第十二話
突然、私の携帯が鳴った。編集長からだ。
「神父様、すいません、失礼します。」
神父はどうぞ、というジェスチャーをとった。
「ああ、編集長、おはようございます、すいません、正午までにはそちらに・・・?
えッ!? 隣町で建設会社の作業員3人の斬殺死体ッ!?
その建設会社って、あの県議会議員の一族が経営している・・・ハイ、すぐに・・・!」
私は反射的に神父に目をやった。初老の神父は目を見開いて驚いた様子だったが、静かに十字を切って天を仰いだ・・・。
他にも聞きたい事があったのだが、私は神父に別れを告げ、地元の新聞社に向かった。
そこで手に入れた情報を整理してみると、斬殺死体は、正確には、
建設会社の末端の子会社で、ヤクザのダミー団体とも言われていること、また、そのうち二名は、
この会社に昨年から働いている中国人労働者のようだ。三名は、
作業現場のプレハブ小屋で酒盛りをしていたが、その前までは町の風俗店にいたことが判っている。
作業現場は荒らされており、激しく争っていた様子が伺えられる。
死体は全て鋭利な刃物によって切り刻まれ、日本人男性の携帯には、
直前まで何者かと、短い間隔で何度か通話していた記録が残っていたという。
私は、昨日までのまとめた原稿と、今回の事件の速報を編集長に送り、
「今後さらに急展開する恐れがある」ことを伝え、了承をもらった。
人形の件は伏せておいたが・・・。
薄暗い、曇り空の事件現場では、警察が厳戒体制を敷いていた。
私は昨日、老夫婦の心中の件で私を聴取した、若い刑事をその場で見つける事ができた。
「いやぁ、昨日はどうも」 若い刑事は立ち入り禁止区域外にいた。
「ここは刑事さんの管轄ではないんじゃあないのですか?」
刑事はためらってた様子だったが、私に口を開いてくれた。
「別件ですよ、・・・多分もう、発表するだろうから言いますけど、
監禁事件の方、二件の被害届けが取り下げられた。
じき、森村容疑者は拘置所を出ます。」
「何ですって!? そんな馬鹿な! 何故、被害者が・・・!?」
言いかけて、ハッと恐ろしい考えが私の頭に浮かんだ・・・。
「ま、まさか・・・、あの自殺とされた女の子の事が原因で・・・。」
最終更新:2007年04月13日 12:18