28 名前:しょたほも注意 1[sage] 投稿日:2009/08/13(木) 00:16:11
ID:AfsI1WYl
「うう…」
寝床に入って数時間、あまりにも寝苦しくて目が醒めた。寝間着が汗によってじっとりと湿って、素肌にまとわりつく。携帯を開けば時計は午前2時を表示していた。
クーラーのない真夏の夜の、生温い室温は僕の体温と同じかそれ以上に感じ取れた。
今年最高の真夏日。田舎は涼しいものだとはいうけれど、普段は冷房の効いた部屋でしか寝起きをしない人間にとって、開け放した襖から時たま入る緩やかな風は風流を感じさせる意外、あまり意味を持たないものだった。
「み……水……」
襟元をパタつかせ、汗で張り付いた前髪を掻き分けながら部屋を出る。
「勝手に飲んでも大丈夫かな…」
冷蔵庫に入っていた麦茶を頂く。喉を充分に潤せば、反して今度はトイレに行きたくなってきた。
家の中からは何の物音もしない。それぞれの寝室でみんな寝息を立てているんだろう。
外からの光でうっすらと明るい室内を慎重に歩んでいく。部屋が多い分、誰がどこで寝ているか分からない。もしも寝ている誰かを起こしてしまったら申し訳ない。
トイレに行くまでの途中、カズマ君の部屋の戸から光が漏れているのに気付いた。
「(まだ起きてる…?)」
隙間から見える光は、明々とした光ではなくほの暗い程度の僅かな光。正体はパソコンモニターの明かりなのだとすぐ気付いた。
29 名前:しょたほも注意 2[sage]
投稿日:2009/08/13(木) 00:19:16 ID:AfsI1WYl
「部屋の明かりつけないと目ぇ悪くなるよ…」カズマ君の、OZの世界でのもう一人の自分。キングカズマ。世界的チャンプである彼の、真剣な表情でキーボードを叩く姿が勝手に頭の中に浮かんできた。
用を足し、もと来た廊下を戻っていく。
ふと足を止め、カズマ君の納戸に近寄っていく。
「別に、お兄さんぶりたいワケじゃないけど…」
子供はこんな時間まで夜更かししちゃ駄目だよ。
パソコンの画面を見る時は部屋を明るくしましょう。
軽く注意するつもりで、引き戸に手をかける。「………あれ」
いつもの、キーボードを忙しく叩く音が聞こえない。
「つけっぱなしで寝てんのかな…」
なら起こさないようにと、そろそろと戸を引いた。
最初に目に飛び込んで来たのは、やはりカズマ君の後ろ姿だった。猫背を更に丸め、パソコンを食い入る様に見つめている。
ただ少し様子がおかしかった。肩に異様に力が入っているように見えた。右手はマウスに添えたまま、動かない。左手は足の間に吸い込まれていて、腕が小刻みに小さく動いてる気がする…。
パソコンから発するカリカリという音と共にかすかに、少年の上擦った、荒い息遣いが聞こえる。汗ばんだ細いうなじに、黒い髪が張り付いているのが見える。
30 名前:しょたほも注意 3[sage] 投稿日:2009/08/13(木) 00:21:12
ID:AfsI1WYl
「…………っは、はぁっ…」
タンクトップの裾は胸下まで引き上げられており、腰の、少し反った背骨の形がみえた。それは小さなお尻の窪みへと続き、足首までずりさげられたハーフパンツを小刻みに揺らしながら、カズマ君は─────…
「…っエェッ!?」
「ッ!?」
思わず驚きの声を上げた僕に気付き、最中だったカズマ君がヘッドホンを外しながら大げさなくらいに振り返った。
お互いにお互いの姿を凝視する。
…………………間。
「っうぁぁぁぁッッッ!!!」
「すっ!すすすいませんでしたー!!」
ピシャッ!!と勢いよく戸を締め、急いで僕と彼の間に壁を作る。
なんてこった。なんてこった。なんてこったなんてこった。
見てはいけないモノを見てしまった。やってはいけないコトをしてしまった。
数学以外にはあまりにも鈍感な頭にガツンと鈍い痛みが走った。
先程まで快感に酔いしれてたであろう彼に、一気に絶望の色を落としたのは自分だ。
ああなんで俺いっつもこんなんなんだろう、出会って数日の人間のプライベートな空間に首突っ込むなって、っていうか察しろよ自分、と次々に戸を開けてしまった後悔が押し寄せてくる。
どう言い訳しようかと思考を巡らせている僕に、壁の向こうから声が聞こえた。
31 名前:しょたほも注意4[sage] 投稿日:2009/08/13(木) 00:24:03
ID:AfsI1WYl
「…………何か用?」
焦りを隠そうとしているのか、彼はいつもの変声前の高い子供の声よりも、若干低い声色だった。
「よ、よよよっ用ってワケじゃないけどっ」「なら何…?」
「あ、明かりがついてたから!パソコンつけたまま寝てたんならそりゃ良くないなーって!」
「…余計なお世話だよね」
「ごめんっ!わざとじゃないんだっっ!ほんと偶然なんだよ!!」
「…………………」
嘘と沈黙。静止した闇の中で。
怖い。怖すぎるよ無言は。こんな時に栄おばあちゃんのあの沈黙を思い出していた。だってなんか緊張するんだよあれ。いや、今回はそれより断然マズイ状況で……
たら。
一気に興奮してしまったせいか、いつもの鼻血がたらりと慕った。一気に顎まで垂れてゆく。
ここでもしも第三者が居たとしたら、鼻血をだらだらと流す僕を見てどう思うだろう。
年下の男の子のオナニーを覗きみて興奮する男子高校生。そこから弾き出される答えは。
…………あのラヴマシーンの事件よりも世間体や人間的に痛ましい誤解が出来てしまう!!
