいたはずが今はD-7と表示されている。

「地図の端と端は繋がっている、ってことか」

特に考え込むこともなくシンはその事実を受け入れる。
技術的なことはわからないし、そんな余裕もない。
ただこの光の壁を越えれば反対側のエリアに出る、それをわかっていれば十分だ。

だがやはり未知の技術に対する驚きは大きかったらしい。
シンは場所の移動に気を取られるあまり無軌道に飛んでいたらしく、周囲の警戒を怠っていた。

「そこの機体! 応答してくれ!」

呼びかけられている、と気づいた瞬間反射的にスレードゲルミルを戦闘態勢に移行させるシン。
青い、スレードゲルミル以上の大きさの機体がシンの目前に浮遊していた。

「待ってくれ、俺に戦う気はない! 俺の話を聞いてくれ!」

と、戦意がないことをアピールする青い機体。
騙されるものかと攻撃を仕掛けようとしたシンだが、脳裏に瞬間的にジャミルとタスクの姿がフラッシュバックした。
短慮は争いを招き、誰かの死を生み出す。
敵なら倒すことに躊躇いはないものの、隙を見せたシンに先制攻撃を仕掛けなかった事実からして戦意がないというのは嘘ではないだろう。
結果的に戦うにしろ、情報を得られるのならここは相手の話に乗ってみるべきか。

(この先、俺のことを知っている相手にまともな交渉は望めない……このチャンス、不意にするべきじゃない)

意を決し、シンもひとまず動く気配は見せないまま青い機体にコンタクトを取った。

「俺の名はシン、シン・アスカだ……あっ!?」

言ってから気づく。もしこの青い機体が補給ポイントでシンの情報を得ていたとしたら……戦闘は避けられない。
自分の迂闊さに腹が立つ。いつでも斬艦刀を放てるよう、密かに間合いを計るシン。

「シン・アスカ……そんな、また子供だって!? シャドウミラーめ、どこまで卑劣な真似を!」

だがシンの悲壮な決意に反して、呼びかけてきた青い機体のパイロット――声色からして青年はシンの思惑からかなりずれたところに憤った。
俺を知らないのか、と一瞬の安堵。
慌てて首を振り、油断するなと自分に言い聞かせる。

「おい、あんたの名前は?」
「あ、済まない。名乗ってなかったね。俺はミスト・レックス! ミストって呼んでくれ!」

オレンジ色の髪の快活そうな男は、まるで子供をあやすように笑顔を見せた。
どうやらシンの悪評を知らないらしい。ふと肩の力が抜け、シンはシートにもたれかかった。

「君、大丈夫か!? 見たところかなり激しい戦いがあったようだけど」
「ああ、うん……ちょっと、色々あって。俺も戦う気はない……です」
「そうか、よかった! よし、じゃあついてきてくれ。安全なところで話をしよう。ついでに機体の補給も済ませたいしね」

機体の補給。その言葉を聞いて脱力していた体が総毛立つ。
まずい。今知らなかったとしても、補給を許せばミストもシンの悪評を知ることになる。
そうなればどうなるか。殺人鬼と目される者がそばにいて話し合いましょうと言えるやつは相当の気狂いだろう。
ミストを補給ポイントに近づけてはならない。少なくともシンと十分な距離が取れるまでは。

(殺すか!? いや、それじゃまた同じことの繰り返しだ! ここは……!)

頭をフル回転させ、必死にこの場を動かない、動けない理由を考えるシン。

「ま、待ってくれ! 補給ポイントってD-6の市街地か?」
「ああ、そうだけど。俺もちょっと急いでたから補給がまだなんだ。いいタイミングだったよ」
「あ、安全って言うならそこは危ないだろ! 市街地なんて目立つところ、いつ誰に狙われるかわかりゃしない!」
「え? でも」
「情報交換をするだけならここで……この海の中でいいだろ!? 海中ならじっとしてれば易々と発見されたりしない!」
「……ああ、わかった。君も大変な目にあったんだな。大丈夫、誰かが襲ってきても俺が護るからさ!
でもまあ、見つからないに越したこともない。よし、とりあえずここで話をしよう」

