だが、その意味を完全に理解していなかった。いまや、マリーはこの魔女の最後の一言で、
自分が今、どうなっているのか、ゆっくり、確実に、残酷な現実を理解し始めていた・・・。


第十一話
マリーは急激に自分の体温が低下していくのが分った。
マリーは見る見る自分の肌が青ざめていくのが分った。
目覚めた時は、服を着ていたと思ったのに・・・本当は裸のままであることに気づいた。
マリーは瞬きもせず・・・、いや、瞬きをする必要すらないことも分ってしまったが、
彼女はゆっくりと、目を見開いたまま・・・顔を震わせ・・・自分の胸を見下ろした・・・。
 「あ・・・ あ・・・ あああぁぁ〜・・・  」
彼女の胸には、剣で突かれたことによる大きな傷口がパックリと開いていたのだ・・・。
身体の中身が見えてしまっている・・・。
そしてそこから、乾いてしまっていたが・・・
大量の血液が、下腹部にかけて流れていった跡も確認できた。
 「私・・・死んでしまった・・・の? ・・・痛いッ! 苦しいッ!! こんな ・・・嘘よッ!!」
先ほどまでの静けさが、嘘のように見える。彼女は髪をかきむしり半狂乱となった。
マリーの混乱をよそに、フラウ・ガウデンは口を開く。
 「・・・たまーにいるんだよねぇ・・・、死んだ後も身体にしがみついている奴が・・・、
 ま、時間の問題なんだけどね。」
 「・・・エルマーは!? エルマーは何処!? あの子は・・・ああっ!!」
 「あたしがアンタ達を見つけたときには、弟さんの魂はもう残ってなかったよ・・・。
 アンタはまだ、魂が残っていたから、幽鬼たちにここまで運ばせたのさ・・・。」
マリーはピタリと泣くのをやめ、フラウ・ガウデンに向かって振り向いた。
 「何故!? 死んでしまった私をどうするの? 私はこれからどうなるの!?」
フラウ・ガウデンは、ゆっくりと椅子から離れ、一歩、また一歩とマリーに近づく。
 「さぁてねえ? アンタの憎しみが強ければ・・・、身体から離れたアンタの魂は・・・、
 考える力を失い、ただただ憎悪の塊の悪霊となって森をさ迷い歩くことになるだろう・・・。
 ヴィルダーヤークトがまた一人増える・・・。
最終更新:2007年04月14日 01:47