「わかったわ、かすみ! まずは行動不能にするわけねッ!」
メリーの頭越しに二人の会話が飛ぶ・・・、実際その戦法は有効かもしれない。
メリーの方も、彼女達の能力が外見以上の物である事は今の一瞬で理解した。
それが薬物による影響なのか、それ以外の物なのかは、メリーにとってはどうでもいい。
紅かすみが剣の柄を握りなおす・・・そしてそれは攻撃の合図だ!
 「 ヤ ア ア ア ッ ! ! 」
二人同時に切りかかるッ! 紅かすみはメリーの左肩! 十六夜はるかはメリーの右手首!
タイミング・踏み込み・角度・狙い・・・全てが賞賛に値する攻撃だった!
だが、ここで彼女達の予想外の行動をメリーは取る。
メリーはそのグレーの瞳を、
二人から何の興味も失せたかのように外してしまったのである。


第二十五話
確かに強化された彼女達の攻撃を、
二・三回受けたとしても、メリーは止まらなかったかも知れない。
だがあくまでも、メリーが考えたのは「攻撃」である。
メリーはよけることも防御することも考えない。
そしてその躊躇いの無さが、驚異的なスピードを生み出すのである。
メリーは正面の壁に向かって突進・・・そして重力を無視するかのように壁を駆け上り・・・
さらには天井さえにもそのか細い足を到達させる・・・!
そのメリーの稲妻のようなスピードと、彼女達の予想と想定を裏切った動きは、
彼女達ホーリークルセイダーの視界から、完全にメリーの姿を消失させてしまった。
二人の剣が虚しく空を斬る・・・、
ほんの一瞬メリーの姿を見失ったことにより、次への動作が遅れてしまう・・・。
 そ の 隙 を 狩 る 者 は 見 逃 さ な い !
メリーが天井に足を触れたのは、ほんの一瞬だった・・・、
その一瞬に足首をバネのように伸縮させ、更なるスピードで眼下の獲物に襲い掛かる!
視界の外から高速の速さで振り下ろされる鎌を防ぐすべは無い・・・。
信じられないスピードで落下してきたにも関わらず、メリーは音も無くフワッ、と着地した・・・。
・・・ホーリークルセイダー、紅かすみの顔が白目をむく・・・
メリーの姿を探して顔を上方に向けた直後だった。
そしてその無防備になった咽喉からは鮮血が噴出した・・・。
最終更新:2007年04月18日 07:53