「私・・・メリー、 愛する娘を救えずに・・・無念のまま殺された父親の魂に安らぎを・・・!」
彼の脳裏に、幹部達と共に生き埋めにした、女性信者の父親の姿が浮かび上がる。
だが、後悔しても既に手遅れだ・・・、
その父親の命はもう、戻ってこないのだから・・・。
「ヒ イ イ イ ッ ! 小 伏 様 ー ッ ! ! 」
メリーの死神の鎌はゆっくりと児島の咽喉元に当てられ、
・・・何の躊躇いも無く一気に汚れた彼の命を引き裂いた・・・。
残すは・・・赤いフードの男のみ。
第二十三話
メリーの目には廊下の脇の階段が映っていた・・・。階下へ続く階段、階上へ続く階段・・・。
一階からは、騒ぎを聞きつけた他の信者達のざわめく声が聞こえるが、
数々の悲鳴に怯えて、上にあがってこれない・・・、彼らは幸運だ・・・。
最後のターゲット「天聖上君」小伏晴臣は上の階にいる・・・、
メリーはゆっくり、ゆっくり、階段を昇っていった。
階段の昇った左側には、給湯室とトイレ・・・人の気配は無い。
右側の奥には社長室だが、手前に応接室と小会議室が並ぶ広めの通路がある・・・。
メリーはそこで二人の人間の気配を感じ取った・・・。
ゆっくりと通路に出る・・・、待ち構えていたのは半裸の状態で通路を塞ぐ二人の女性。
「そこまでだ! 邪悪なる者よッ!」
張りのある甲高い声で叫ぶは「紅かすみ」。
左手に剣を持ち左足を前にする。剣の切っ先はメリーに向けられる。
「人に非ざる者よ! ここから先へは進ませないッ!」
湿感のあるくぐもった声の「十六夜はるか」。
右手に剣を持ち右足を前にする。同じく剣をメリーに向ける。
本物の剣のようだ・・・。
背中合わせになった紅かすみと十六夜はるかは、アニメのキャラクターのように口上を続ける。
「紅かすみの流舞の剣!」 「十六夜はるかの天狼の刃!」 ・・・そして二人同時に・・・、
「我ら、『天聖上君』様を守りしホーリークルセイダー! 聖なる光刃、直撃するが良い!!」
彼女達は本気だ・・・、洒落や冗談でふざけてる訳ではない。
実際のところ、感情を持たず、
殺戮モードになっているメリーに話しかけることにあまり意味はない。
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最終更新:2007年04月18日 07:31