第五話
二人はびっくりして後ろを振り返った。領主様だ・・・。
男の厳しい表情に、二人は後ずさりしながら、マリーが恐る恐る口を開いた。
「ご、ごめんなさい、どんな人たちがいるのかと思って・・・、すぐ帰ります!」
そういって、エルマーの背中を押して帰ろうとした。
彼らがただの村の子供たちであることは、もちろん領主にもわかっている。
だが、領主はマリーの美しい顔・・・、胸のふくらみ・・・、柔らかそうな肌・・・、
既に大人の女のカラダとなっている腰の肉付きを見逃さなかった。
「待ちなさい。」
高圧的なその響きは二人の姉弟の足を止めた。
「おまえ達は村の者か?」
「は、はい、マリーと言います、この子は弟のエルマーです。」
そこで、領主はニタッと笑った。
「・・・そうか、マリー、エルマー、今、我らは夕食をとる所だが、せっかくここに来てくれたんだ、
戦の前の宴につきあってくれないか?」
二人は思わず顔を見合わせる。
「え・・・でも、もう、夜です、父や母にも怒られますし、悪霊たちも村までやってきたら・・・。」
「ハハハハハッ、そんなことか、帰りは兵士達に送らせるよ、父母にもちゃんと説明してやる、
そうそう、お小遣いもやろう。」
エルマーの目が輝いた。マリーは領主のなめるような視線を感じ取っていたが、
有無をいわせぬその強引な口調に逆らうことができなかった。
砦の中の宴席では、マリーは領主の隣に座らせられた。その隣がエルマーだ。
円を囲むように、領主の腹心の部下4名ほどと、大きなテーブルで食事をとった。
「ぼうず、酒は飲めるのか?」 「駄目よ、エルマー、まだ早いわ!」
マリーは席を立ってエルマーを止めようとしたが、領主に腕を押さえられる。
・・・不必要なほど肌を密着させられて・・・。
「マリー、男はこのぐらいから飲み始めるもんだ、将来、立派な男になるにはな!」
さすがのエルマーも、いきなりコップにいっぱいの酒を注がれて、ためらっていたが、
周りの兵士のはやしたてに、冒険心が打ち勝った。後先考えずにゴクゴク飲み干してしまった。
「・・・うっっえええぇぇぇぇっ ゴホッ、ゴホッ!」
最終更新:2007年04月14日 00:45