第二十八話
「・・・あれから・・・どれぐらいの年月が過ぎたのかぁ・・・?
150年? そう、そぉれぐらい経ったのだねぇぇ・・・?」
メリーの人形のカラダは、まるで人間と同じ反応を示すようにブルブル震えだした・・・。
そのグレーの瞳には、もう恐怖の色しかない・・・。
「・・・思い出してくれたかぁい? あんなにわたし達は愛し合ったよねぇ?
来る日も来る日も君のカラダに、わたしはわたしの精を注ぎ込んだぁ!
君は一滴残らず受け止めてくれたじゃぁないか・・・!?」
いいや! あの生きながらの地獄! 生きながらの激痛!
・・・誰も助けに来てくれない永遠の絶望!
メリーの心は完全に恐怖の記憶で金縛りのようになる。
小伏晴臣は・・・いや、すでにこんな偽名はどうでもいい、
彼はゆっくり、その手のひらを、メリーの流れるような美しい髪に差し入れた。
メリーは、ビクンとカラダをのけぞらせて反応する。
「相変わらず作り物とは思えない・・・本物の人間の髪じゃぁないかね、これはぁ・・・?
本当に苦労したよねぇ、・・・あの山奥の田舎の湖でこのカラダを見つけたときには、
天からの贈り物だと思ったよぉ! 運命の出会いだとねぇ・・・!」
男はもう片方の手でメリーのか細い腕を肩口に向かって撫で上げる。
「・・・ほぉ〜らぁ、エミリ〜ィ、捕まえたぁ!」
彼は滑らかな人形の白い素肌・・・薔薇の刺繍のドレスの触感・・・
全てを味わうようにさすりだす・・・。
服の上から胸のふくらみを撫で回し、長い髪の間に入れた腕は、
そのまま肩にまわして人形の背中を荒々しく抱きしめた・・・、
人形のカラダに完全に欲情しているのだ。
メリーは150年前と同様にその瞳に拒絶の意思を示すが、この男には全く無意味な反応だ。
「・・・折角、素晴らしいカラダを見つけたのにぃ、
そこに宿っているマリーの魂はほとんど消えかけていた・・・。
いや、否! 消えてはいない・・・まだ十分な魂の量だったぁ・・・、
だがわたしにはそれを呼び起こすやり方を知らなかったのだ・・・。
わたしは人里離れたところに住んでいたからねぇ・・・!
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最終更新:2007年04月18日 08:35