第四話
・・・気味の悪い像だ。しかし爺さんは誇らしげだ。
「いいか? トーマス! これはな、シャルヴァというペルシアの古い神様でな、
何でも願いを叶えてくれるんだそうだ。 んん? わしのような老いぼれには、
悪霊除けのお守りよりも、こっちの方が役に立ちそうだったんでな。
ワッハッハッハー、 ・・・んーどうしたトーマス? 顔が青いぞー?」
冗談じゃねーや・・・と思いながら、無理に笑みを浮かべて聞いてみた。
「き、効き目はあったのかい?」
「あっただと? トーマス、よーくお聞き。
わしがこの村へ帰る途中、カラダを壊してな、わしももう年じゃしもう駄目かなー、
でも生きてこの村に着きたいなー、
と思ってこいつに頼んだら、なんと次の日、宿に医者が来おったんじゃあ。」
トーマスは思いっきり当てが外れてしまった。
しかしそれでも、こいつを手に入れて、「僕を守ってください」と、頼むことにしようと決めた。
かなり不安だったんだけども・・・。
ついにその日がやってきた。
トーマスはしっかり例の像をくすねてきていた。
明日の朝は全員父親に殴られるのはおおよそ間違いない。しかし勝負に勝てば英雄だ。
「ヤーコブ、やめるなら今のうちだぜ、親父に怒鳴られるだけで済む。」
「そ、そのセリフ、そのままお前に返すぜ、フィーリップ! こんなかじゃ俺が一番速いんだ。
やるだけお前は損だぞ!」
スタート地点は村から5km程離れた所からである。
既に日は沈み、冷たい冬の風が吹き荒れ始めていた。
「さあ、いよいよスタートだ。ルールを確認するぞ。俺たちはこれから全員バラバラに森に入る。
ルートは自由。目的地には犬の頭蓋骨が置いてある。先に手に入れ、
村に戻ってこれたらそいつの勝ちだ。先を越された奴は卑怯なマネをしないこと。
いいかー?」
「俺はいつでもいいぜー、トーマス。」 「お、おれもー!」
「よぉーし、せぇーの、・・・スタート!!」
・・・こうして、数時間後には洒落で済まなくなる、最悪の肝試しが始まった・・・。
最終更新:2007年04月20日 05:50