第三話
「どういうことですか!?」 「何故、被害者が自殺を!?」
記者会見現場では物々しい雰囲気に包まれていた。
無理もない、今まで被害届けを出していなかった被害者の死亡・・・、
しかも、彼女の父親は例の県議会議員の息のかかった地元企業で働いていると言う・・・
私でなくともウラを疑う。
「えー、場所は自宅の裏山の神社の境内、アルコールを摂取した後、
神社の老木に紐をくくりつけ、首吊りによる頸部圧迫が死因、遺書は現在のところ、見つかっておりません!」
厳しい顔の警察幹部は、たんたんと書面を読み上げた。
「例の監禁事件との関連性は!?」
相次ぐ質問に、ようやく発表者は顔を起こし、記者団に向かってこう述べた。
「現在のところ、事件として両者を結びつける事は考えておりません・・・!
以上で、会見を終了いたします!」
怒声と罵声が会場を包んだ・・・。
そんな馬鹿げた話があるものか!?
少女が精神的に病んでいたとしても無理はないが、何故、このタイミングで自殺をするんだ?
私は編集部に電話をして、自殺した被害者の自宅へ向かうべく、その会場を後にした。
既に私同様、被害者宅にはハイエナのような報道関係者が群がっていた。
地元のケーブルテレビも取材に来ている。玄関には「取材お断り」の張り紙が張られていた・・・。
「あ、どーも、伊藤さん、考えることは同じっすね?」
同業者の中には当然、顔見知りは多い。特ダネを教えあうことはありえないが、軽い情報交換などはすることもある。
「どう思うー? 自殺だと思うー?」
「ありえないっしょー? でも、事件だとするととんでもない大ごとですよ、これはー?」
「だよなー・・・ 」
私は庭に目をやった、・・・そういえば、昼間もこの近辺に来たが、確かこの家は、車を二台所有してたはず・・・。今は一台しかない・・・。
「なぁ、今、ここのご夫婦は出かけているのかい?」
「ああ、警察にでも出かけたままみたいですよー、帰るの待ってるんすけどねー。」
私は途方に暮れた・・・。
さぁーて、どうしたもんかなぁ?
最終更新:2007年04月13日 09:56