だが、私は車を走らせるしかなかった、県議会議員の自宅に向けて・・・。
第十四話
・・・とは言ってみたものの、高い塀に囲まれた大きな屋敷には、
何者をも拒むような雰囲気が醸し出されていた。入り口は閉じられており、脇に小さなインターホンがあるのみだった。
近くには何人かの報道関係者がいた。顔見知りもいたので声をかけてみる。
「や、寒い中、お疲れ様、誰かインタビュー、やってみた?」
「ああ、伊藤さん、どーも、駄目だねぇ、
お手伝いさんらしき人しかインターホンは出ないし、
本人なんか一歩も表に出やしない。せめて、二階の窓から顔だけでも
出してもらいたいんだけど・・・。」
釣られるように私は、塀の上にわずかに見える階上の部分に目をやった。 !
・・・何か動いた・・・? モノトーンの細い物体・・・
「な・・・? 今、何かいたよな!?」
私は興奮気味に隣の記者に確認を求めた。
「えっ? 猫かなんかじゃないんですか?」
「えっ、猫? いや・・・もっと大きくなかったか・・・?」
もう一度目を凝らして見たが、もう動くものは見えない・・・。
私は急に思い出した・・・神父から聞いた動く人形の物語を・・・。
そして
麻衣の電話・・・お祖母ちゃんの 予言(?)めいた言葉を思い出した・・・。
「お 人 形 さ ん に よ ろ し く ね 」
その言葉が何を意味するのか・・・背筋が寒くなった・・・。
たぶん・・・私はその時、周りの声や音が耳に入ってなかった。
恐らく 「おいおい、伊藤さん?」 とか言っていたのではないだろうか?
私は屋敷の正面入り口までゆっくりと歩き・・・、
そして力強くインターホンを鳴らした。
プルルルルル カチャ 「はい? どちら様でございましょう?」
私は何かに憑かれていたのかも知れない、
さっきまでなら思いも寄らない言葉が自分の口から出ていた。
「隣村の○○神父の使いで来ました・・・。
県議会議員のご主人様にお会いしたいのですが・・・。」
「? 一体、どのようなご用件で・・・?」
「まずはそう、伝えていただけませんか?」
最終更新:2007年04月13日 12:34