わたしは与えられた・・・虐げられた哀れな者達の、
・・・彼らの安らぎを願う為の・・・この鎌を・・・。
わたしは与えられた・・・汚れた命を狩り取る神秘の鎌を・・・。
   そうだ、
わたしは与えられた・・・この鎌を、 ・・・わたしの「メリー」 の名と共に!!)
メリーは魂の奥底からの叫び声をあげた!

  「違う・・・! わたしの名は・・・メ リ ー ッ ! ! 」


第三十一話
その瞬間、呪縛が解けたかのように人形の四肢に力が戻った!
ほんのわずかな力であったが・・・。
それでも、反抗できるはずがないと、タカをくくっていた赤い男を驚愕させるには十分だった。
メリーは赤いローブの男を突き飛ばし、カーテンで閉じられた窓に向かってダッシュした。
・・・最後の力を振り絞る・・・!
アラベスク文様の装飾をされた死神の鎌を、力いっぱい振り回して・・・
  ガシャアーンッ!
耳をつんざくようなガラスの破壊音の後、
メリーは自分が作り上げた空虚な穴へカーテンごと飛び込んだ。
・・・三階からの落下・・・。
殺戮モードではない普段のメリーでも、いつもなら難なく着地できただろう・・・、
だが、今のメリーにはその力さえも既に残っていなかった・・・。
    ・・・鈍い衝撃音が響いた・・・
    ・・・白く・・・美しい人形のボディが砕けた・・・
    ・・・メリーの意識が薄くなってゆく・・・
    ・・・ここで倒れては・・・いけ な   い・・・
カラダのパーツは四散していないものの、
駐車場の暗い地面に、いくつかの関節が砕けてしまっている。
赤い男はゆっくりと窓からそれを見下ろした・・・。
「・・・あ〜あ〜、しょうがないねぇ〜、久しぶりだからご主人様を忘れてしまっているのかぁい?
だけど・・・これからゆうっくり調教してあげるからねぇ? エミリ〜ィ・・・・・・うん?」
その時、男は目を見張った・・・!
既に辺りは暗くなっており、はっきりと彼の目には映らなかったが、
近くに停めてあった赤い軽自動車から、突然女性の影が姿を現したのである。
その女性は、メリーと鎌を抱きかかえると、グラグラよろめきながら自分の車に戻っていった。
最終更新:2007年04月18日 09:15