第六話
神父は途端に、身を翻し奥へと戻っていった。
「あ・・・あの・・・」
ところが思ったより早く、神父は再び姿を現した。外套をはおり、手には懐中電灯を握っている。
「あなたは新聞記者か何かですか?」
神父は私の身体を追い越し、あわただしく靴を履き、表に出ようとしていた。容易ならざる事態が起きていることは、私にも感じられた。
「ルポライターです。」
ごまかすつもりだったが、そんな空気ではない。
神父は表に出る前に一度振り返った。
「マスコミに話すことはありません・・・、と言いたいのですが、手伝ってください。もしかすると・・・。」
私の返答を待たず、神父は表へ飛び出した。神父は車のところまで行き、ライトを照らす。
すぐに私も追いつき、ライトに照らされた車内をのぞいた。
「あれ? 運転席に 封筒が・・・ ! 『遺書』!?」
神父は私の顔を見た後、車のドアを開けようと試みた。
「あなたはここの し、神父様・・・ですよね?
あ、あの夫婦がここを出られたのはいつ頃なんですか?」
遺書に封はしていなかった。私は肩越しに、ライトで照らされた遺書の一部を読んだ。
細かいことは書いていなかった。
「○○様(神父の名?)」に最後まで迷惑をかけたこと、愛する愛娘を失った事への絶望、加害者とその祖父への恨みが書かれていた。
「・・・主のお教えに背くかもしれません、
ですが私達夫婦にはこれしか道はございません、
愛する娘の苦痛を少しでも和らげるために、
私達の命と恨みの情念を・・・
あの人形・メリーの糧として奉げようと思います・・・ どうか・・・」
内容を把握できたのはそこまでだった。神父は書面を封に戻し、こちらを振り返った。
「一時間前です・・・。」
神父は近所の扉を叩き、私は警察に連絡をとった。
その間、遺書に書いてあった部分が、私の頭からどうしても離れない・・・。
人形・・・メリー メリーさん・・・?
近隣住民総出での捜索の結果、・・・彼らの行方の手がかりが見つかった。
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最終更新:2007年04月13日 10:23