第十一話
・・・女性の声は英語だった。
『ハ〜ロゥ?』 ちょっと甘ったるい感じの声だ。・・・どこかで聞いた気もするが。
ここからは全て日本語訳で彼らの会話を追う。
「もしもし? 私は責任者の日浦義純ですが・・・あなたは?」
『あら、当りぃ? "愚者の騎士" ヒウラ! わたし、誰だか分るぅ?』
・・・ちょっと待て、「愚者の騎士」は「騎士団」内で使われる俗称だ。
今回の依頼のダミー会社でも、女性スタッフはいるが、
彼女達もその内部についてはほとんど知らされてないはずだ。
いや! 一人だけ記憶にある・・・。
日浦は思い出した、
女性の身で騎士団内部に出入りできる、若く病的に美しい女性がいる事に・・・。
「・・・もしかして、フェイ・・・マーガレット・・・ペンドラゴン・・・お嬢様ぁ!?」
『ワーォ! 大正解ぃ! でもね、フルネームも"お嬢様"も必要ないわ、
マーゴ! って呼んでよね、ヒウラ♪』
くわぁ・・・。 
日浦はこの女性が苦手であった。別に彼女が嫌いとか女性蔑視ではない。
まずは、彼女が騎士団最高指導者の娘である事。また、騎士団の有資格者でないにも関わらず、
彼らに理解しづらいオカルティックな能力と知識を持っている事、そしてその奔放な性格、
それ故、保守的な騎士団の人間にとっては、なるべくなら彼女には近づきたくはない・・・、
というのが本音であった。
「・・・て、お嬢・・・いえ、マー・・・ゴ? なんで君がここに電話を?」
『何でかしらねぇ? てのはうっそ! わたしがあなたの担当になったから!』
マジッすか・・・。
「え、でも君は騎士団の人間じゃ・・・」
『そうよ、でもわたしの能力は円卓会議でも認められているわ、
団員と同じ資格は持ってないけど、
あらかじめ認められた事については、団員同様に動けるってわけ!
おわかりぃ?』
あまりのショックにコーヒーを飲むのも忘れていた。気を落ち着ける為、コーヒーをつぎに行く。
「・・・そうか、君もケンブリッジ卒業したんだよな、
・・・じゃぁ今度のカルト教会の話もあらまし、聞いている訳だね?」
ようやく冷静に会話できるようになってきた。今日はショッキングな事が多い。
最終更新:2007年04月17日 11:42