第十話
「ただいま〜。」
「あっ、お疲れ様です、所長、受光式どうでした?」
「・・・いや、すごかった。・・・もぅ、下手な風俗産業も敵わないね。」
とりあえず、義純は見てきたことを所員に話した。
依頼そのものは、「騎士団」のダミー会社からの、
正式な依頼と部下に断っているので何ら問題は無い。
「それで、岡崎君、君のまとめてくれたニュースの方は?」
「ハイ、こちらです。・・・やっぱり、公式には事故や自殺扱いになってますけど、
教会が原因なのは間違いないみたいですねぇ・・・。」
そう言いながら、岡崎と呼ばれた所員は、ケースに入ったファイルを義純に手渡した。
「・・・家族の金をお布施や献金に使って、挙句の果てに傷害致死、一家離散・・・、
酒が飲めないはずの信者幹部が酔って交通事故死・・・、信者監禁疑惑、
娘を説得に行った父親が行方不明・・・。 今のところ、警察も大々的には動いていない・・・と。
・・・叩けばいろいろ出てきそうなんだけどねぇ・・・。」
そう言う義純に、部下の一人が恐る恐る口を開く。
「・・・でも、所長・・・あんまり危ないのは・・・。」
「あ〜、分ってる、やりすぎると君らも危険だもんね、大丈夫、あくまで調査が依頼だからね、
あ、もうこんな時間だ、他に引継ぎはあるかい?
オレはこの件の整理と報告があるから事務所にまだいるけど?」
時計は七時を過ぎていた。その後20分ほどで、部下達は全員それぞれの自宅へと帰っていった。
義純は、今日見てきたこと、教会の主な活動暦、事件との関わりの噂、
その可能性などをまとめ、定例報告の形で、
自分が所属する騎士団本部(のダミー会社)にメールを送った。
・・・それにしても・・・、
彼は一息ついてコーヒーを入れようとしていた。
お気に入りはマンデリンだ。
「ありゃぁ、何だったんだ・・・?」 昼間、衝撃的なものをあれほど見たにも関わらず、
彼の意識には、帰りに出会った不思議なものが頭から離れなかった・・・。
そんな時である、突然一本の電話が鳴った。
・・・こんな時間に?
彼は不審に思いながら、ゆっくり受話器を手に取る。
「もしもし? 日浦総合リサーチですが?」
・・・受話器からは、馴染みのない女性の声がした・・・。
最終更新:2007年04月17日 11:32