第五話
 「・・・お姉ちゃん、あの小娘のツレかなんかか?
  ・・・真二は 死んだンか?」 男は冷静になった。
自分を慕っていた真二を殺された怒りもあったが、狙われた原因を特定できたこと、
相手が対立組織でなければ、たいしたことはできまい、という予想もあった。
電話は程なく切れた。その後の男の行動はすばやかった。
部屋に隠してある武器の確認−手に吸い付く大振りのナイフ、
窓や戸締りの確認、部屋の中の死角のチェック・・・、そして他の舎弟たちに
連絡を取ろうと携帯を再び取ろうとした時、一つの疑問が生まれた。
 (なんで真二は簡単に殺られたんじゃ?)
不意をつかれれば、暴力の世界に住む彼らとて遅れをとることはある。
だが、すでに真二は警戒していた。もし、相手が本当に女性なら、
本当に反撃もできずに真二が殺されるだろうか?
・・・そんなことを考えながら携帯のリストを開こうとした時、
またもやそれは鳴った・・・発信者非通知・・・彼はゆっくりとボタンを押し、自分の耳にあてた・・・
 「もーしもーし お姉ちゃんかいのー?」
二、三秒応答はなかったが、ついには、もはや聞きなれた声が流れた。
 『わたし メリー・・・ いま、あなたの家の下にいるの 』


最終更新:2007年04月13日 08:05