第八話
時間にしてわずか4〜5秒ほどの短い間・・・、たったそれだけなのだ。
その間に彼女の方は、うめき声ともあえぎ声とも判別のつかない微妙な声をあげ、
立ったまま大きくカラダを痙攣させていた。
ほとんど意識はなかったのかもしれないが、彼女は男の両腕を掴んで前のめりに倒れてしまった。
コスプレの格好をした紅かすみは逝ってしまったようである。
信者達が彼女をベッドに寝かせる。後はさっきの繰り返しだ。
続いて十六夜はるか、髪型や立ち居振る舞いからして裕福そうな中年の主婦、
30代くらいのやはり上品な感じの女性。
全員確認できたわけではないが、ほとんどの女性が太ももを濡らしたままベッドに寝かされる。
薬物だけでここまでなるか? 演技には見えない。 何らかのトリックを使っているのだろうか?
・・・全ての儀式が終了し、司会の女性が「神魄通気還」の説明に入った。
「皆様、ご覧になりましたでしょうか・・・!
ほとんどの方は何が起きたかお分かりにならないかもしれません。
彼女達は、今、『天聖上君』様から宇宙の官能エネルギーを与えられたのです。
もちろん、これは誰にでも受け止めることができるものではありません・・・。
敬虔なる信仰と誠実なる修行を納めたものが、『聖魄通気還』を受け、
カラダを清廉なものに変化させていきます。
そして完全に清浄な心身を獲得したものだけが、この最高の奥義、
『神魄通気還』で、地球上では決して手に入れることのできない、
大いなるパワーを体内に循環させることができるのです・・・!」
受光式が全て終了した後も、会場の熱気は凄まじかった・・・。
「さくら」も混じっているのだろうが、特に新人信者や一般客の入会受付、勢いが凄い。
周りでも入会しようかどうしようか、他人の様子を伺いながら迷ってるものも大勢いる。
もちろん日浦義純は、これ以上このイベントには用がないので、帰る身支度をしていた。
・・・その時である。
会場で後片付け用にスイッチをつけたままだったと思われるスピーカーから、
まるでその場にそぐわない、小さな女性の声が聞こえてきたのだ・・・。
「・・・(ザーザザ・・・) もしもし、わたし・・・メリー・・・(ザザ・・・)
今、この町にいるの・・・」
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最終更新:2007年04月16日 11:04