『ごめんなさい、確証はないし、私にあなたを動かす権限はないのは百も承知だけど、
騎士団内におかれた私の役割を考えると、あなたに見に行ってもらうしかない・・・
という結論になるの。』
「待ってくれよ、せめて理由を教えてもらえないか?」
『・・・そうね、その通りだわ、なるべく簡潔に話すわね・・・。』


第十四話
『いま、ファイルを調べるから、・・・ちょっと・・・待っててね・・・ああ、これこれ・・・。
いい? まずね、
騎士団には世界中からいろんな情報、軍事・政治・経済・宗教・・・裏側も含めて、
いろんな情報が集まってくる・・・なんてのは極東支部長のあなたには不要の説明よね。
中には、世間を騒がした猟奇事件や、未解決の事件なんてのもあるわ。
日本からもあなた以外の情報員から、情報のランクによってはあなたを通さずに、
直接騎士団にあげられる物もある。』
「アヴァロン情報システムだな、勿論わかっているよ。」
『そうよね、それでね、日本警察内部にいる騎士団員が流してきた未解決殺人事件の中に、
この"メリー"って単語が含まれているのよ。』
「何だって・・・!?」
ようやく義純にも、事の重大性を認識してきた。
『・・・情報は二件あるわ、一件は中国地方で起きた暴力団員の連続殺人。
もう一件は・・・これは有名じゃない?
東北の県議会議員が、自宅の大勢の護衛と共に、殺されてしまった事件・・・。』
覚えている・・・数年前、大騒ぎになったヤツだ、犯人は未だ見つかってないはずだ。
「・・・覚えているとも、それで・・・『メリー』・・・てのは?」
『両方の事件に共通するのは、殺害手段。
 ・・・鋭利な刃物によって、頚動脈を切り裂かれたり、首を刈り取られたり・・・、
それと現場に落ちてる石膏の破片、彼らが所持する通信媒体に、
殺害直前の非通知の着信記録・・・。
それとね、
暴力団員のほうは、殺害直前に送られてきたファクシミリに"メリー"の文字、
県議会議員のほうは、現場に居合わせたルポライターが、殺された秘書の携帯から、
"メリー"という女性の声を聞いているわ・・・。』
義純の背中に冷たいものが走る・・・。
最終更新:2007年04月17日 12:14