では今一度、私の最後の話を続けさせて欲しい。


 第二十四話
 「あなた」
 「は・・・はい!」 
百合子は滅多に熱くなることはない。常にたんたんとこちらを責める。
 「あれほど危険なことはしないでと、いったでしょう?
 二、三日で帰るどころか警察にまで連行されて・・・
 自分の立場を分っているの? あなたに何かあったら、私や麻衣はどうなるか、考えたことあるの?
 正社員じゃないあなたは労災もおりないのよ。」
私は小さくなって妻に平謝りだ・・・休みをもらって嬉しいのか嬉しくないのか・・・。
 「はい、もうおっしゃるとおりでございます、返す言葉もございません・・・。」
 「それであなた」
まだ来るよおぉ!
 「私が編んであげた・・・赤い手袋はどうなさったのかしら?」
・・・私の妻はきつい妻だったようです。
 「・・・え・・・と、向こうで失くしちゃった・・・かな?」 
人形にあげちゃった、なんて言えるはずがない!
 「その程度なのね、もういいわ、もう作ってあげません。」
 「ごめんなさい・・・百合子・・・」
妻は後ろを向いて、洗濯物をたたみ始めた。もうこの場にはいづらい!
 「・・・スロット、行って・・・きていいですか?」
小さくポツリとつぶやくと、後ろを向きながら
 「はい?」 何の感情も見えない言葉が返ってくる。どちらが人形なんだか・・・。
 「あ・・・あの、(泣きながら) 町じゅう探してきまっす!」 
魔法使いには会いませんように! 何か機嫌の良くなるものでも買ってこよう・・・。

玄関で靴を履いていると、後ろから、ばりばりとおせんべを食べながら、麻衣がトコトコやってきた。
ああ、もう麻衣は本当に可愛い!
 「ぱぱぁ!」
 「出かけてくるね、麻衣、あ〜あ、ほっぺにおせんべつけて・・・」
私は麻衣の唇についた煎餅のかけらを取りながら話しかけた。
 「あのね、ぱぱぁ? 昼間ね、お昼ねしてたらね! 」
 「うん、うん」 
 「 お に ん ぎ ょ う さ ん が ね ! 」 


最終更新:2007年04月13日 21:10