シンの形相を誰かに襲われる恐怖の表情とでも勘違いしたらしい。
途中ずっとシンを励ます言葉を紡ぎながら、ミストは何度もうなずいて先立って機体を海に沈めていく。
ミストのあまりの呆気なさに逆に怪しいと感じながらもシンも後を追う。
とにかくこれは穏便に情報を得る最後の機会かもしれない。
今度は失敗しないと固く誓い、スレードゲルミルはミストの機体は共に海中に没していった。





「……って訳さ。コウさんもジロンさんも、こんなところで死んでいい人たちじゃなかった。シャドウミラーめ……!」

ミストの事情を一通り聞き終えたシンは混乱のさなかにあった。
ミストが春日井甲洋と交戦していたことや、オーバースキルなる不可思議な能力を持つ機体のこと、はては生身で機動兵器を圧倒する化け物のこと。
どれも貴重な情報ではあったが、重要なのはそんなことじゃない。

(ラウ・ル・クルーゼが生きている……だって!?)

ミストの言う仲間の一人、ラウ・ル・クルーゼ。
シンの生きるコズミック・イラ74年において、その人物はすでに故人である。
シンが名簿を確認したときは動転していたのと合わせ、死者がいるはずがない、同姓同名だろうという考えだった。
だが、ミストから聞くクルーゼの人物像はシンが知るクルーゼそのものと言っていい。
金髪、顔を仮面で隠し、冷静で先を見据える目に長け、なによりザフト軍クルーゼ隊隊長と名乗ったらしい。

(シャドウミラーは死んだやつまで生き返らせることができるって言うのか……?)

その上、クルーゼはレイの身内だと言う。
部隊の仲間や上官部下と言った関係ではない、とミストは聞いたらしい。
レイの口からそんなことは聞いた覚えはない。だが考えてみればレイも金髪、名前の響きもどことなく似ている。
戦犯として裁かれたクルーゼとの関係を疑われるのを避けるため公にはしなかった、と考えれば筋は通る。

「じゃあ今度はシン君の話を聞かせてくれないか?」

混乱の極地にあるシンにミストが問う。
我に返りシンは迷う。はたして本当のことを言っていいものかどうか。
話してみた感じミストは悪人ではない。多少考えの足りないところはあるものの、基本的には善人と言えるだろう。
だが悪を憎む気持ちは人一倍だ。豹変し襲い掛かってくることも考えられる。

(でも……可能性があるとしたら、この人だけだ。俺の悪評を解くには大勢の仲間と一緒に行動して弁護してもらう、それくらいしか思いつかない)

ヴィレッタや甲洋といった人物とはもはや話せる気はしない。シーブックやドモンとも。
それ以外の人物もシンを警戒するだろう。ならばミストは最後のチャンス。
善人と思われるミストと共にいれば、いずれ来る戦いを避けられるかもしれない。
そして万が一、クルーゼが本物のラウ・ル・クルーゼであるなら。

(俺とレイの間を取り持ってくれる……か?)

ジョーカーと言う立場にある友人をなんとか説得できるかもしれない。
そうでなくても、名将と名高いクルーゼと共にいれば生き残るチャンスは格段に高くなる。
前大戦時戦火を拡大させた戦争犯罪人ではあるが、それも被疑者死亡のまま下された戦後処理の一つだ。
ザフト軍の中には、死人に口なしとばかりにクルーゼに責任を押し付けた、と考える人間も少なくはない。
もしかしたら殺し合わずともミネルバに帰れる手段を考え出してくれるかもしれない。
そう思えば新たに目標も見えてくる。

(ひとまずクルーゼ隊長と接触して、その後レイを探す。そうして大きな集団になればおいそれと襲われることはない。
俺がジャミルさんを殺したって言う映像も俺一人なら何を言っても駄目だけど、否定してくれる人が大勢いれば……)

楽観論だと自分でも思う。だがそうでも考えなければシンは現実に押し潰されまたも暴走していただろう。
目前のミストにすべてを話す決意をする。
ミストを取っ掛かりにクルーゼと、次いでレイと接触する。ここで嘘をついて後に失望されるわけにはいかない。
どのみち補給ポイントでばれるのだ。ならば本人の口から切り出したほうがまだ酌量の余地はある。

