胸に飾られていた数珠がバラバラと床にこぼれ落ちる。
胸を露出させた痩身の女性は、力なく廊下に崩れ落ちる・・・。
 「かすみーッ!!」
メリーは着地した時のしゃがんだ態勢のまま、だが、勿論戦闘態勢は解除してはいない。
十六夜はるかは逆上して、しゃがんだままのメリーに剣を振り上げる。
メリーの目がぎょろつく。
神速の動きを以って迎え撃つ、それは発射された弾丸の様な跳躍だ。
鎌の柄の先端は、剣のつかを握るはるかの右手首を砕いた!
息つく暇も無く、小さい円を描くような軌跡でその鎌は、
無慈悲にもホーリークルセイダー、十六夜はるかの首を跳ね飛ばした・・・。
大きな音を立て、彼女の豊満なボディが冷たい床に揺れる。
所詮どんなに訓練を積もうとも、人間相手を想定した動きでは、
数々の処刑を執行してきた呪われた人形メリーの敵、足り得なかったのだ・・・。


 第二十六話
もはや邪魔者はいない・・・。
直接、社長室のドアを開けても良いのだが、
ターゲットには真正面から当たらないのが彼女の流儀だ。
メリーは手前の応接室のドアを開ける。
社長室では、赤いフードのローブに身を包んだ小伏晴臣が静かに佇んでいる。
・・・ホーリークルセイダーの勝利を信じているとでも言うのだろうか?
メリーは応接室の天井に、配電設備や、
いろいろなパイプが走っている天井裏への出入り口を見つけた。
もはや急ぐ必要は無い・・・、この館に侵入した時と同じように、ゆっくり壁を這い登る・・・。
紋様のある死神の鎌は、あごの下で支えることもできる・・・。
壁から天井に移るときや、出入り口に入る時だけ持ち替えればいい。
関節を、人間では考えられない角度に曲げながら、メリーはゆっくり、天井裏に忍び込む。
・・・方角も間違えることも無い。
それでも一分とかからなかっただろう。メリーは社長室の天井の出入り口を簡単に見つけ、
一切の音もさせずに、天井の出入り口の蓋を開けた・・。
その位置は社長室の大きな机の斜め後方・・・教祖小伏晴臣の座る斜め後方でもある。
全ての条件が整いつつあった・・・。
メリーは、天井から垂れ下がるように、関節を一つずつ延ばしていく。
伸ばした鎌は今にも床に届きそうだ。
最終更新:2007年04月18日 08:01