第一話
  シュバッ! シュバッ! 
 「こっち、向いて!」
 「被害者の女性達に何かおっしゃりたいことは!?」
カメラのフラッシュと質問の嵐・・・。
一人の男性が、報道陣に囲まれながら警察に連行されていた。
 森村剛志21才・・・。
親が与えたマンションに一人暮らし。
そしてその部屋に3人もの女性を同時に監禁、
彼女達を奴隷のように扱い、暴虐の限りを尽くしていた。
彼女達全員に誓約書を書かせた男の言い分は、
 「合意の上での共同生活、法には触れない 」
被害者の一人が男の不在時に、トイレの窓から助けを呼び、事件が発覚。
ここに逮捕となった。

 「・・・ええ、編集長! すぐに追加記事を送ります! ・・・そうなんですよ、
 例の監禁事件の犯人の祖父が、どうも地元の警察署の元署長らしいんですよ!
 ハイ、苗字は違います、でも、元々地元の名士らしく、今は県議会議員とか・・・、
 ええ、そこのところ、家庭環境とか生い立ちとか調べますんで、早急に!」
ふ〜、ここのところ、こんな事件ばっかりだ、
・・・ああ、え〜と、私はある出版社の専属ライターをしている・・・
伊藤・・・とでも覚えていてほしい。
出勤時間は拘束されず、一つの記事を担当しては、契約したギャラをもらっている。
今回も、こんな寒い田舎にまで飛んで、事件を追っているというわけだ。
・・・まったく仕事の性質上、外にいることも多いんで手足がかじかむ。
屋内に戻ってキーボード打とうにも、中々思い通りに指先が動かない。
・・・と、かつてグチをこぼしていたら、妻の百合子が毛糸の赤い手袋を編んでくれていた。
滅多にそんなマネをしてくれる妻ではなかったので、とても感激だ。
・・・赤いのは恥ずかしいけれど・・・。
 あ、申し訳ない、どうでもいい話だったね。
で、編集長との電話の後、外回り、地元の聞き込み、
懇意にしている新聞社での情報収集、それなりの裏づけと記事の大枠がまとまったので、その地元新聞社の小部屋を借りて、原稿を打っていたんだ。
 「おい! 大変だ!」 
その時とんでもないニュースが、私の耳に飛び込んできた・・・。
 「例の監禁事件の被害者の子が、・・・死体で見つかった!!」

最終更新:2007年04月13日 09:08