教会のすぐ先の街道沿いに大き目の橋があり、そこで、夫婦の靴が揃えて並べられていたのである。
そして・・・事件は、一家全員死亡という最悪の結果を迎えてしまった。


 第七話
日付が変わってしまった。疲れた・・・、まさか自分が警察に聴取されるとは・・・。
反対に、こっちが何か聞き出してやろうと思ったが、さすがにそうは甘くない。
ただ、担当の若い刑事は 「証拠さえあれば(例え警察OBでも)動く」 とは、言っていた。
信用してよいのだろうか?
帰り際、神父の姿が見えた。話しかけるタイミングは今しかない。
あの、気になる記述のことを聞いてみたかったのだ。
遺書にあったメリーという人形とは何の事なのか?
寒さで白い息を吐きながら、神父が車に戻る前に声を掛けることができた。
 「聴取、終わったんですか? ご苦労様です。」
神父は複雑な表情をしたが、礼儀正しく頭を下げた。
 「・・・先ほどは見ず知らずの方に、手伝って頂いてすみません、
 あの親子が祝福された土地に辿り着けるといいのですけれど・・・」
私は、一呼吸置いてから、
 「・・・あの親子の事を、詳しくお聞きしたいのですが?」
と尋ねたが、返答は冷たかった・・・。
 「マスコミの方には何も申し上げることは無い、と言った筈です。」
 「では・・・ 遺書の・・・人形の事を教えてくれませんか? メリー とは?」
初老の神父はこちらを見上げた。
 「何の事か、私にも分りませんな・・・。確かに遺書にありましたが・・・。」
神父は自分の車に乗ろうとしている。全く立ち入るスキがない。でも、負けるもんか。
 「い、いや、人形の件は、マスコミというより、
 子供の父親として・・・、夕方、ウチの子供が変なことを・・・
 言って・・・あ、アレ、何を言ってるんだろ? 」
我ながら何を言っているのだ? いくら神父を引き止めるセリフが思い浮かばないと言ったって・・・。
だが、意外にも神父は興味を持ったようだ。
 「お子さんが・・・なにか?」 神父の動きが止まった。
 「え? ・・・ええ! 夕方、電話したら、4つになる娘が、
 『メリーさん』という人形に私が会うと、
 死んだ祖母に教えてもらったって言うんですよ。」 
もういいや。言っちゃえ。
最終更新:2007年04月13日 10:28