「・・・わたし、 メリー・・・ 憎しみ、恨み・・・救われる事の無い苦しみが わたしのちから・・・」


第九話
 ・・・もはや男の手にはナイフは無い・・・。
刃物が効かないと分ったからには、男は両の手で鎌を持つ手を抑えようとするのみだ。
 何故だ!? 
 何故マネキンが動いている? この感触の冷たさ・・・このか細い腕・・・
 何故折れない・・・!? 
白いコルセットで締められたウェストは、男の太ももより細いかもしれないのに・・・!
 「あ あ あ あ・・・!」
力の増加は既に止むことが無い・・・。
もはやその力は男の限界を超えようとしていた・・・。
 「・・・わ、悪かったぁ! 殺すつもりはなかったんじゃぁ! 頼むぅ! 許してくれぇッ!!」
文様のある鎌の刃は、既に男の咽喉の皮膚を切り裂き始めていた・・・。
男の首から鮮血が溢れ始めた・・・。

 「わたしの名は メリー・・・ わたしは鎌を振るう・・・汚れた命を絶つ・・・ために 」

マンションの下には、男の舎弟たちが集まっていた・・・。
彼らが階下から階段を昇ろうとしたとき、
彼らの耳に、生理的な嫌悪をもよおす叫び声が聞こえた・・・。
彼らは大きな声を張り上げ、男の部屋の前にたどり着いた。
外されている換気扇・・・鍵の閉まった扉・・・チャイムを押すもの・・・ドアを叩くもの・・・
携帯で必死に通話を試みるもの・・・もはや全てが無駄だった・・・。
彼らがドアを破壊し、部屋に入った時には、大量の血の海の中に・・・
頭部が切り離され、既に肉の塊となった男の死体が転がっているだけだった・・・。

・・・マンションの下ではゆっくりとしたハイヒールの音が響いていた。
彼女は小さく、はっきりした声でつぶやきながら歩いていた・・・


最終更新:2007年04月13日 08:44