139名無しさん@ピン キー:2010/03/23(火) 15:43:58 ID:ZnDqIuwW

いろいろあった夏もようやく終わりかけて、夕方にもなると秋の気配が忍び寄ってくるようになった今日この頃。
「ちょっとお~、健二くん居る?」
部室のドアがノックされたと思うと、こちらの返事も聞かずにバタンとドアが開いて夏希先輩が入ってきた。
「オ~ッス、健二くん、…それに佐久間くんも」
「チ~ッス、夏希先輩」
「あっ、どうも、夏希…先輩」
佐久間に肘でこづかれ、テレながら夏希先輩にあいさつした僕の目に、彼女の影に隠れるようにしていた
小柄な少年の姿が目に入った。
「あれっ、…佳主馬くん?」
よく日に焼けた端正な顔だちがひょこっと飛び出すと、つやつやサラサラの髪の毛がふわっと揺れた。
「こんにちは、お兄さん」
「や、やあ、佳主馬くん… 久し振り」
仮想世界の超有名人の突然の来訪に驚いたのは僕だけじゃなく、佐久間も同じだった。
「カズマくんってまさか… ひょっとして健二、この子があの『キングカズマ』だっていうのかい?」
「そうだよ」
「ふえ~、…話には聞いていたけど、マジでホントに中学生だったんだ」
「リアルじゃ初顔合わせですね、佐久間さん、…あの時はいろいろとサポートありがとうございました」
「そんな、滅相もないよ! あの『キングカズマ』に手を貸しただなんて、プログラマー冥利に尽きるつ~か、
こっちも鼻が高いですよ」
柄にもなく頬を赤らめている佐久間。どうやら、佳主馬くんの魅力に一発で参ってしまったようだ。
僕は彼女に聞いてみた。
「ところで先輩、…なんで佳主馬くんがここへ?」
「ん~とねえ~、佳主馬がど~しても健二くんに合いたいって聞かなくって、勝手に学校休んで家を出てきちゃった
らしいのよ」
「へえ~、…ってわざわざ僕に会うために!?」
「そう、名古屋から、はるばる一人旅して」
佳主馬くんの顔が真っ赤になった。
佐久間が笑いながら言う。
「嬉しいだろ健二、佳主馬くんがわざわざ会いに来てくれて~。…ねえ夏希先輩、こいつったら、あれからというもの
毎日毎日、『カズマは俺の嫁』だの、『僕がカズマの婿です』だの、そんなんばっか言ってんですよ~」
「ちょ、佐久間、お前何言ってるんだよ~」
あせる僕、もじもじする佳主馬くん。それを眺める夏希先輩の目に、なにやら穏やかならないものが宿る。
「へえ~、…健二くん、あたしが知らないあいだに佳主馬と、随分仲良くなってたみたいね?」
「!?」

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最終更新:2010年05月04日 06:46