再びマーゴが奔放モードになった。
「君は昔から綺麗だよ、でも迂闊に誘うとパパ君ににらまれるからねぇ?」
『・・・んもぅ、みんなそう! パパの事なんか気にしなくていいのにぃ!』
違う、それは口実。みんな振り回されたくないだけ・・・と言いたいのを義純はぐっとこらえた。
電話を切ってすっかり冷めてしまったコーヒーを飲み干す。
事務所を出て車に乗る。
ダッシュボードには護身用のナイフ・・・万一に備えて。
そして再び教会本部へと彼は向かった。


第十六話
この時間はO市方面もまだ車は結構流れている。
しかしバイパスを降りる頃には、元々この辺りは民家も少ない事もあり、
ようやく車の量は減っていった。
・・・だが少々気がかりなことがある。
・・・先ほどからパトカーが多い・・・。
しかもそれは、義純が向かう教会の方角と一致している。
対向車がほとんどいなくなるようなところまで来たとき、
カーブのところで、一台の女性が運転している赤い軽自動車とすれ違った。
一瞬、義純の車のライトがドライバーを照らした時、
(まさかあの人形が!?) とも思えたが、自分の気弱な妄想にあきれ返った。
・・・普通の女性だ。
ただ、教会の信者かも知れない可能性は十分にあった。いわゆる在家も相当いるだろうし・・・。
しかし、教会への坂道を登っていくに従って、彼の嫌な予感はどんどん確実性を増していく。
警察の車両が何台もダイナスティの教会本部に集まっていたからだ。
義純は昼間、車を停めた所と同じ場所に車を停め、
既に「立ち入り禁止」のロープが張られているギリギリの所まで近寄った。
「すいません! 何があったんですか!?」
義純は近くで、パッと見、一番偉そうな人間に聞いてみた。
「何だね、オタクは? この教会の関係者?」
「いえ、昼間ここのイベントを見学したものです。興信所を経営してます。」
喋れることはガンガン喋る。そのほうが手っ取り早い・・・というのが義純だ。
「・・・興信所? 探偵さんか何かかい? ・・・なら聞きたいことがたっぷりあるんだがね、
とりあえず大量殺人・・・、とだけ言っておくよ・・・。
まずは名前と電話番号、聞かして貰えるかね?」
最終更新:2007年04月17日 12:35