「……俺は、最初は殺し合いに乗ってたんだ」

身を切るような思いで言葉を搾り出すと、さすがにミストは警戒したか表情を固くした。

「ま、待ってくれ! 今は違うんだ!」
「……詳しく話してくれるかい?」
「ああ……」

ここが正念場と、シンは拙いながらも必死に今までの経緯を語っていく。
皆城総士との出会いと別れ、紫の機体に襲い掛かったこと。
フリーダムの発見と撃破。ドモンやジャミルとの交戦と和解、そして死別。乱入してきた機体との交戦。
友の情報を求め別の戦場に介入し、結果的に一人の死を招いたこと。
その人物の知り合いと戦い、ジョーカーの存在を知ったこと。
……そして、補給ポイントで自分の悪評が流されていること。

「でもこの場には友達もいる。だから優勝して生き残るとかは……もう考えてないです」

最初に殺し合いに乗ったのはフリーダム――家族や故郷の仇がこの場にいたからだ、ということにした。
一気に語り終えたシンが顔を上げると、ミストは頭を抱えていた。

「……よく、わかった。なんだ……君も大変だったんだな」
「お、怒らないのか? 俺のやったことを」
「怒りたいさ。本当なら殴ってやりたいところだが……残念なことに俺に怒る資格があるとは言えないからさ」
「どういうことだよ?」
「その春日井甲洋って子、俺も一度戦ってるんだ。そのとき取り押さえていればタスクって人は死なずに済んだかもしれない。くそっ……」
「そう、なのか」

しばし無言の時間が過ぎ、がばっとミストが顔を上げた。

「よし、わかった! 俺と一緒に行こう、シン君!」
「え?」
「君がしたことは許されないことだ。でもこの状況、人を殺さざるを得ない状況を生み出したのは君じゃない、シャドウミラーだ。
だから君がすべきことは……殺しあうことじゃない! 俺やクルーゼさんと一緒にあいつらを倒すことだ、そうだろう!?」
「あ……うん。それができれば一番いいけどさ」
「できるさ! みんなで力を合わせればきっと!」
「あ、ありがとう……ございます。ミストさん」
「仲間だろ、気にするなよ」

底抜けに明るく言うミストにシンもつられて笑う。
この場に来て初めて仲間ができた。総士とはすぐに別れたから実感はなかった。
だが、他人と話せば高ぶっていた心も安定を見せる。
戦うしかない、殺すしかないと思い詰めていたシンももしかしたらそうせずに済むかも知れないと思い始めていた。
しかし……

「でも、ミストさん。イスペイルってやつを追わなくていいんですか?」
「あ……そうだった。今追わなきゃあいつはまた誰かを殺すかもしれない。でもクルーゼさんとの約束を破るわけにも……」
「じゃあ、行ってください。俺は一人でも大丈夫です」
「え? でも」
「この先の市街地で合流する約束があるんでしょう? 場所がわかってるなら大丈夫です。あなたはイスペイルを追ってください」
「うーん……いいのかい? 俺としても君がクルーゼさんと合流して、俺がイスペイルを倒しに行くってことを伝えてもらえるならありがたいけど」
「ええ。故郷を焼かれる痛みは俺もよくわかりますから……」

ミストの素性――異星人、異世界人といった概念――について、シンは驚きながらも受け入れてはいた。
死者が生き返るのだから違う世界があっても不思議ではない。
ミストの外見が地球圏の人間とまったく同じということもあり、それほど重要ではない事柄として片付けた。

何よりシンの気を引いたのはミストの境遇だ。
故郷を滅ぼされ、そして何とか落ち延びた平和な場所までもが侵略者に焼き払われた――それはシンとまったく同じ身の上ということだ。
ミストに対する共感めいたものがシンの中に生まれつつあった。

「だから早く行ってください。俺も多少腕に覚えがありますし、ここから市街地まですぐですから一人でも大丈夫です」
「そうか……すまない。じゃあ、お言葉に甘えて行かせてもらうよ。イスペイルを倒したら俺も合流するから!」

クルーゼとの合流場所や会ったときミストの仲間と証明するための情報などを詳しく教えて、ミストはヴァルシオン改を浮上させた。
それを見送るシンは安堵のため息をつく。初めて戦わずに済ませることができた。
緊張感から解放され、だが同時に嘘をついた罪悪感とがちくりと胸を刺す。

最初は本気で生き残る気であったし、フリーダムに乗っていたのも本来のフリーダムのパイロットであるとは限らない。
その辺は適当に伏せたのだが、ミストはシンを『被害者』として認識したらしく必要以上に突っ込んでくることはなかった。
これがもし冷静な相手だったら矛盾を突かれ返答に窮していたかもしれない。

