注意*
女性向け同人要素を含んでます。
15禁とか18禁とかではないと思います。
Venus黒ピン話です。
ウチのVenus君たちはこんなのじゃない!と思われた方、すみません。
Bassが眼鏡っ子なのはなぐさんの影響です。すみません。
大丈夫かとは思いますが、一応言っておきますと
「以下は自己責任でお読み下さい」。
正直まともな文章になっている自信がないです☆(←
それでは、駄文ですが。
呼び名紹介
Vocal:コク モモやコンは「クロ」と呼ぶことも。
Guiter:モモ
Bass:セイ
Drums:コン
言葉だけでは、疑ってしまう。
態度だけでは、怪しんでしまう。
だからこそ、信じられる「何か」を探して―――
the Side Story of "Venus"
『Kissing』
桃は恰好いい。
それでいて、可愛い。
そんな二面性を売りにできるのだから、本当に桃はすごいんだと思う。
「ふぃー、おわったおわった」
「今日もたのしかったなー!」
「おつかれさま。さっきファンの子からもらった差し入れがあるから食べようよ」
ライブのトリを飾った僕たちは、楽器や機材を持って楽屋に帰ってくる。
とはいっても僕はマイクだけなんで、大体モモやセイのエフェクターやらコードやらを持つハメになるんだけど。
セイはてきぱきと自分の荷物を片付けながら、もらったという差し入れの箱を開けている。多分セイのファンからの差し入れだろう。
ギターを肩にかけたまま、箱の中身を見たモモが感想を漏らす。
「お、三月堂の練乳クリームワッフルじゃん。さすがセイの追っかけ、セイの好みよくわかってんな」
「俺がこの前MCで言ったからかな?ってことは前も来てくれたんだねあの子。嬉しいなあ」
いつの間にか片付けも終わり、ライブ用のコンタクトを外して眼鏡をかけたセイは紅茶を用意しながら本当に嬉しそうに言った。
そのあたり、純粋だなと心から思う。
じゃあ、誰が純粋じゃないのか、って?
それは…僕と、モモだ。
誰にも言っていないが、僕たちは付き合っている。
…といっても男女ではないので、そう言っていいのかはわからないけど。
僕がモモを好きなのは間違いなくて、モモが僕を好きなのも間違いない…はずだ。
はず、にも理由があって、それは、
コンコン、楽屋にノックの音が響く。
「はーい」
一番ドアに近い場所に陣取っていたモモが自然と応対する。
ドアを開けるとそこには見知らぬ女の子。…14.5歳くらいだろうか?
「どうしたの?」
女の子とわかるとチャンネルを変えたように甘い顔で甘い声になるモモ。
…僕は、そんなモモが嫌いだ。
「あ、あの、その…」
女の子はモモの顔のほうを見ながらしかし焦点の合っていない目で、口ごもる。
…大方、モモのファンなんだろう。別のメンバーが出ると思っていたのにいきなり本命のモモが出てきてあせっている、とかそんな感じなんじゃないかと思う。
セイも同じことを思ったみたいで、
「君、モモのファンですか?その手に持っている紙袋はプレゼントのように見えるんですが」
とフォローを入れた。
ちなみにコンは練乳クリームワッフルに必死だ。6個入りなので2人は2つ食べれるな、と計算して2つ目に手を出している。
女の子は顔を真っ赤にして、
「は、はい、そうなんです!あの、これ、どうぞ!!」
と、結局返事と代名詞とどうぞしか言えないまま紙袋をモモに差し出した。
ガチガチに緊張している彼女とは違いこんなことには慣れているモモは、甘いマスクを崩さないまま笑顔でありがとう、と言って受け取る。
「そ、それじゃ失礼しま…」
「待った。せめてお礼くらいはさせてほしいな。キミ、名前は?」
「え、な、名前ですか!?あ、有馬由希です」
由希、と名前を復唱したモモが、さらに甘い甘い視線を彼女に向ける。
…僕は、そんなモモが嫌いだ。
「由希、ありがとう」
そう言うやいなや、右手で彼女のあごを寄せる。
モモは一瞬視線だけを僕に向けて
クスッ、と鼻で笑うと、女の子の方へ目を向けなおす。
…僕は、そんなモモが嫌いだ。
事態の飲み込めていない女の子の固まった唇に、モモは近づいていく。
「…!」
女の子は呆然と、そして次の瞬間には真っ赤な頬をしてモモの顔を見る。
そこには天使の顔をした桃髪の小悪魔がいた。
「可愛いから、特別サービス。他の皆には言っちゃダメだよ。
じゃあね。バイバイ」
はずかしさで立ち尽くすしかできない女の子を尻目に、ぱたん、とドアはしまった。
「モモ…また女の子をからかって。まったく、悪趣味ですね」
セイが咎めるように投げかける。ただし、半分諦め気味だ。
「からかってなんかねぇよ、サービスサービス♪いやぁ、人気者なのに俺ってファンサービス過剰だよなぁ。
ま、こういうことができるからこそ俺はVenusのアイドルの位置にいるわけだけど?」
モモはまったく悪びれない。きっと本気でそう思っているんだろう…実際、あながち間違ってはいない。
僕は、物静かでクールという面で売り出しているという理由もあって、あまりファンとの交流はしない。
