「ズラ! ズラ!」
ビスク西エリアにのっそりとそびえるアパート。その一室でどたどたと走る音が響いた。
その音はしばらく走りまわると、目的の人物を見つけて、勢い良く頭突きをかました。
「ゲフゥ! ・・・・・・ひ、姫・・・・・・いきなり頭突きとは何事でござる? というより、廊下を走り回っては危ないでござるよ。それに拙者はズラではなくアズラ・・・・・・」
「・・・・・・むぅ・・・・・・」
姫と呼んだ少女があんまり恨みがましい目で見つめながら、腰に回した手をきつく締め始めたので、ズラと呼ばれた青年はしぶしぶその名を呼んだ。
「アズラッドでござるよアル様」
「うむ、それでよい」
アルははじけるようにキラキラ笑うと。すぐその表情を真面目にしてアズラッドに迫った。
「それよりもアズ! 今宵が何の日だか知っているかえ?」
「今宵でござるか? たしか『くりすます』とやらでござったか?」
「そのとうりだアズ! そしてクリスマスには何がくるか知っておるか?」
アズラッドは少ない知識を総動員して、最近良く聞く単語に行き着いた。
「『さんたくろーす』という人物でござるか?」
「なんじゃ、意外と知っておるではないか。何も知らないかと思っておったぞえ」
(まぁそれが何なのかは知らないでござるがね)
などと、アズラッドは内心で呟くと、アルが何気なく持っている大きな靴下に目をやった。
「なんでござる? その人一人なら軽々と入りそうな靴下は・・・・・・」
「ああ、これかえ? これはたまたま売っていた『ギガースの靴下』だのう」
やっぱりキラキラと笑いながらしゃべるアルだが、アズラッドのほうは、
(ギガース・・・・・・あのギガースでござるよね? あれ? あ奴は裸足では・・・・・・ソレよりも
なぜそう簡単に売っている!?)
などと、靴下について悶々としていたりする。
「コレにサンタからのプレゼントを入れてもらうのだ、ほっほっほ」
(プレゼントを入れる? どうやってでござ? 靴下が部屋の中にあるとすれば、部屋の中に入らねばいけない。ということは・・・・・・)
アズラッドの脳裏に一つの結論が導き出された。それは!
「さんた」=「不法侵入者」
(姫をお守りせねば!)
勝手な解釈で勝手に使命に燃えるござる男と一緒に、
(クリスマスというものは、カップル誕生率が跳ね上がると物の本に書いておったからのう・・・・・・この機会にズラを・・・・・・ふふ、ふふふ)
これまた勝手な妄想で勝手に頬を赤く染める姫一名。
そんなこんなで夜が来て。アズラッドは刀の入念な手入れ。アルはどうやったらござる男を落せるか想像に胸を膨らませていた。
「ふむ。ズラ~、妾は空腹だぞえ~」
「わかったでござる。今したくをするゆえ、もう少し待つでござるよ・・・・・・それとズラではなくアズラッドでござる」
「クリスマスにはご馳走を食べるものだからのう。とびっきり豪華にするのだぞ」
なんてことを言われたのだが、クリスマスの何たるかを知らぬござる男は、ご馳走の意味がまさか「ケーキ」だとか「ローストチキン」だとかとは全く思っておらず、そのまま普通に夕食を用意しようとしていた。そんな矢先にあれは現れた。
コンコン。というノック音がしたので、アズラッドは玄関の方を見た。すると次はドンドンという、すこし強めのノック音が響いてきた。不審に思ったアズラッドは用意しておいた刀に手をかけ。そろりそろりと玄関に近づいていった。
扉まであと50cmというところで、ドアに音も無く無数の切込みが入り、細切れにスライスされてしまった。
(敵!? もしやコイツが!)
扉あった場所には赤い赤い、返り血のように赤い服を着て、巨大な鎌を持つ小柄な人影が立っていた。
「やはり族か! 覚悟!」
神速抜刀。目にも止まらぬ速さで抜かれた刀は、真っ直ぐ人影の顔を狙い、
「兄貴ガァァァァァァァド!」
小柄な人影がとっさに突き出したアズラッド並みの人影に防がれた。いや刀を歯で噛むことで噛み止められていた。真剣白歯取りである。
「い、いいい、い妹よ・・・・・・兄の首がなくなってもかまわないのか? ちんじゃうんだぞ?」
「毎日のように眉間心臓股間を撃ち抜かれてなお、ピンピンしてる奴に言われたかねぇ」
「お、おぬし達は・・・・・・」
騒ぎを聞きつけたアルが玄関にやってきて収拾をつけることとなった。
「おぉ、セグにレイブンではないか。どうしたのだ二人とも? そんな赤い服を着て」
「メリークリスマスってことでよ、遊びに来たぜ。それよかお前ら中にいんならさっさと開けろよな。待ちくたびれて破壊しちまったぞ」
玄関扉はとりあえずアズラッドがガムテープでごまかしておいた。
「どうだ凄いだろ~。コレ一式手に入れるのには苦労したんだぞ~」
なんていいながら、レイブンが自分の着ている赤い服、サンタギガース装備を見せびらかした。見事に赤い。
「お主、バハに帰ったのではなかったか?」
「って、そこかよ。いいだろうがたまに帰ってきたって。銀行員しかしゃべり相手がいないあそこは寂しいんだぞ!」
