究極の果てに ◆0cm..EdqyM
見渡す限り大小の岩山が広がる荒野、その茶色に染まった大地を絵筆で一筋の青い線を描くかのよ
うにゲシュペンストMk―2・Sは走っていた。
しかし外から見た芸術とは正反対に、操縦者は一人延々と愚痴をこぼし続けていた。
「あ~あ……なんだって人間同士の殺し合いなんかに巻き込まれてんだろう」
ゲシュペンストの操縦者、紅エイジはこの会場に飛ばされる前までグランナイツの一員として外宇
宙から現れた正体不明の機械、ゼラバイアから日夜地球を守る生活を送っていた。
人間同士での殺し合いをした事のないエイジにとって、ワカメヘアーの男から突然押し付けられた
『殺し合いをしろ』という指示は全くもって納得いかなかった。
「ほんと、災難だよな~。殺し合いなんてやってられねえっての」
今日何度目か分からないため息をつく。
自分の頭ではどうすれば解決できるかは分からない。けれども会場にはあれだけの人数がいたのだ
から誰か一人くらいは妙案が思い浮かぶはずだ。エイジはそう信じて仲間を探す事にした。
けれども、人どころか生き物の気配一つすら見当たらない。
「あー、もうどうなってんだ!アヤカや斗牙達が巻き込まれていないのはよかったけど、どうして
この辺りには誰もいないんだよ」
こうして愚痴をこぼし続けながら5分ほど南西に向かって走り続けると西側から剣と盾を携えた
騎士型の機体が近付いてくるのが目に入る。
「おーい、あんた!参加者か~?」
エイジは機体を走らせるのを止め、スピーカーをオープンにしてゲシュペンストの両手を大きく振
り回す。相手もそれに気付いたのか機体の疾走を止めこちらの方を真正面に見据えてくる。
「如何にも」
騎士型の機体とマッチした渋いトーンの掛け声が返ってくる。
「俺は紅エイジ、エイジって言うんだ。あんたは?」
どうやら雰囲気はよさそうだと思い、エイジは自己紹介をする。
「我が名はウォーダン……
ウォーダン・ユミル!メイガスを守る剣なり!!」
「メイガスを…まもる…つるぎ……?」
雰囲気は良さそう…なはずであったが普通の言葉の後に突然発せられた謎の言葉にエイジは混乱していると、
眼前の機体はそんなエイジの感情を無視するかのように、殺気を放ち剣をこちらに構える。
「いざ、尋常に勝負!」
「…………いっ!?」
まだ人間同士の殺し合いをする心構えができていなかったエイジは相手の切り替えの早さと突然の
宣言にますます困惑するしかなかった。
「ちょ…ちょっと待て!俺は殺し合いなんかする気これっぽっちもないんだって!まずは話を…」
ひとまず落ち着きを戻取り戻そう。そう思い仮にも上手とは言えない説得の言葉を発するが、言い
終わる前にウォーダンは覇気を込めた声で遮る。
「話など必要ない!貴様には戦う意志がなくとも我にはあり」
どうやら相手は全く聞く耳を持ちそうにない。相変わらず剣はこちらに向けたまま一切の隙を見せ
ない。ならば腹を括るしかない。エイジは生き延びる為にウォーダンと戦う事を決断する。
「分かった、やってやるよ。ただし最初に言っておく。俺はかーなーり強い」
「ではいざ参る。」
━━かくしてエイジにとっては望まぬべき、ウォーダンにとっては望んだ戦いが幕を開ける。
最初に仕掛けたのはウォーダンの方であった。
両手で握った剣を正眼に構え疾風のような速度で突撃してくる。
(…速いっ!?グランカイザーの比じゃない。だがこの距離なら!!)
必死にゲシュペンストを上空へと跳躍させる。なんとか敵の突撃をかわした
……そのはずであったが、
「それで避けたつもりか!!」
騎士の機体は追いかけるように大地を蹴り、空中で身動きがとれないゲシュペンストを電光石火の
勢いで捉え右腕を貫く。
「しまっ…」
気付いた時にはゲシュペンストは左方向へ大きく弾き飛ばされ、右腕は存在しなくなっていた。
(マズった…!右腕がなければ武装のほとんどが使えない…!片腕だけで戦えるのか?
それにあの機体の速さ、乗り手の技量…ゼラバイアとは全く比べ物にならねえ…)
判断力━━普段はグランカイザーを操縦しないエイジにとって戦闘における判断力の弱さこそが
最大の弱点であり、ここぞという生死の境目において姿を見せた格好であった。
「ちくしょうっ!スプリットミサイルだ!!」
確かに自分のミスで右腕は失った。だが相手よりも地面に到達するタイミングは僅かに速い。なら
ば、その隙を突いて相手を崩すまでだ。
ウォーダン目掛け発射したスプリットミサイルは全弾命中するかに見えたが━━
切り払われている!?
そう、ウォーダンはミサイルの方角に剣先を向けると機動性の速さによる回避と切り払いにより一
発も本体に被弾する事なくしのぎきったのだ。
(全く厄介な相手だぜ。斗牙より強いんじゃねえのか?だが、これならどうだ?)