だからこそ、たまに口を開くことが効果的だというのもわかっている。
コンはもともと屈託のない…悪く言えば、ちょっと子供っぽいところが年上に受けている。
ファンレターや差し入れをもらうときも本当に嬉しそうにお礼を言う。
セイはとても礼儀正しい。
セイの家のパソコンにはファンレターをくれたファンの住所録があって、毎回返信はできない代わりに、と季節の挨拶は欠かさず出しているそうだ。
そんな性格が幸いしてか、似たように礼儀の正しそうな、そう派手ではないファンが多い。
だが、一番ファンと近いのはモモだろう。
男子としても恰好いい、女子としても可愛い顔に加えて…あの性格だ。
さっきみたいに演奏終了後の楽屋とかならいいが、ライブ中に最前列の女の子とキスをした時は少し焦った。
そんな一歩間違えれば犯罪すれすれの傍若無人さだが、あの顔とギターに惚れた女の子にとってはそこも大きな魅力らしい。
…はず、とさっきいったのはモモのこの性格だ。
2人でいるときはベタベタとくっついてくるが、それは本当に僕の前だけなのか…少し、不安になる。
「でもほどほどにしときなよ、モモ兄ぃ。またモモ兄ぃが嫉妬した男に襲われるなんてことがあったら笑えないぜ?」
そう言ってコンは2つめの練乳クリームワッフルの最後の一口を口に押し込む。
「は、そんなやつがまたきても返り打ちにしてやるよ。…クロが。」
「え、僕?」
「だってお前、俺より全然強いだろ。期待してるぜ、俺のナイト様♪」
その言葉と同時に、モモが僕の耳にキスをする。
「…!」
さっきの女の子のように一瞬で頬が赤くなってしまいそうだったのを、セイとコンには気取られないように、と必死で抑えモモを睨み返す。
モモはあの天使の笑顔でこっちを見返して、嬉しそうに椅子に座った。
「だから、からかうのはやめなさいと言っているでしょう。さっきのコンの言葉ではないですが、何かあっても知りませんよ」
「はいはい、セイ様のお小言も聞きたくないしゆっくりワッフルでもいただくことに…ってコン、てめぇ勝手に2つ食いやがったな!」
「女の子相手にイチャイチャしてんのがわるいんだろー」
「う…うっせぇ!まぁ、流石にこれ2つは甘すぎて食えないからいいんだけどよ」
「コクも、そんなところに立っていないで食べましょうよ。美味しいですよ」
「あ、あぁ…ありがと」
「これを美味しいって言えるセイの舌がわかんねぇよ…」
「おや、美味しいじゃないですか。なんなら今度、一日50個限定の『三月堂謹製すみれ蜜練乳クリームワッフル』ご馳走しましょうか?」
「え、いや、いいわ…まだ砂糖舐めてたほうがましそうだ」
――――たわいのない話で、4人の時間は過ぎていった。
「それじゃ、コンを送って帰りますね。2人とも、あまり遅くならないように」
「じゃーなー、次の練習遅れんなよ!」
セイとコンが楽屋から出て行く。
残ったのは僕とモモだけだ。
モモが荷物をまとめる音が部屋に響く。
何かを言いたい、けれど何も言えない。
時計の針だけが、静かにくるくると回っていく。
「――で?」
モモが口を開く。
「何か、言いたいことがあるんじゃねぇの?」
「…別に。いつもの、ことだろ」
見透かされたようで悔しくなって、つい無愛想に返事をしてしまう。
「……………そうかよ」
「何、言いたいことがあるなら言いなよ」
ああ、だめだ。
わかっているのに、剣呑に返してしまう。
これは喧嘩になるパターンだ。どうせ僕が折れることになるのに。
「………」
モモは無言でこちらを見る。
僕はモモに目を向けずに、机に向かって楽譜チェックに勤しむ振りをする。
靴音が鳴る。
一歩、二歩、三歩、四歩…五歩めで、立ち止まる。
僕の手元に影が落ちた。後ろにモモが立っている。
それでも知らない振り。見ない振り。
何を考えればいいのかもわからないまま、
時計の針だけが、静かにくるくると回っていく。
「…コク」
モモが僕のことを「クロ」ではなくて「コク」と呼ぶのは、インタビューとかの公式の場か…大切な話をするとき、だけだ。
それくらいはわかっている。わかっているが、頭の中ではいろいろな感情が混じりあって、どういう返事をすればいいのかがわからない。
「何」
また、剣呑に返してしまった。何もわからないまま、つい。
「こっち、向けよ」
その声からは、上手く感情が読み取れなかった。
怒っているのか、泣いているのか、それとも特に普段と変わらないのか。
足を椅子の横に出して、言われたとおり顔をモモの方に向ける。
向けたときには、モモの目が僕の目と全く同じ高さにあった。
1秒、2秒、3秒…………10秒で、数えるのをやめた。
…というか、口の中がモモでいっぱいになって、数えている暇なんてなかったというのが本当のところだけれど。
少なくとも秒針が3週はしてから、唇は離れていった。
派手な色をしているというのに随分とサラサラの髪が僕の肩を撫でていく。
「…なんで」
モモが静かに口を開いた。
「…なんで、何も言わないんだよ」
怒って、いるのか?
