第二話
 「あ? なんじゃい、お姉ちゃん、この電話、誰に聞いたんじゃ?  ・・・お?」
通話はすぐに途切れたようだ。
 「先輩、何すか?」男は不機嫌そうに携帯を閉じた。
 「分らん、『お客さん』かものぉ、ワシんとこには直接かけんことになっとるんじゃが。」
彼らの世界では、分業は徹底されている。捕まるリスクを最小限に抑えるためだ。
だが、彼らはまだ気づいてなかった、
警察や同業の犯罪者より、もっと恐ろしいものに見つかったことを・・・。

二時間後、兄貴分の男は事務所を出て、自宅へ帰ろうとしていたカーラジオをつけた時、奇妙なノイズに気づいた。
 『・・・道路状況です・・・国道○号線では、事故処理のため・・・ジジ・・・
キュィ〜ン・・・』
 「ん? 変じゃのう、このあたりの電波は、入りがええはずじゃが・・・」
その時、彼は耳を疑った・・・ラジオのスピーカーから、聞き覚えのある声が流れたからだ。
 『・・・もしもし、わたし・・・メリー 』
反射的に男はブレーキを踏んだ。後ろの車が肝を冷やしたようだが、知ったことではない。
むしろ、飯の種だ。残念ながらというか、車は無事だ、だがそんなことはどうでもいい。
ラジオは、元の放送に戻ってる、携帯は今は鳴ってない、着信の記録もない。
 なんじゃ・・・?
待ち伏せや闇討ちなど、彼らの世界では珍しくない。
だが、今起きてる不可思議は、暴力的なにおいは感じさせなかった。
それゆえ、まだ、彼は落ち着いてたのだが、
自分のマンションに着いた時、彼の心に恐怖と言うものが芽生え始めた・・・。
自宅の電話にメッセージとファクスが届いていた。
まさか・・・
ファクスには「わ た し メ リ −」


最終更新:2007年04月13日 07:16