もっとも彼女達にしても、心の底から定着したスタイルなのだろう、
普通の神経なら、人形のメリーを見て動揺しない方がどうかしている。
彼女達は完全に教祖の洗脳の支配の下にいた。
ダイナスティの教義によれば、
教祖小伏晴臣は宇宙の救世主、常に魔界の尖兵に命を狙われる立場・・・、
今のこの状況は、常日頃から危ぶまれていたことが現実になっただけの事である。
そして、一度そのような事態が起きれば、命を賭けて戦う事が彼女達の使命なのだ。
一方メリーの方では、彼女の復讐の対象に目の前の二人は含まれていない。
だが、最後のターゲットに向かうのに、彼女達の存在は障害だ。
呪われた人形・メリーは攻撃態勢に入った。


第二十四話
メリーの鎌が空気を切り裂く! アラベスク文様の装飾された死神の鎌だ。
右から十六夜はるかの肩口を狙う。
だが、彼女達には恐怖が薄いせいか、そのメリーの攻撃に的確に反応する。
常日頃の修練の成果だろう、変則的な鎌の動きには、対応するのもやっとだったかもしれないが、
十六夜はるかの剣は、メリーの鎌の攻撃を弾いた。
・・・紅かすみはその間隙を逃さない。
鎌が弾かれて、メリーの動きが一瞬静止した瞬間に、飛燕の如くその剣を走らせた。
攻守一体絶妙のコンビネーション。
紅かすみの手には確実な手ごたえがあったが、
それはメリーの黒いドレスを切り裂き、石膏の胸を傷つけただけだ、
人間相手なら勝負は決まっていたかもしれない・・・。
メリーはすぐには反撃しなかった。
いまや挟まれた形になったメリーは、
そのグレーの瞳をギョロギョロ動かし二人の力を分析していた・・・。
基本的にメリーの闘争本能に「防御」は存在しない。
また、直接の復讐のターゲットでない相手では、彼女の力は最大には発揮できない。
もしメリーを倒そうというのなら、付け入る隙はそこにしかない。
・・・だがそのメリーの不利的条件をさっぴいても、
彼女達「ホーリークルセイダー」の能力は尋常でなかった。
 生身の女性のカラダで、メリーの鎌を弾く・・・?
 メリーの胸を砕いた剣の鋭さは・・・?
 「・・・はるか! この化け物を切ることはできないッ! 手足を砕くか・・・頭を破壊するか・・・ッ。」
最終更新:2007年04月18日 07:41