神父の驚いた顔は言葉に言い表せない。しばらく神父は無言だったが、ようやく口を開いた。
「明日、朝、教会においでなさい・・・。」
翌日、隣町で3人の男の斬殺死体が見つかるのだが、この時まだ、私達はそれを知らない・・・。
第八話
朝の教会は、寒さの分もあるせいか、余計に荘厳に感じられる。
今朝は雲も厚く、陽の光も十分には降り注がない。
決して大きな教会ではなかったが、古びた感じがなお、その荘厳さを高めていた。
白い息を吐きながら、スカーフをかぶった修道女に案内されると、
昨日の神父が朝の礼拝を行っている。
ここでは寒いからと、石油ストーブの焚いてある小さな部屋へと向かった。
しばらく待っていると、祈りを終えた神父がやってきた。
「おはようございます、今日はわざわざ、ありがとうございます。」
神父はそれには答えず、短く頭を下げると、こう切り出した。
「あなたの・・・お子さん、娘さんでしたかな? 普段、何か変わったことはございませんか?」
今度は私が面食らった、まぁ昨日、話をふったのは私だからしょうがないんだが・・・。
「え、ええ、普通の子供ですよ、特に・・・別段・・・何も・・・。」
「では、お祖母さんというのは・・・?」
「ああ、えーと、母親の方の祖母のことなんですけど、時々、
娘が夢でお話するっていうんですよ、
生まれる前に亡くなっているんですけどね。」
神父にこんな話をすると、なんか重大な話に聞こえてくる。
「あの・・・ 娘は何か・・・?」
神父はしばらく考え込んだ後、
「いえ、失礼しました、・・・問題はないと思います・・・それで、ゴホンッ、昨晩の件ですが。」
「あ、ハイ。」 背筋を伸ばして姿勢を正す。
「まず、『メリー』という人形について・・・、
これは我々の教会や宗派と何の関係もない事、
また、まともなニュースには決して取り上げられる価値の無い、
ただの噂話だということ・・・、
これを覚えておいていただけますかな・・・?」
価値が無い・・・という割には、神父の語気には強い意志のようなものを感じられた。
「は、はい・・・。」 と言うしかない。
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最終更新:2007年04月13日 11:16