近付く相手に対し胸部からメガ・ブラスターキャノンを放つ。
命中に成功━━敵は大きく退いたが、対ビーム装甲に覆われているのか損傷を受けた様子がない。
(装甲まで化け物かよ…。へっ、たまったものじゃないな。)
舌打ちしながらもなんとか逆転の一手を考える。
(今、残された攻撃手段はスプリットミサイルとメガブラスターキャノン。それに奥の手が一つ…)
右腕一つ失っただけで随分頼りないものだ。その上スプリットミサイルでは相手を捉えられない。
メガ・ブラスターキャノンは相手の装甲に阻まれて全く通用しなかった。
だったら奥の手を叩き込むしかない。しかし、あの技を放つ際には大きな隙ができる。奴がそれを
待ってくれるとは思えない。どうにかして分の悪い賭けを成立させる手段を模索する。そして━━
(一つだけ浮かんだぜ…。嫌なことを思い出しちまったけどな。)
エイジは覚悟を決め接近してくるウォーダンに対し、スプリットミサイルを放つ。
ウォーダンは先程と同じように切り払いながら今度は徐々にこちらへと迫ってくる。
(まだだ…。まだ焦るんじゃない…!)
心の中で言い聞かせ、ありったけのスプリットミサイルをとにかく発射し続ける。
やがてミサイルの雨を払うのを飽きたかのように敵機は最初の時と同じ突撃の姿勢をとる。
今度は前回より近い距離で━━
「クラッシュドーン!!」
リューナイトは音速の勢いで大地を駆けるとみるみるとゲシュペンストとの距離を縮める。そのま
ま速度に乗った勢いでゲシュペンストの胴体目掛けて剣を突き出す。
エイジは咄嗟にゲシュペンストの左腕を盾にする事で中央部の損傷を防ぐ。
騎士の剣がゲシュペンストの左腕に勢いよく突き刺さる。
ゲシュペンストを後ろに引きずり飛ばしながらも左腕を少しづつ削り、引き裂き、そして…
「待っていたぜ、この瞬間を!!メガ・ブラスターキャノンッ!!」
メガ・ブラスターキャノンを食らったリューナイトは傷一つなく弾き飛ばされる。
「笑止!我が装甲には傷一つ付かぬわ!」
ウォーダンからこんなものは予想の範囲内だと言わんばかりの声が聞こえてくる。
しかしエイジはウォーダンに対して満足気な声をあげる。
「確かに装甲には傷一つ付かないな。だけどな、空中で身動きはとれるのか?」
「なに!?もしや…!」
ウォーダンはその瞬間、エイジの狙いに気付く。リューナイトはメガ・ブラスターキャノンによって
“身動きのとれない上空”へ大きく弾き飛ばされたという事を。
エイジはリューナイトの二つの点に着目した。
『近接攻撃しかしない事』
『空中を自在に飛び回らない事』
最初に右腕を飛ばされた時、この二つの内どちらかが可能であればゲシュペンストは追撃を食らい
既に大破していたかもしれなかった。
そうしなかったという事は奴の弱点は身動きのとれない空中にある。
ならば自分の間近の空中に浮かせれば奥の手をぶちかませる、そう判断して武装を見回したエイジ
はメガ・ブラスターキャノンを零距離で発射する事を思い付く。
心臓に悪い賭けだったが上手く決まってよかった。少し肩の力を抜き宙を舞う相手を見つめる。
奴にとどめを刺すチャンスは今しかない。
「最初の借りはきっちり返させてもらうぜ!」
ゲシュペンストの全身全霊、全ての力を軸足に込め、大空高くへと跳躍する。
そして空中で剣を振り回す敵へと狙いを定め━━
「うおおおおお!!食らえっ!!」
━━アヤカ…斗牙…みんな…琉菜━━
「究極!」
━━俺に力を━━
「ゲシュペンスト!」
━━貸してくれ━━
「キィィィック!!」
星々が砕け散るような爆発と轟音が煌めき響き渡り、リューナイトは━━
━━勝利を遂げた
皮肉にもエイジの一撃はウォーダンには届かなかった。
リューナイトにも遠距離攻撃を行なう技は存在したからである。
とある世界において邪竜族の侵攻を食い止めるべく命を賭して放たれた究極の一撃
━━━メテオザッパー━━
勝利を確信したゲシュペンストは空中から降り注ぐルーンの流星群を成す術もなく受け、
跡形もなく砕け散った。
エイジの戦った証として残されたのは塵と化した残骸と右腕だけであった。
【紅エイジ 搭乗機体:ゲシュペンストMk―Ⅱ・S(スーパーロボット大戦OG2)
パイロット状況:死亡
機体状況:大破】
「…消耗し過ぎたか。回復の必要があるな」
補給ポイントを探す為、橋を渡る途中南に見えた街の方へと進行方向を転換する。
メテオザッパーは機体の大量のENを消耗する技であり、機体状態によっては自爆に繋がる代物である。
現在のEN状況では使用できない。であれば下手に戦闘せず逃げるのが必定である。
元々ゲシュペンストの戦い方を熟知していたウォーダンはメテオザッパーを使うつもりはなかった。
それが使わざるを得なくなったのは先行きを考えるとかなりの痛手であった。だが━━
「ふふふっ、戦いとはこうでなくては面白くない」
ウォーダンは強者と戦える喜びに打ち震えていた。
「この様子だと封印を解く日も近いかもしれんな…」
正面からほんの一瞬だけ腰に差した聖騎士の剣の方に目をやるとウォーダンは南へ南へと機体を走らせた。
【ウォーダン・ユミル 搭乗機体:リューナイト・ゼファー(覇王体系リューナイト)
パイロット状況:良好、聖騎士の剣所持
機体状況:良好、ビームコート装備、残りエネルギー1/16
現在位置:E-5 荒野から南西の街へ向かい移動
第一行動方針:EN補給
最終行動目標:強い相手と戦い続ける】
【一日目 6:30】
最終更新:2010年01月08日 17:17