第四話
夫婦はいずれ帰ってくるとは思うが、取材には答えてくれそうにはないだろう、
ホテルに戻るか、新聞社に立ち寄るか、まずは家にでも連絡するか・・・。
 「あーもしもし、百合子? おれ、ん、今、現場、結構長引きそう・・・ ん、あ、そうだ、・・・手袋ありがとう、暖かいよ 」
実はそれでも結構寒いのだ、ただ気持ちがうれしい、精一杯の感謝を込めて私は礼を言った。
 「あら、あなたから、『ありがとう』なんて久しぶりに聞いたわ、でも、たまにはいいものね、
 あ、待って・・・ 麻衣がなんか出たいみたい。」
なんというか、夫婦仲は悪くない・・・と思う。ただ娘の麻衣が生まれてから、妻はそっけなくなったように感じる。だが、娘の麻衣が可愛い!
・・・という気持ちでは妻には負けない!
 「ぱ〜ぱぁ〜!」 一人娘の麻衣、4才。めちゃくちゃ可愛い・・・!
 「は〜いぃ〜、パパだよ〜! 麻衣ちゃん、いい子にしてた〜?」
親ばかとでも何とでも言うがいい。
 「んー、まいちゃん、いい子・・・ぱぱ、今日帰れるの?」
 「ごめーんねぇ、パパ、今夜は帰れない、明日なるべく早く帰るから、まいちゃん、 待っててねぇ〜」
隣で、同業者が笑ってるが、知るか。笑え。
 「ぱぱぁ?」
 「ん〜何だい?」

 「 お人形さんによろしくね ! 」

 「・・・お人形・・・さん? えっと・・・、何だい? ママに買ってもらったお人形さん?」
 「ううん、 今日ね、お昼ねしてたらね、お祖母ちゃんが言ってたの。
 ぱぱがお人形さんに会うって 」
・・・実を言うと、麻衣は時々不思議なことを言う。
いや、子供はそんなものなんだろう、
この「お祖母ちゃん」というのも、時々麻衣の口から出るが、
・・・これは百合子の母親のことなんだが、麻衣が生まれる前に亡くなっている。
 「へぇ? どこにいるのかなぁ、そのお人形さん? なんて名前なの?」
 「・・・んっとね・・・」
悩んでるようだ、私はニヤニヤしながら麻衣の続きを待った。
 「じゅーじかのあるところ、でも そこじゃない・・・、 大きなおうち? まいちゃんわかんない・・・、
 でも、名前は えっと メリーさん!」

最終更新:2007年04月13日 10:03