「もっと冷静になれ、シン・アスカ……ここから先はただ戦うだけじゃ駄目なんだ……」

ミストを完全に信用できたわけではない。共感を覚えたといってもついさっき会ったばかりの相手だ。
もしクルーゼと交渉が失敗した場合、やはり戦うことになるだろう。そうなったときミストがシンを庇ってくれるとは考えづらい。
ミストの機体は見るからに強力そうだ。だからこそ、遠ざけた。
シンはクルーゼ本人と対面したことはないし、軍のデータベースにも人となりなど記録されてはいない。
クルーゼはレイと親類である、その一点こそが交渉の足がかりになるだろう。
レイの戦友であり栄光のザフトレッドである自分を、英雄とまで言われたクルーゼ隊長ならむざむざ切り捨てはしまい……という、やや楽観的な打算があった。

もっとも、もし首尾よくクルーゼやレイと合流できたとしても、その先のビジョンはいまだ見えてはいなかった。
彼らと協力してシャドウミラーを倒すのか、それとも当初の方針通り優勝を目指すのか。
考えるたびに脳裏に親友やドモンの顔がちらつく。
今のシンは彼らと交わす言葉を想像できない。だから考えない――問題の先送りだと気付いてはいても。

ミストが十分に離れたのを確認し、スレードゲルミルを浮上させたシン。
多少落ち着きを取り戻したとはいえその瞳はいまだギラギラと輝き、剣呑な影を消さないまま。
不安定な心を抱え、剣鬼が再び飛び立った。




【シン・アスカ 搭乗機体:スレードゲルミル(スーパーロボット大戦OGシリーズ)
 パイロット状況:疲労(大)
 機体状況:左腹部に損傷(中)、その他全身に損傷。マシンセル正常機能中。EN80%
 現在位置:D-7
 第一行動方針:クルーゼと合流する
 第二行動方針:レイを探す
 第三行動方針:シ―ブックとドモンには会いたくない
 最終行動方針:優勝し、ミネルバに帰還する……?
 備考:レイとヴィレッタ、他5人のジョーカーの存在を認識しました】

※D-1の補給ポイントが破壊されました


「追ってくる気配はない……考えすぎだったかな」

ミストは背後から攻撃の気配がないことを確かめていた。
甲洋のときのこともあり、殺し合いに乗っていたというシンを一応警戒はしていたのだ。
だが話す内、ミストもまたシンの境遇に自らを重ね合わせていた。
聞けばシンはすでに仇を倒したらしい。
ならミストとしては仇討ちをやり遂げた彼がこの場で命を落とすことがないように、仲間となって共に戦いたい、そう思った。

「クルーゼさんなら元々同じ軍隊に所属していたって言うし、シン君のことも何とかしてくれるだろう。
そうさ、いくら地球人だって言っても、同じ組織の人間が争うはずはないもんな」

だから今ミストが考えるべきはイスペイルを追って倒すこと、ただそれだけだ。

「待ってろイスペイル……すぐに見つけ出してアトリームやベザードのみんなの痛みを叩き返してやる!」

威勢よく叫ぶミスト。
彼に答えるようにヴァルシオン改が軽快に海面を飛行していく――またも補給し忘れていることに、ミストは気付かないままだった。



【ミスト・レックス 搭乗機体:ヴァルシオン改@スーパーロボット大戦OGシリーズ
 パイロット状況:イスペイルへの怒り
 機体状況:前面部装甲破損 エネルギー消耗(中) 核弾頭秘蔵 ガンダムハンマーとヴァルシオーネRのディバイン・アームを装備 エナジードレイン消費
 現在位置:D-7
 第1行動方針:イスペイルを追いかけてジロンの仇を取る(どこへ向かうかは未定です)
 第2行動方針:戦いに乗った危険人物、イスペイルは倒す
 第3行動方針:イスペイルを倒した後、クルーゼやシンと合流する
 最終行動方針:シャドウミラーを倒す】
 ※ゲイムシステムは、戦闘が終了すると停止します。一定時間戦闘していると再び発動。
 ※ヴァルシオン改の内部に核弾頭がセットされました。クルーゼの遠隔操作でいつでも起爆できます。
 備考:レイとヴィレッタ、他5人のジョーカーの存在を認識しました】

【1日目 16:20】

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最終更新:2010年06月19日 14:41