第一話
 「先輩! ヤベェっすよ、テレビ見ました? あの事件の事・・・」
先輩と呼ばれた男は、首を鳴らしながら、めんどくさそうに応えた。
 「ボケェ! 真二ぃ! 証拠はな〜んも残しとらんじゃろぉ?
 どんだけニュースになろうと、ばれやせんて・・・。
 たくのぉ、あのクソアマ、
 おとなしくゆーこと聞いとりゃー、火だるまになることもなかったのにのぉ。」
・・・数ヶ月前、一人の少女が行方不明になった・・・、
警察の必死の捜索にもかかわらず、消息はつかめていなかったのだ。
ところがつい先ごろ、犬を散歩中の男性が、湖に浮かんだ少女の死体を発見したのである。
死体が腐乱していたためか、石の重りが外れたと見られている。
そして、警察の発表によれば少女は生きながら顔を焼かれたらしい・・・。
 「たく、アホが、クスリの運び屋なんて楽な仕事じゃろが・・・、それより真二ぃ、
 余計なとこで口滑らさんとけよぉ、そンときゃおどれが水の底やぞ! ええな!」
真二は高校を中退して以来、ずっとこの男についてきた。
彼に逆らうマネは決して取らない。
 「だ、大丈夫っす、オレを信じてくださいよぉ・・・ん? 先輩、ケータイ鳴ってますよ。」
 「ん? おお・・・あーこれか? お? 誰じゃ・・・非通知?」
男はいぶかしがりながらも携帯を耳にあてた。
 「おー、誰じゃ? ・・・もしもし」
携帯からは、小さく、しかしはっきりとした女性の声で、彼の耳に届いた。
 『わたし・・・メリー   』


最終更新:2007年04月14日 12:31