106 名前:かずま受け 1[sage] 投稿日:2009/08/24(月) 14:02:52 ID:???
KING KAZUMA WIN!!

「………ふぅー………」
当たり前の様にディスプレイに表示される勝者の名前に、軽く安堵する。
あのラブマシーンの事件以来、ますますキングカズマの人気はうなぎ登りだ。
二度も敗北したとはいえ、最終的にラブマシーンを倒し、世界を救ったチャンピオンの名は、闘いに無関心な人間の耳にも届き、OZの世界じゃその名を知らない人間がいない程に広く知れ渡った。
「…解決したのは僕だけの力じゃないけど」
キーボードを打ち込み、会場からログアウトする。ノートパソコンを閉じ、傍にあった麦茶をグイッ、と一気に喉に流し込む。
スポンサー会社の数も今までとは段違いになり、勝利へのご褒美のレアアイテムなんて腐る程もらった。
「…………なのに」
ただなんだろう。キングカズマとしてチャレンジャーの挑戦を受ける度、胸のどこかがやけにざわつく。
…………敗北。
あのラブマシーンから味わわされた屈辱の味。絶望の味。
…もしかしたら、世界はあの時終わっていたかもしれない?
父さんも母さんも妹も、他のみんなも、…自分も。
勝つかどうかのギリギリのバトルなんて今まで何度も潜り抜けてきた。
だけど、アイツとの勝負で、そんな死線なんて何の意味も持たないんだと、気付かされた。
「………クソッ!!」
勝ち続ける事。それだけが、このざわつきを抑える有効な手段だった。
休憩に入るつもりだったが、手を止めていると逆に落ち着かない。
閉じたパソコンを開き、再度会場にログインしようとした。
「……………?」



107 名前:かずま受け 2[sage] 投稿日:2009/08/24(月) 14:06:12 ID:???


ユーザー画面上のキングカズマから、「メールが届いています」と書かれた吹き出しが出ている。
「……スポンサーから?」
いや、違う。表示されたアドレスに見覚えは全くない。どうやら、個人から直接送られて来たメールのようだ。
「…なんだろう?」
ラブマシーンの事件以来、OZのセキュリティは怪しいモノだ、信用出来ないとコミュニティで何度も話題になっている。
現に、ラブマシーンによる混乱の止まない中、キングカズマ宛に大量のメールが届き、容量がパンク寸前にまでなった事もある。
しかしOZの方でも新たに対策案が持ち寄られ、今まで以上にセキュリティを強化しているはず。
「……………」
警戒の意志は持ちつつも、URLをクリックしてみる。

「………………え?」

画面に表示されたのは、たくさんの写真。
何事かとその中の一つをクリックして拡大してみる。
「…うわっ!!」
写っているのは………子供。それも、僕と同じくらいの年代の男の子。
どこの国の人間かは分からないけど。
その子の肌は浅黒く。
髪や瞳の色も真っ黒だ。
顔立ちはまだ全然幼いけれども。
………僕に、よく似ていると思った。
そんな男の子が、……大人の男性の局部に、おいしそうに小さな赤い舌を這わせている。
「………!!」
他の写真も大きくしてみれば、同じ様な褐色の少年の裸体や、少年同士が舌を絡めキスしている画像、……中には、四つん這いになった少年のお尻を男が犯しているモノもある。
「……児童ポルノ写真集…ってワケ?」

背中に嫌な汗をかきつつ、頭の中じゃ様々な感情が沸き上がってくる。
なんなんだろう、これは。
嫌悪感や、不安感が胸の中を満たす。
自分によく似た少年のポルノ写真をじっと見つめたまま、僕は動けなくなっていた。
送られて来たメールアドレスを見返す。やっぱり見覚えなんてない。
ふと、OZの掲示板に投稿されていた嫌がらせの書き込みを思い出した。
キングカズマに対してのセクハラめいたメッセージの数。それを見掛ける度に、僕は思っていた。


108 名前:かずま受け 3[sage] 投稿日:2009/08/24(月) 14:10:10 ID:???


「……本当の僕の姿なんか、知らないくせに……」
タッチパッドの上の指先が、緊張のせいか小さく震えて、上手く動かせない。
また写真が拡大された。少年の陰部に指を絡ませ笑っている男の写真。

「…っ僕に、指一本触れる事さえ出来ないクセに……」
快感に酔いしれながら光悦としている少年の顔、挿入の痛みに耐え、涙を流す少年の顔。
頭の中で、どれもこれもが、僕の顔になっていく。

「………調子に乗るなッッ!!」

バンッ!!と大きな音を立てながら、パソコンを閉じた。
頬の表面を冷や汗が垂れていく。いつの間にか興奮のあまり、息が上がっているのに気付いた。
「…………最低」
気持ち悪い、と自分の愛用しているパソコンを一瞥する。
はぁ、と息を付き、コップに残っていた麦茶を全て飲み干す。多少生温くなったそれでも、飲まないよりはマシだった。

「あーぁ…汗でべとべと…」

襟元をぱたつかせ、タンクトップの中に風を送る。…暑い。しょうがないか、たかが納戸にクーラーがついてるワケないし…。
でも母さんと一緒じゃ、パソコン出来ないし…。
とりあえず、お風呂入ろう。
そう思い、母さんのいる部屋に着替えを取りに向かう。

「…………………最低」

着替えを母さんから受け取り、脱衣室で裸になりタオル一枚を持っていざ風呂に入ろうとすれば。
………既に午後11時。他の親戚のオジサン達が入った後の浴槽は、タップリあるはずの湯は半分以下になり、なにやら垢らしきものや縮れた毛等が浮いていた。



109 名前:かずま受け 4[sage] 投稿日:2009/08/24(月) 14:11:46 ID:???



