『ヒウラは口から何かが流れているのを見たのでしょう?
 ・・・もし、トリックでなければ、古い魔術の可能性があるわ。』


第十三話
「おっ、さすがは『ウェールズの魔女』、目の付け所が違うね?」
これも騎士団内での彼女の俗称、彼女はオカルティズムの専門家で、
なおかつ学生時代に、
彼女の美貌に惹かれて多くの男達が破滅したのでこう呼ばれるようになった。
『ヒーウーラーぁ♪ 今度は私が怒るわよぉ? でもね、事の真贋はともかく、
古いドルイド系の呪術にも口を使った魂の交換術みたいなものがあるのよ。
教祖はそれを知ってるのかしらねぇ?』
「・・・ごめん、マーゴ。
 ・・・そういえば、教祖は日本人ではなさそうだったな、
未だに彼の前歴は調べられていないんだけど、
その辺に彼の出自があるのかもしれないな・・・。」
『ふぅーん、・・・他に何か、気づいた事は?』
「ん〜、後は・・・音響か、無臭の気体か何かで、幻覚作用か何か起こせる・・・
てことはないかな?
酒を飲んだ信者は勿論だけど、僕にも変なものが見えたり聞こえたり・・・したかも。」
『大丈夫ぅ? 何を見たの?』
「ん、大した物でもない・・・、儀式で見た口から流れる気体・・・以外には、
帰り際、道路で変な生き物を見たとか、誰もマイクを使ってないのに、
スピーカーから『メリー』っていう女の子の声が聞こえてきたり・・・ぐらいかな?」
『 ・・・メリー・・・?』 しばらく電話口で間があったが、突然マーゴの口調に変化が現れた。
『待って? その声は何て喋ったの? 詳しく説明して!』
突然のマーゴの真剣な口調に戸惑いながらも、あの会場で聞いた言葉を思い出す。
「おいおい、どうしたんだよ? えーと、確か『私メリー、いま、この町にいるの』・・・だったかな?」
『・・・ヒウラ・・・、もしかしたらあなた・・・会場に戻った方がいいかもしれない・・・。』
「ええっ? 何言ってんだよ、マーゴ。そっちは昼かもしれないが、こっちはもう、夜だぜ、
どうしたって言うんだよ?」
最終更新:2007年04月17日 12:03