「しらん」
レイブンはアズラッドの何気ない一言で少し傷ついたようで、蹲って地面に「の」の字を書き始めた。
そんな兄貴の様子など視線にもいれず、セグは担いできたかばんの中身を引っ張り出した。
「今日は兄貴の作った特製ブッシュドノエルにローストチキンを持ってきたぜ! コイツでパーティを開こうとおもってよ」
「そうか、コイツ泳ぐだけでなく料理という取柄もあったんだったな」
「おぉ気が利くのう、河童よ」
「へ、へっへ~ん、どんなもんだい」
バカはいじけるのも立ち直るのも光速レベルで早い人種らしい。
「そしてアズ~、俺たちにはなんと・・・・・・・じゃんじゃじゃ~ん」
レイブンは懐から大きめのビンを一本取り出し、貼ってあるラベルを突きつけた。
「こ、これは・・・・・・ワイン?」
「スパークリングワインだ! いやぁこの前ただで手に入ってよ、この機会にあけようとおもってさ。イェイ!」
アズラッドは額にしわを寄せ、拒否の意思を表そうとしたが、
「し、しかし拙者酒はそれほど強くは・・・・・・」
「硬いこと言わない言わない、今日は楽しいクリスマスだぜぇ~、ほれほれほれ~♪」
強制的にグラスに注ぐことで黙らせた。
「俺らにはグレープジュースを用意してきたからな。こいつで乾杯と行こうぜアルっち」
「うむ、なんだか楽しくなってきたのう」
「よ~し、それじゃ俺っチが乾杯の音戸をば・・・・・・乾杯!」
「「「乾杯!」!」・・・・・・でござ」
三つの元気の良いグラスと、一つのためらいがちなグラスが空中で軽くぶつかり合い。4人の小さなパーティが始まった。
そして、数時間後。
部屋には酔いつぶれて寝てしまったレイブンとアズラッド。疲れてしまったのか。テーブルの上で突っ伏したまま寝てしまったセグ。そしてそれぞれに布団をかけ、電灯を消すアルの姿があった。
「ふふふ、皆他愛もないものだの~。もう寝てしまうとは・・・・・・」
足音を出来るだけ立てずに、アルは酔いつぶれて寝てしまっているアズラッドの隣までやってきた。
「本来は、二人っきりで過ごしたかったのだがのう・・・・・・だが、こんなクリスマスも楽しいものだ。王宮にいたときの窮屈な式典とは全く違う、とても楽しいものだったのう」
アルはアズラッド布団にもぐりこみ、
「だから、今は隣で寝ても良いだろう?」
と呟いた。すると、寝返りをうったのか、何かと間違えているのか、寝ているアズラッドがアルを優しく胸元まで抱き寄せた。
最初はとても驚いたアルだったが、頬を朱に染めて。顔をアズラッドの胸にうずめるようにして眠ることにした。
(今年は最高のクリスマスプレゼントをもらえたぞえ・・・・・・)
そして更に数時間後。
トナカイのような角をつけた奇妙なUFOが、ジェット噴射するメタリックなソリをつれて、アパートの窓脇にやってきていた。
「メッリ~クリスマァァァァァスなのであ~る♪」
緑の髪を赤い帽子に隠し、髭眼鏡などのバラエティーグッズを余すとこなく装備した、怪しさの塊は、懐から小型のメガホンのようなものを取り出し、鍵のかかった窓に向けた。
「必殺! 振動鍵空け銃『空き巣君』起動!」
メガホンのトリガーを引くと、超音波が発射され、カタカタと音を鳴らして、鍵が勝手に開いた。名前も効力もヤバイ。
「なぁぁっはっはっはっはっは! 我輩、自分の才能が時々怖いのであ~る・・・・・・」
なんて自画自賛しながら不法侵入を果たし、周りを見渡した。
「暗視スコープ搭載式髭眼鏡『バッチリンVZ―α』暗視モードで起動!」
暗がりもばっちり見えるようになった怪しいサンタは、目的の靴下をみつけ、その中にプレゼントを入れた。そしてもう一度周りを一瞥。
「楽しそうであるなあ。探し人も見つかったようで、よかったのであ~る。知り合いがこいつらだというのが、少々癪に障るが・・・・・・まぁいいのである」
怪しいサンタはにんまりと笑うと、急いでその場を去っていった。
そうして、おかしなソリを動かして夜空を飛び回る怪しいサンタは、次の場所で召還骨にたかられ噛まれ、魔法や暗黒命令を喰らい、聖拳乱舞でボコボコにされた後こん棒で吹き飛ばされたらしい。南無。
あとがき
突発ショートストーリーをテケトウにお送りしております。
クリスマスなんでクリスマスネタを考えてたら、思いついてしまったので、
真夜中の4時半ぐらいまでワードを起動させてた俺がいる(苦笑
だいぶ眠かったから、内容がてんでわんやなことになっている罠。
とりあえず、ちょっとずつ直していこうかなorz
とりあえず一途なアルが書けておなかいっぱいかな。
ぶのじの料理はビスク中央にあるアイテムボックスからもらえる、
クリスマスセットの中身と全く同じにしてみました。気づいた人はいるんだろうか?
最後に出てきたお家は・・・・・・想像にお任せしますw
さてさて、こんなものをいきなりWikiに載せても大丈夫なんだろうか?
最終更新:2006年12月25日 22:13