何でモモが怒るんだ。
怒るのは僕だろう。
人の目の前で、わざわざ見せつける様に別の奴にキスなんかし――
「お前の目の前で!わざわざ見せつける様に別の奴にキスなんかしてる俺を見て!
なんで、なんで何も言わないんだよ!」
―――え?
血の上りかけていた頭がスッと冷める。
思っていたことを当てたかのように言われたのには、確かに驚いた。
だが、そんなことより。
モモの頬に引かれていく涙の跡に、思考を、止められた。
「お前はいつもそうだ!一歩離れて遠くから俺を見てる!」
涙の跡が増えていく。
「俺は、お前の、何なんだよ…」
モモは床に崩折れて、手を目に当てて、まるで小さいの女の子のように泣いている。
言葉だけでは、疑ってしまう。
態度だけでは、怪しんでしまう。
だからこそ、信じられる「何か」を探して―――いたのは、僕だけじゃ、なかったのか。
僕はずっと不安だった。
モモは、皆と近すぎたから。
でも、モモもずっと不安だったんだ。
僕が、一歩引いてしまっていたから。
「…ごめん」
口を衝いて出た言葉は、謝罪だった。
僕だけが不安だと思っていた。
僕だけが悩んでいると思っていた。
そんな自分勝手な行動に対しての、謝罪。
「ごめんね」
不安にさせてしまった。
悩ませてしまった。
そんなモモに対しての、謝罪。
崩折れているモモを、抱きしめる。
「コ、ク…?」
「ごめん、ごめん…!」
抱きしめる腕に力を込めながら、ただただ謝り続けた。
気づけば、涙が流れていた。
時計の長針が一周したころ。
コンコン、とノックの音が響いた。
20分近く2人で泣いて、それから20分はお互いを慰めあって。
そして最後の20分、言いたいことをしっかり言い合って。
前より一歩進めたな、とモモが笑って安心したように言った、その直後だった。
「はぁい、どうぞー」
誰だろうな?とごちてから、モモがドアを開けに行った。
モモの手がノブにたどり着く前に、カチャリ、としずかにドアが開いた。
「やっと言いたいことが言えましたね、2人とも。全く、2人して不器用なんですから」
現れたのは、セイだった。
セイがいることに、そしてセイのセリフにモモも僕も混乱する。
「は?え、ちょ、ちょっと待てよ!セイ、いつからいたんだよ!」
「やっとってどういうこと?そもそも、なんで僕たちのこと知ってるの?」
「そんなに一度に質問されても答えられませんよ、落ち着いて。
ちなみにいつからかと言われると30分程前から、やっとというのはそのままの意味、なんで知っているかと言われれば態度から想像がついていた、としか」
「答えられてんじゃねえかこのインテリメガネ!」
セイはモモの悪口にふふ、と微笑みだけで対応して
「それじゃ帰りますよ。近くに路駐しているんで早く用意してくださいね」
と言ってテーブルの上をさっさと片付けはじめた。
唖然としてモモの顔を見る。モモは諦めきった顔で言った。
「とりあえず、セイ様の言うとおりにしたほうがいいっぽいな…」
にこやかに片付けをするセイを横目にみながら、僕たちは2人同時に溜息をついた。
ということで、僕とモモは付き合っている。
セイには最初っからバレていたらしく、
「モモが女の子にちょっかいを出すたびに不器用だなぁと思ってました。モモが、でもありますし、その後に何も言わないコクも」
だそうだ。
未だにモモはファンサービス過剰なきらいがあるが、キスは決してしなくなった。
キスを許すのは僕にだけ、ということらしい。
僕は僕で、今回の件で反省して言いたいことをきちんと言うようになった。
そのせいで小さな喧嘩はなかなか絶えないが、大きな傷にはなりそうにない。
「あ、いい歌詞おもいついた」
「ん、どんなのだ?言ってみ?」
モモが僕の言葉を待つ。
僕は、モモの目をまっすぐに見つめて歌いだす。
――奪いたいほどに求め合えるなら 傷つけあったとしても構わない―――
最終更新:2009年11月28日 11:05