「……ねえ、まだ外にいる?」
「……へっ」
「いるなら、話がある。……入ってきていいよ」
………………………え。
意外な答えが返ってきた。
33 名前:しょたほも注意 5[sage] 投稿日:2009/08/13(木) 00:28:20 ID:AfsI1WYl
部屋の中。先刻まで小さな体を快楽に浸していた彼のいる部屋。
脳裏に焼き付いたカズマ君の、ほの暗い部屋での乱れた姿と呼吸が思い出される。記憶の中で、ハーフパンツの引っ掛かった褐色の生足が、やけに生々しく描かれた。
「……………あっ」
思わず、前屈みになってしまう僕。え、いや、ホントこれじゃ言い訳出来ない状況になってしまうよ?ちょっと待ってよ。落ち着こうよ僕。
「………なにモタモタしてんの?早く入りなよ」
扉の向こうから声が掛かる。少なからずまだ興奮の色が見えるボーイソプラノが僕の耳に入った。
逃げられない。よりによって体が反応してるこの時に。てか何考えてんだ僕の身体!!何考えてんだカズマ君!
「…………ぉ、お邪魔しま~す…」
覚悟を決め中に入り、最後にたん、と引き戸を閉める。背中は戸に張り付けたまま若干引き腰に、カズマ君を見やる。
カズマ君はズボンを履き直しており(当たり前か)折り曲げた片足の膝に顎を乗せてこちらを向いて座っていた。
見つめる、とゆうよりはジロリと睨み付ける様な視線をこっちによこしていた。
「座って」
視線だけを動かして僕を座るよう促す。
そろそろと動いて、適当な場所に正座する。「鼻血出てるよ」
「あ、ありがとう…」
ティッシュを投げて寄越してくれた。
「………………」
「………………」
パソコンの光だけが納戸の中を照している。薄暗く、狭い室内に、二人だけ。
34 名前:しょたほも注意 6[sage] 投稿日:2009/08/13(木) 00:33:09
ID:AfsI1WYl
「………は、話って?」沈黙に耐えきれず、僕から話題を切り出す。
「……さっきの事、誰にも言わないで」
「も、勿論!!」
「忘れろ…なんて無理な話だと思うから」
「だ、だよね」
「……………」
「き、気にする事ないよ!誰でもする事だよ、恥ずかしがる必要もない!」
「…………誰でも」
「そうだよ、誰でもだよ!!」
「…お兄さんも?」
「へ?」
「…言い訳みたいで好きじゃないけど、一応話しとく」
そう言ってカズマ君はくるりと向きを変え、パソコンをカチカチといじりはじめた。
「…………」
何をどうすればどう転んでいくのか。全く予想が付かない。カズマ君の頭の中が全く読めない。
「これ、さっきまで見てたやつ」
「へっ」
パソコンを開いたまま胸の前に持って振り返る。液晶に映し出されていたのは。
「……………………………………金髪」
白人の男性女性が絡んでいる無修正の写真のデータが、いくつも添付されていたメール。内容的に、中学生には見せちゃいけないモノだと思う。刺したティッシュの鼻栓に一層血が染みた。
文章はたった一行だけ、“ぷれぜんとふぉーゆー”と書かれていた。
「OZ経由で届いて来たんだ。差出人は、…………陣内侘助」
「わ、侘助おじさん?」
「故意か事故か分かんないけど……とりあえず、アイツからこのメールが届いたんだ。」「え…」
35 名前:しょたほも注意 7[sage] 投稿日:2009/08/13(木) 00:34:20
ID:AfsI1WYl
だからどう、と言いかけた時、気付いた。
このエロ画像は自分が集めたものじゃない。自分は、こんなもの集めてない。
偶然、拾っただけ。勘違いするな。
少年の、精一杯の自己防衛だった。
もう現場を見られてしまっているから、もう意味ないかもしれないけど、という諦めの意思も含めて。
「…………恥ずかしい?」
「………っえ、」
「恥ずかしいよね、あんなの他人に見られるなんてさ」
「………………」
顔を赤くして俯いてしまった。でも、なんとなく気持ちは分かる。
「ホント。誰にも言わないよ。忘れるのは無理だってカズマ君は言ったけど…カズマ君が嫌なら、忘れる努力をするよ」
「………ホントに?」
「約束だよ」
…おお。なんか、普通の兄弟の持つ様な雰囲気が部屋に流れている。さっきまで沈黙が痛かった場所とは思えない。これならカズマ君と肩を組んで歌を唄える程のさわやかさで、この部屋を後に出来る。よくやりました僕!!
「………でもお兄さん、一ついい?」
「なんだい?何でもお兄さんに聞いていいよ」
「…………さっきから、なんでチンコたててんの?」
アラララララララーイ!!
後半に続く