だが、この時点で私の心中には、未知のものに憧れる期待と、
娘への関わりとの不安で想いを交錯させていた・・・。
後になって考えれば、聞かなかったほうが良かったのかもしれない。
「・・・では 」
神父はため息をついて、呪われた「人形・メリー」の話を私に語って聞かせた・・・。


第九話
ここからは神父の話になる。
この間、私には口を挟むことができなかった。
 「・・・私がこの教会を任されて、もう20年になります。
 この教会が建ってからは、私は三代目なのですが、当初、
 この教会には、海外から越してきた信者が何名かおったそうです。
 修道女の中にも海外出身者はおりました。
 彼女達は熱心な信者でしたが、よく、村の子供達に、
 自分達の生まれ育った土地の民話や伝説を話すことがあったそうです。
 私も正確には覚えておりませんが、これはその内の一つです・・・。

 ヨーロッパのある小さな町に、かわいい女の子が住んでいました。
 名前は伏せましょう・・・(ここでは便宜上○○○ーとします)。
 彼女には母親がいましたが、きつい母親だったそうです。
 女の子は、しつけの厳しい母親にいつも叱られていました。
 寒い冬のある日、母親は女の子に「ある物」をプレゼントします。
 女の子は大喜びです。
 ところが女の子はあまりにはしゃいだために、「それ」を失くしてしまいます。
 母親は大変怒りました。女の子は泣きながら、町中、探し回ります。
 女の子は町外れに住んでいるという、魔法使いに聞いてみようと思いつきました。
 なんと、大事なその「ある物」は、どういう訳か魔法使いの家にあったのです。
 魔法使いは「それ」を返すにあたり、女の子に約束をさせました。
 「私から返してもらったことは誰にも言わないこと、この約束を破ったら今夜12時におまえの 命を奪いに行く」・・・と。
 女の子は約束し、喜んで帰りました。
 ところが、母親があまりの剣幕で娘を問い詰めたため、娘は約束を破ってしまうのです。
 その夜・・・約束を破った女の子の元に魔法使いがやってます・・・。」

 ○○○〜ッ、私だよぉ、私は今、おまえの家の前にいるよぉぉぉ・・・

 「その声は少女の耳に、はっきりと聞こえてきました。」

最終更新:2007年04月13日 11:28