第十一話
「しかし、その老人の魔力を持ってしても、少女への呪いは解けません。
呪いをかけた本人でなければ、その呪いをとくことはおろか、
人形を動かす事すら できなかったのです。
ある時彼は、近くで非業の死を遂げた者がいると、
少女の人形がひどく反応する事に気づきました。老人は人形に「死神の鎌」を与えてみました。
それは彼が直接、死者の王に授かった物だと言われています。
するとどうでしょう、人形は立ち上がり動き始めたのです。
以来、彼女は、死にゆく者の恐怖や怨念を感じると、
まるで自らの恨みを晴らすかのように、その不気味な鎌を振るい、
非道な犯罪者達の命を狩るようになったのです・・・。」
「その人形が・・・メリー?」
「少女の名前は本来、別の名前であったようです。別の民話が混ざったのか、老人が新たに名前をつけたのかは分りません。ただ、私がこの教会に赴任した時には、既にここの住人の間では、『メリー』として定着していたようです。」
「それはつまり、恨みのある相手を・・・人形が晴らしてくれる、と信じられている・・・と?」
神父の顔は残念そうな表情を見せていた。
「お分かりでしょう、主の教えと相容れる訳がない、
この教会ではその話はタブーだったんです。
かつて、人形による殺人事件が起きていたとしても・・・。」
「何ですって!? 」
私は驚愕した。それはそうだ、
今までの話は、全て外国の伝説だと思っていたからだ。神父はため息をついた。
「先代の館長の頃の話です、村で何人もの少年が殺されるという事件がありました。
犯人は性的倒錯者のようでしたが、当初、捜査は難航しました。
そんなある日の晩、村の青年が、大きな鎌を持った人形が路地を走り去ってゆく姿を目撃しました。
青年は腰を抜かしてしまいましたが、近くを通った駐在に助けられ、人形のやってきた道を辿ります。すると、一軒の小屋がありました。
中をのぞくと、カラダをバラバラにされた男の死体があったのです。
村で変わり者とされてた男の死体でしたが、よく調べると、
その小屋から、以前に殺された少年達の遺品が見つかったのです。
以来、それはメリーの報復だという噂が、村人達の間にあっという間に拡がったのです。」
最終更新:2007年04月13日 12:09