この時、彼の内ポケットの携帯に一本の電話がかかってきた。
第十六話
丸山はゆっくりと携帯を取り出し発信者を確認していた、
少し怪訝そうな表情をしていたのは私も見て取れた。
「いや、存じませんでしたな。」
家族の死にも電話の着信にも彼は冷たかった。
「で、不幸なことですが、当方にどういう関わりが・・・?」
私は息を飲んで、彼を揺さぶる発言を行おうと試みた。
「彼らの車から遺書が見つかりました。私も神父もそれを読んでおります。
遺書には、ここの先生とお孫さんに恨みを残し、
殺し屋のようなものに依頼を 行ったと読める件(くだり)がありました。」
さて、どんな反応をする?
そこにまた携帯の着信、タイミングがいいのか悪いのか?
勢いを外されて私は 「よろしければ電話をどうぞ 」 と言う他なかった。
丸山も再び回線を切ろうとしていたようだが、私の言葉につられてか、
「では失礼。」と言って窓際で電話を受けることにしたようだ。
「は? 誰だ、君は? ・・・もしもし?」
だが、電話はすぐに切れたらしい。
「間違い電話ですか?」
「いや、イタズラの方かもしれません、失礼しました。」
「で・・・殺し屋・・・ですか?」 丸山は再びソファにもたれて言った。
「困りましたなぁ、娘さんの自殺を恨まれても逆恨みとしか・・・。」
「逆恨み・・・ですか?」 なんとか本来の話に持っていかねば。
「と、思いますがね。」
「では・・・、今朝方ここの関連会社の労働者が殺された事件は?
あれは実行犯への復讐とは考えられませんか?」
最初は口封じの為の仲間割れだと自分でも思っていたのだが、実際その説も有りだな、
・・・じゃあ「誰が」ということになるのだが。
「そちらも無関係ではないのですか?
いずれにしても警察の捜査待ちでしてね、
しかし・・・この日本で殺し屋ですか・・・?
事実だとしたら誰に頼むのでしょうね?」
丸山の落ち着き振りが癇に障る。どうすれば核心に近づけるのか?
「この土地の者なら、メリーにでも頼むんじゃないのですか?」
やけ気味に放った一言だったが、突然、丸山の様子が変わった。
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最終更新:2007年04月13日 12:53