「……最低だ、最低だ、最低だ!」
桶を手に取りザバッ、と湯船に突っ込み、浮いている物を救おうと必死に湯をかき回す。湯を抜いて新しく湯を張れば良いのだと、粗方湯をすくい出した後で気付いた。
しかし、新しく湯を張っても、どうせ僕一人しか入らない。それは流石に勿体なくない?
「~~~~~~~ッ!!」

熱のこもった浴室でヒステリックになりつつも、今度はシャワー用の蛇口を捻る。
ほとんど八つ当たりの様な態度で、シャンプーのボトルのポンプ部分を掌で数回押す。

ぴゅっ ぱたたっ。
勢い良く出てきた、とろりとした白いシャンプー液が、差し出した手のひらの上ではなく、的を外れて僕の腕や下にあった膝へと注がれた。
「……………」
なんとなく今の僕の目には、それがなんだかとても汚くみえた。日に焼けた自分の肌が、他人の。…汚された彼等の肌にも見えてしまって。
だけど、多分。
送って来たアイツの目には。
彼らの姿を、僕と重ねて見ていたんじゃないか。
「……っなに考えてんの、僕」

でも、じゃなければ。…あんな画像が載っているサイトのURLを、送ってくるだろうか。
ラブマシーンの一件で、世界中が混乱した際、OZの保管していた一部の個人情報が流出した。その中に、キングカズマ…池沢佳主馬のものもあったのかもしれない。
ぞくりと、背筋がうすら寒くなる。
シャワーを浴びながら、自身の体をまじまじと見やる。
細い、貧弱な体。どう見たって、女の子には見えない。
「…はぁ、最悪………」
がしがしと頭と体を洗い、適当に洗い流して浴室から出ていく。タオルで乱暴に水滴を拭き取り、さっさと着替える。

髪も乾かぬ内に、納戸へ戻りタオルケット一枚被って目を閉じた。

何も考えたくない。誰とも居たくない。

真っ暗な部屋で、最低と、また呟いた。


110 名前:かずま受け 5[sage] 投稿日:2009/08/24(月) 14:15:26 ID:???

「………………」
目が覚めた、朝だ。いや、もうお昼を過ぎているかも知れない。
どれくらい寝てたんだろ。ゆっくりと体を起こし、寝惚けた目を擦る。
誰も起こしに来なかった?ここに来て…一度もこんな事は、なかった。
「………んー…」

うーんと背を十分に背を伸ばした後、そっと立ち上がる。
すらっ、と戸を引く音を立てつつ外に出る。台所を覗いても誰の姿もなく、何の物音も聞こえてこない。
「……………なんで?」
この家に、誰もいない。物凄く奇妙な事だ。大勢の親戚が集まったこの家は、まるで最初からそうだと言わんばかりに、静けさを保ち続けている。
「……みんなどこに行ったんだ」
師匠や母さんが、僕に何も言わずに黙ってどこかへ出掛けるなんてこと、一度もない。

「………………」

少しだけ、不安を抱く。昨日あんなモノを見た後なだけに、自分たった一人だけ残されたのだと思うと、嫌な想像しか頭に浮かばない。
「………留守番してろっていうならそう言えばいいのに」
どうせ僕は出掛ける用事なんてないけど。
だけど部屋に戻って、パソコンをいじる気にはなれなかった。
顔を洗い、歯を磨き、髪をとかす。
そうしてる合間にも、頭に昨日の画像の事が思い出される。
「…はぁ、トラウマになってんじゃん」
台所に行き冷蔵庫から、買ってきて貰ってたファンタグレープのペットボトルを取りだし、キャップを外して口をつける。
炭酸が喉に流れていくのがキモチイイ。
「ぷは。………………」
誰の声もしない室内が、やけに居心地悪い。
「……散歩にでも行こっかな」
確か今日もスポンサー会社からバトルの要請が来てたけど。でも、約束の時間までまだ余裕がある。
留守番、なんていなくても、どうせ泥棒なんて来ないだろ。
来客があったとしても、僕、部屋から出ないし。
「……気分転換にはいいかもね…」

玄関にまで行き、自分のサンダルに足を引っ掻ける。
「…じゃ、ちょっと行ってきます」

誰もいない廊下に、声をかけた。

111 名前:かずま受け 6[sage] 投稿日:2009/08/24(月) 14:19:28 ID:???

