413 名前:夏希と佳主馬1[sage] 投稿日:2009/08/21(金) 21:12:32
ID:LsUgsd/d
「今から佳主馬は私の彼氏役ね。じゃあ…よろしくお願いしますっ」
暗い納戸の中、きちりと正座をした夏希が三つ指ついて佳主馬にお辞儀をする。
そんな様子を見て佳主馬はふう、とため息をついた。
「姉ちゃん…とりあえずさ、意気込みはいいけど今どき彼氏相手にその姿勢は堅苦しいよね」
「そうかなあ?」
「…たぶん」
同級生の女子たちを思い出しながら佳主馬は返答する。
一括りにするのは乱暴かも知れないが夏希の潔癖症っぷりは、彼女たちが何かにつけ
男子は、女子は、と言うような幼さに通じるものがあった。
「そういうのが好きって人もいるかも知れないけどね」
…健二さんとか。
「?何か言った?」
「何でも」
「ふーん」
夏希はぺたりと足を崩し床に座り込む。
「手を繋いでもいい?」
「ん」
互いに差出し遠慮なく握りしめた。
ぎゅ、ぎゅ、と遊ぶように夏希が何度か握って開いてを繰り返す。
「なんだか懐かしい」
昔はよくこうして2人で手を繋いで一緒に歩いた。
414 名前:夏希と佳主馬2[sage] 投稿日:2009/08/21(金) 21:13:19 ID:LsUgsd/d
佳主馬は昔から大人しくてちょっと変わっていて。
自分が大おばあちゃんや侘助叔父さんに懐いていたように
結構な万助おじいちゃんっ子だったけれど
子ども達で遊んでおいでと言われれば、いつのまにかちょこんと側で
夏希の指を握りながら静かにこちらを見上げていたものだった。
「大きくなったなあ…」
その記憶の中の佳主馬と今の佳主馬を、しみじみと夏希は思った。
佳主馬の手は熱い。
未だ男、という感じは全然しない癖に手のひらの大きさはもう、夏希と変わらなくて。
続いた腕もやっぱりひょろりと細く頼りなげなのに、自分とは違う感触。
ーああ、佳主馬は男の子なんだ。
今更ながら夏希は心の中で呟いた。
どきり。
「ね、大分焼けちゃってるけど、日焼けあと痛くない?」
自覚した途端に少し跳ね上がった鼓動を誤魔化すよう話題を変えた。
「別に平気」
415 名前:夏希と佳主馬3[sage] 投稿日:2009/08/21(金) 21:13:46 ID:LsUgsd/d
…姉ちゃんはすごく白いね。
佳主馬はそう言おうと思って何故か口籠もってしまった。
室内の暗さに溶けるような自分の腕と比較して、ひかり浮かびあがるような
夏希の指の白さに佳主馬は目を引かれていた。ちょっと見とれていたと言ってもいい。
細くて白くてきれいでちょっとひんやりしている。
親戚の姉ちゃんの手、じゃなくて。
知らないおんなのひとの手みたいだ。
「…やだなあ、何か緊張するー」
相手、佳主馬なのに。
そんな事を考えた途端に夏希に茶化され佳主馬も心臓をごとりと動かす
「…ボクも」
「え?」
「ボクも何か、緊張する。姉ちゃんから、移ったみたい」
「え」
「……」
「ち、ちょっと佳主馬…やだ」
かあっ、と目の前で頬に朱を上らせる佳主馬につられて夏希も赤くなる。
互いに手を繋ぎどうしたらいいかわからず真っ赤になったまま、二人は黙り込んでしまった。