第一話
 ・・・約、150人ほどの集団であろうか? 腰に剣を佩き、弓矢を携え、
兜や胸当てに身を包んだ一団が、湖の岸辺に集まっていた。戦でもあるのだろう、
彼らは20人ずつ程に分かれ、岸に停めてある幾艘かの船に乗り込もうとしていた。
一際、大きな船には、羽飾りをつけた兜をかぶり、ビロードのマントを纏った男が、
大勢の部下達に指示を与え、湖の遠く・・・山あいに見える、大きな川への
その先に目を凝らしていた。
 「何だぁ、ありゃぁ?」 その光景を、少し離れた所で見ていた地元の農民がつぶやいた。
その農民は、武装された兵士達を見ていたのだが、岸に停めてある大きな船に、
水面から何かが近づいていくるのを目撃したのだ。
 魚・・・? だとしたら、でかいよな?
とも考えたが、そのうち水面の波紋も見えなくなると、興味も失ってしまい、その場を後にした。
しばらくして船団は出航した。この地域の領主と思われるマントの男は、
船団の先頭に位置する大きな船の船べりで、今度の戦の作戦を練っていた。
彼の船が湖の中ほどにきた時、一羽の大きなワタリガラスが、
この船の領主近くの営倉の屋根に止まった。
ワタリガラスは小刻みに首をかしげながら、領主に興味を持ってるようにも見える。
  ガァァァ・・・
 「ほう、珍しいな、こんな人間の近くに・・・」
マントの男はワタリガラスを刺激しないように、船べりに手をついてその鳥を観察しようとしていた。
だが、男は自分の耳を疑った。・・・実際はそう聞こえただけであろうが、
そのワタリガラスの嘴から、突然、人間の女性の声が聞こえてきたからである。
 「 わたしはマリー・・・ わたしは今 おまえの船の下にいる・・・  」
その声と共に、水しぶきをあげながら、水面から一体の人形が現れた。
 「う お お お ぉ っ ! ? 」
その人形は、後ろから領主の腕をガッチリとはさみ、あっという間に男を水中に引きずり込んだ。
兵士達はその一瞬の出来事に、何が起きたか理解できない者がほとんどだった。
忠実な部下が湖に潜って、領主を助けようとしているが、あれだけの装備をしたままでは、
恐らくそれは叶うまい・・・。そのうち、もつれあった二体の身体は、
最終更新:2007年04月13日 21:29