夏の太陽の日差しは、じりじりと地面を焦がしていく。
蝉の鳴き声が木の上から降ってくる様に感じながら、僕はどこへ向かうでもなく、ただ足を進めている。
夏の暑さで、頭の中が空になるように。

ざっざっと地面を蹴って坂道を下って行き、あまり馴染みの無い小道に入る。
くねくねした道を奥へ奥へと進むと、見知らぬ一軒家が見えた。
「………廃屋?」
長い間忘れ去られていたんだろう。寂れたトタン屋根に、塗装がボロボロと剥げたコンクリートの壁。
ぼうぼうに生えた草むらの近くには割れた植木鉢が転がっており、人の住んでいた形跡を残している。あるはずの扉が取り外されており、ぽっかりと穴を開けていて、中の部屋の状態が丸見えだ。

「………こんなところ、あったんだ」
冒険心。男の子なら少なからず抱いているだろうその心が、僕を廃屋の中へと進ませた。
中に入ると、襖が取り除かれた部屋へと進む。野晒しになった床に汚れたカーペットが置き去りにされており、床に足跡が残されていて以前にも誰かがここに入った証を残している。
がらん、とした室内を、ガラスの割れた窓から入る日差しが明るく照らしている。
「まぁ期待はしてなかったけど。…やっぱり何も無いよね」

くるりと頭だけ動かして部屋を見回す。そして部屋を出ようと入ってきた方向に体を向けようとした時。じゃり、と砂を踏み締めた音が聞こえた。



112 名前:かずま受け 7[sage] 投稿日:2009/08/24(月) 14:23:26 ID:???



「ッ!!」
振り向き様に肩をどん、と思い切りどつかれた。思わず体制が崩れ、後ろに尻餅をついた。
「…何っ!?」

見上げれば、見知らぬ男が一人。黙ったまま僕の方を見つめている。
いささか小太りな男は着ているシャツがぐっしょりと濡れていて、彼から何か酸っぱい匂いがする。
その肌は長年日の下に出たことが無いのかと問いたくなる程に真っ白だった。
「…アンタ、何?どこの誰?」

この廃屋には全くそぐわない、異質な男を前に全身で威嚇する。
僕よりも背の高い、怪しい大人の男が一人。警戒しない方が無理だった。
男はだんまりを決め込んでいたが、…ぽそりと、呟いた。

……本物の、キングカズマだぁ。

「……………!!」

その名前を口に出された瞬間、背筋に悪寒が走る。
やっぱり。バレてる。
いつから付けてきた?まさか、家をずっと見張っていたんじゃないだろうな。
個人情報の流出。可能性はある。
だとしたら、相当ヤバい。
掲示板に綴られていた変態的な妄想の数々。全て、本物の僕に対する、本物の欲求なんだとしたら。
昨日のあのサイトの写真。あの情交に乱れた褐色の少年達の姿が目に浮かぶ。

「…ッ!!」
冗談じゃない!!震える体を無理矢理起こし、反対側にある窓へとダッシュする。
逃げるしかない。
ここは現実の世界だ。まだ筋肉も発達仕切れていない僕の体じゃ、大人相手に勝てるワケない。



113 名前:かずま受け 8[sage] 投稿日:2009/08/24(月) 14:26:36 ID:???

ところが、僕を見つめたまま動かなかった男が、僕の肩をグイッ!と強い力で引き止める。
「…っこのっ!!」
条件反射的に裏拳を奴の顔にがっ、とブチ込んだ。
「…ぎゃっ!!」

奴の手が僕の肩から離れ、自らの顔を覆う。その隙に。あの窓まで行ければ。
急いで体制を立て直し、出口へ向かう。
その時だった。

「…はい、だーめっ」
「くっ!!」

直ぐに後ろから小太りに抱きすくめられた。背中にしっとりと汗で湿ったシャツがぴったりとくっつく。ハァハァと荒い息が耳にかかる。
気持ち悪い。汗臭い。
「あっ…!?何すんだこの、」
変態。と罵ろうとした時。

する、と汗ばんだ手が僕の胸元に侵入してきた。
「…や、やだっ!」
さわさわと撫で上げる手から逃れようと身を引く。でも抱きすくめられているから、奴の胸に背中を自ら寄り添わせているみたいだ。
…それでも逃げようと奴の体に押し付けてしまう背中の腰当たりに、硬いモノが押し付けられた。
「………………!」
驚いて、声が出ない。荒い鼻息を繰り返しながら、男は僕の脇に手を滑らす。
「い、いい匂いがする。すっごくいい匂い」くんくんと鼻を僕の頭にくっ付け、無我夢中で髪の匂いを嗅ぎだした。
「……ぁ…や、だ…」
男が腰を擦り寄せてくる。硬いモノの感触が、布下から伝わってくる。
「こんなの、嫌だ………」
怖くて恥ずかしくて。涙が出てくる。
力の抜けた僕はろくな抵抗も出来ないまま、僕に欲情している男にそのまま押し倒された。


続く

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最終更新:2009年08月30日 08:34